はじめて書く俳句
著者 小林翠径 白山玲雪 定価 (本体2,200円+税)
B5判 112頁 ISBN978-4-8195-0173-6
自作の俳句や愛唱する句を毛筆で書くための、漢字かな交じり書きの
手引き。特色は、生徒の作例→添削指導→生徒の再作例→講評とア
ドバイス→生徒の感想→先生の作例、という対面的構成で、順を追っ
て無理なく学ぶことができ、毛筆で書く楽しさ、面白さを味わえる実践
速成の好著です。
cover
はじめに
近年、俳句をたしなむ方々が飛躍的に増えつつあり、新聞、テレビ、一般雑誌でも取り上げ
られ、私たちの日常生活のなかに極めて身近なものになった感がいたします。この日本独
自の最も短い詩型である俳句は、端的な表現の上に成り立つものであり、そういう意味に
おいては「書」の世界と共通する部分が多いように思われます。
「書」におきましても従来の「漢字」、「かな」といったそれぞれの専門性を深めることの他に、
現代表記に基づいた「漢字かなまじり文」として、美しく、誰にでも読めるという分野を開拓し
ようと様々な角度から探究が続けられ、現在に至っています。著名な短歌や俳句、また詩
などが題材となっていますが、やはり出来ることなら自分で作ったものを書きたいというのが
偽らざる気持ちです。
一方、俳句を作られる方々のなかには、自作の句や愛唱する秀句を毛筆で書いてみたいと
思っている人が今日も増えつつあるといわれています。しかしながら、それにふさわしい手引
書が残念なことにこれまでありませんでした。本書では用具の解説から、筆の持ち方、表現
上のポイント等、実践に即して初めての方にもわかりやすいよう図版を多くして、順を追って
無理なく学んでいただけるように工夫を凝らしました。
書作品には一定の規格や形式が在りますが、その中には皆さんよくご存知の「色紙」や「短
歌」も含まれます。これらはすでに表装が仕上がった状態で市販されていますので、あとは
それに書くだけでよく、まさに手間いらずです。しかしサッと一枚で意を添うものなど、なかな
か書けないのが普通です。そうかといって五十枚、百枚と書き損じの山を築くのでは何とも
不経済な話です。本書が皆さんに半紙で取り組んでいただくことにした訳はそこにあります。
加えて半紙の場合、その紙質が多彩であることもその大きな理由の一つです。ねらった表
現に合う半紙をあれこれと捜し求めることも楽しいものです。紙質と墨色とのコンビネーション
を模索することは毛筆書きならではの醍醐味です。これは!という作品がかけたなら、半紙
作品用の額に入れるもよし、茶掛風に軸装するもよいでしょう。書道用具店でもその依頼に
応じてくれます。
また本書では色紙と短冊の書き方についても、実践コーナー(3)<美しく書くためのキーポイ
ント七カ条>のなかで触れておりますので、参考になさってください。
巻末には付録として@漢字(行書体)、A平がな、B変体がなのそれぞれ基本的な作例を
掲げましたので、書かれるときの参考にして活用ください。
本書が俳句を愛する皆様方に、毛筆で書く楽しさ、面白さを知っていただき、気軽に筆をとっ
て書かれるようになっていただく一助となれば幸いです。
著 者