第5回バレンタイン俳句大会に投句いただいた全句の観賞です。
到着順にさせていただきました。(*まさじさん、○真帆のコメントです。)


 バレンタインの俳句発表は3月下旬の予定でしたが、先送りしての発表となりました。なにとぞご容赦ください。
 さて、今回も全作品の評を真帆さんにお願いしました。私も原句をくずさないように配慮して寸評を付けています。ご参考になれば幸いです。(まさじ)

バレンタインデーという行事自体が形骸化しているのか、書き手とテーマが微妙な距離にあって、そこに照れやてらいがあったのか、そんなことを思いながら読ませていただきました。また、俳句と川柳の線引きは何処にあるのかについても考えさせられました。
ただし、今回は「俳句大会」と銘打っての作品募集であることも含めて寸評を付けさせていただきましたので、ご了承ください。(真帆)


待ちきれない1歳の娘(子)からチョコ欲しい ゴローさん

〇娘さんにメロメロのパパですね。チョコは一年中あるものなので、これだけでは季語になりません。内容の重複を省き語順を入れ替えて「一才の娘のバレンタインチョコ待ちきれず」ではどうでしょうか。
*待ちきれないを省きました。「バレンタインチョコ欲し吾子は一歳に」。お父さんの気持ちがよくわかります。

にんまりといつもと違うバレンタイン あいかママさん

○例年とどのように違うのかワクワクします。「にんまりと」で、自信たっぷりなのが伺われますね。
*家族がふえたバレンタイン。子どもは宝です。ついつい笑顔になるのですね。間なんとも表情に出る作品となりました。

初めてのバレンタインはパパだけに あいかママさん

〇「初めての」ということで、お子さんになりかわっての作品です。「パパだけに」なんて、パパは幸せいっぱいですね。
*愛娘さんのお母さんになって上手い作者。ご主人への思いも作品に出ています。健やかな成長を願っています。

チョコ投げて鬼でもいいとバレンタイン フラガールさん

○節分の豆撒きのようにチョコを・・・ということですね。鬼でも、という少し複雑な女心です。
*取りようによってはチョコを投げた人がだれなのか?作者は鬼でもチョコをくれないかと?。やさしい恋人が現れるかも知れません。

ゴディバチョコ自分へ褒美バレンタイン フラガールさん

〇自分への御褒美に、自分にふさわしい高価で華やかなゴティバのチョコを選びました。いつも本当に頑張っているのですから。
*チョコレートはいろいろあるのですね。名前の由来になったLadyGodiva。ゴディバ(神の賜物という意)と呼ばれる人名です。チョコを自分へのご褒美という作者のやさしさにも通じる思いです。素直な思いが伝わってきます。

ときめきよいずこに溶けたかバレンタイン 春さん

〇ときめきは溶けて消えてしまったように見えて、実は形を変えて続いているのですね。
*「ときめきは何処にバレンタインの日」。女性の深い気持ちですね。

バレンタイン義理でも喜々とはしゃぐ子ら 春さん

〇「はしゃぐ」のは、あどけなさの残る年齢のお子さんでしょうか。成果(?)を見せ合って、うれしそうです。
*「バレンタイン義理でもはしゃぐ子供たち」。母親の気持ちですね。

夫婦円満バレンタインの日なりけり こうじさん

〇普段からとても仲の良いご夫妻なのでしょうね。バレンタインデーということで改めて、ほのぼのと感じておられるのでしょう。
*「夫婦仲良くバレンタインの鍬を取る」。家庭菜園を想像してみました。

もらえない買って喰うのもあじけない enkyotさん

〇川柳なら、「バレンタインデー」などのたいとるを補うと解りやすいですね。俳句なら、心情のみでなく、実景を取り入れるという意味で季語を入れるのが、いい方法だと思います。
*もらえないと複雑な思いですね。「もらえない」の代わりに季語を入れて「バレンタイン…」でどうでしょう。

ぎりぎりのところでいつも止まってる enkyotさん

〇一行詩や歌のフレーズのように、切ない気持ちが伝わってきます。リズムも整っていますね。俳句としてならば、自分と(恋愛の相手と)もうひとつ客観的な「もの」「事象」などがあるとまとまります。
*言い出せない思い。それがぎりぎりのところでしょうか?季語を入れて「ぎりぎりのバレンタインが止まってる」。

enkyot さんへ(真帆)
enkyot さんは、読み手にも兼題がわかっているという前提で作句されています。一句としてひとり立ちした作品にするには句の中に明示するか(俳句)、傍題をつけるか(川柳)する必要がありそうです。



独り身にバレンタインは意味ないよ madaoさん

〇きっぱりと宣言しているのが、潔くていいですね。男らしい!
*決してなげやりではありません。こんな感じでは?「独り身のバレンタインの照れかくし」。

ホワイトデーバレンタインの前に来い madaoさん

〇面白いですね。もし、そうだったら、先に告白することが出来るのに。
*最後のフレーズを替えてみました。「ホワイトデーバレンタインの前ならば」。原句がいいかもしれませんね?

クリスマスバレンタインは稼ぎ時 madaoさん

〇ケーキ・お菓子業界?デパートやアパレル業界も、この時期にターゲットを絞っていそうです。
*場所を入れてクリスマスは取り除きました。「洋菓子屋バレンタインの稼ぎ時」

あの時のバレンタインが悔やまれる madaoさん

〇何があったのか、どうしたかったのか、気になるところです。
*一字を変えました。「あの時のバレンタインが悔やまるる」。あの時が想像させられる俳句です。

madao さんへ(真帆)
madao さんの作品は切り口が鋭く、ユーモアもあって、川柳としてとても上質な味わいがあると鑑賞させていただきました。俳句は、さまざまな条件や制限を(その枠についてはいろんな考え方があろうかと思いますが)受け入れつつ、それを有効に展開していくという性質を持ちます。madao さんの作風を考えると、少し窮屈でしょうか。季節感のぶれや作者の意志の表現方法についてなど手直ししてしまうと、むしろ持ち味を消してしまいそうです。


過ぎ日を思へば苦きバレンタイン 真帆

*若い頃を思い出しての作品です。「思へば」とくれば「苦い」とずばり言い切りました。女性の心ならではの俳句です。

退職の義理押し通すバレンタイン 真帆

*退職してもなお続く義理。バレンタインの義理もいいものです。「義理押し通す」が動かない俳句です。

幸福は笑顔笑顔のバレンタインデー まさじ

〇数式のように理知的な句です。幸福=笑顔、笑顔のバレンタインデー、だから幸福なバレンタインデーなのですね。

肉声にかはる肉筆バレンタインデー まさじ

〇思いを直接相手に伝えたいのです。肉声で話すのが最良なのでしょうが、何らかの事情であえないので、せめて手書きのメッセージを添えたのですね。思いは間違いなく伝わっているはずです。

真心やバレンタインのプレゼント まさじ

〇すっかりイベントになっているバレンタインデーですが、あの人からのプレゼントには真心がこもっています。ひとつでもそういう贈り物があったら素敵ですね。

愛情に包まれバレンタインデー まさじ

〇バレンタインデーの由来を思うと、この「愛情」という語を出来るだけ広い意味で読み取りたくなります。

宅配便に作句の決意バレンタインの日 まさじ

○宅配便が届いたのを機に、あらためて句を作ろうと決意したのでしょうか。折りしもバレンタインデー、春の訪れを告げる日です。



次回もまた、是非多くの方のご参加をお待ちしております。有難うございました。