君と一緒に


「あと5分…」

ふと腕時計に目をやり、誰にともなく呟いた。

まぁ、いわゆる独り言。

だって、ここには俺以外には誰も…

「あぁ、もうそんな時間なんだ」

「?!」

返ってくるはずのない返事に、驚いて顔を上げる。

「何、鳩が豆鉄砲くらったような顔してんの」

「だって」

「あぁ、誰もいないと思ってたんだ?」

「そりゃそうだろ、何でこんなとこにいるんだよ。帰ったんじゃなかったのか?」

「それはこっちのセリフでしょ。何でこのクソ寒いのに公園なんかにいんの?」

寒いの嫌いなくせに。

そう言って木村は俺の隣に並んで座った。

そう、ここは公園で、俺はベンチに座ってて、そんでもって今は12月31日の23時55分…もうすぐ年が明ける。 

「俺は…なんとなくかな。どうせ年明けまでに帰れそうになかったから」

そう、なんとなく。

本当になんとなく寄ってみただけ。

木村とはついさっき年末恒例の某国民的歌番組の生放送を終えて、他のメンバーと一緒に別れたばっかりだった。

なのになんでこいつがここにいるんだ?

「俺もたまには外で年越しもいいかな、と思って。そしたら中居がいんだもん。すげぇ偶然、ってか運命?」

「はいはい」

「うわ、冷てぇ。今年最後に優しくしようとか思わないの?」

「思わないね。大体年が変わったからって何が変わるってもんでもないでしょ」

本当は木村に会えて嬉しかった。

今年も木村と一緒に新年を迎えられる、と喜んでいる自分がいた。

でも…天邪鬼なのは自分でも分かってるけど。

しょうがないじゃん、そういう性格なんだから。

絶対口には出せないから。

だから、察しろよ。

「まぁ、それはそうだけどさ」

木村がそう言って笑みを浮かべる。

それを見てちょっとムカついた。

本当は俺の気持ち、手に取るように分かってんじゃないのか、こいつ。

分かってて言ってんだろ、ムカツクやつ。

「ホント、ヤなやつ」

「ん?」

思わず口に出すと、木村が不思議そうな顔をした。

「別に、なんでもない」

「そ?…あっ、あと1分」

木村につられて俺も腕時計を覗く。

「本当だ」

「中居」

木村が手を差し出す。

「なに?」

「手、つなごう」

「…」

何言ってんの、お前。

そう言ってやろう、と思ったのに言えなかった。

「ほら、早く」

木村がベンチに置かれていた俺の左手を掴む。

文句の一つでも言ってやろうと思ったのに。

繋いだ手から感じる木村の体温があまりにも心地よくて何も言えなくなった。

「あと30秒…」

「うん」

もう時計は見なかった。

目を閉じて、繋いだ左手に意識を集中させる。

「あと10秒…」

「…」

「5、4、3…」

不意に木村の声が途切れた。

目を開けようとすると、唇に柔らかな感触が降ってきた。

そして、長い口付けのあと。

チュッと音をたてて木村の唇が離れた。

目を開けると、

「A HAPPY NEW YEAR」

木村がいたずらっぽく笑って言った。

「今年もよろしくな」

「うん…こっちこそよろしく」



どうやら今年も。

俺はこいつから離れられなさそうだ。

そんなことを頭の隅で思った。

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A HAPPY NEW YEAR!!
ようやくあげました、正月もの。
ってかもう正月じゃないけどね(苦笑)
まぁ、そこは大目に見て(^^;
それにしてもなんか書きたかったものと全然違うし。。
本当はもっとほのぼの系書きたかったんだけどね。
「あけおめ〜」「ことよろ〜」みたいな(爆)
まぁ、来年また頑張ります。
(2003/1/7 HINATA)