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はじめての篆刻
著者 石野黎峰 定価 (本体2,500円+税)
B5判 120頁 ISBN978-4-8195-0160-6
自分の印を作ってみたいと思っている人などに、わかりやすい印の
彫り方を指導します。制作過程を連続写真で追いながら、豊富な作
例図版と2色表示で具体的に著し、印にまつわる歴史や知識がしっ
かり学べます。篆刻字書(2111字を小篆と印篆で掲載。)付。
〈日本図書館協会 選定図書〉
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はじめに
篆刻を楽しむ人が多くなりました。何年か前まで「篆刻とは」とたずねても頭をひねる人が多か
ったのですが、最近では、「ああ、ハンコをほることね」と、ほぼ正確な答えがかえってきます。
ある書道展の篆刻部門をみても、10年前と比べて、出品数がおよそ倍増という盛況ぶりです。
昔は篆刻を学ぶとなると、篆刻家の先生に入門し、直接お宅に伺って教えを乞うしかなかった
のですが、今では学校でも学べますし、カルチャーセンター、書道教室など学ぶところも多くな
りました。
反面「おもしろそうだがむずかしそう」という声もよく聞きます。篆刻は書や絵と違って石に文字
を刻るので、何となく手ごわい感じがするのでしょう。また書体も、普段あまりなじみのない篆書
などを用いますので、一層その感を深くするのではないかと思います。しかし、篆刻の要領はそ
うむずかしいものではありません。だれでも子供のころに作った芋版やゴム版とあまり違いはあ
りません。ですから『むずかしい』と考えずに、軽い気持ちで取り組んでみてはいかがでしょうか。
篆刻とは、印を刻ることです。印は古くから所有や証明を示すものとして、社会生活に重大な役
割を果たしてきました。中国ではその昔、印綬を佩びる(印にひもをつけて腰に結ぶ)ということは、
その印に刻ってある官職につくという意味を持っていました。ですから印は、ときとしてそれを帯び
た人の地位や権威を表わすものでありました。また一方、印を刻る素材も、金属や玉に代わって
刻りやすい石印材が発見され、やがて芸術家の手によって盛んに文字が刻られるようになりまし
た。その風潮は近代に入ってますます盛んになり、多くの有名な篆刻家を生み出すことになりまし
た。そして、その影響が現代にも及んでいるのです。
現代の篆刻は、主に作品に使用する印を含めて、鑑賞のために作られます。ですから、いかに
味わいや趣を表現するか、個性的に刻るかが重要になります。篆刻のおもしろさがもっと多くの人
に理解され、楽しまれるようになれば、これからますます発展していくものと思われます。
本書は、以上のような篆刻にたいして、習ってみたい、作ってみたい、理解したいという人のため
に、つとめて平易に、できるだけ具体的に識したものです。篆刻は誰にでもできます。この本で篆
刻というものに興味を覚え、一顆でも二顆でも作成していただくことができたなら、著者としてこれ
にまさる喜びはありません。
著者記す
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