Trick AND Treat


      「つ〜よぽん」

      「何?慎吾」

      「Trick or treat?」

      「何、それ。あっそうか。もうすぐハロウィンなんだ」

      「そうだよ〜。だから何かやりたいな〜、と思って」

      「じゃあさ、中居くんと木村くんに何かいたずらするとかは?」

      「う〜ん、でもけっこう勇気いるよね、それ。2人共怒らせたら怖いし」

      「んじゃ、中居くんには“TREAT”、木村くんには“TRICK”ってのはどう?」

      「それ、いいかも。面白そう!」



      10月も終わりに近づいてきた頃、だんだんと涼しく過ごしやすい日が続いていた。

      しかし、ここ数日、木村はどうも機嫌が悪かった。

      原因は、『せっかくいいお店を見つけたのに何故かうまく中居を誘えない』ことにあった。



      *****ちょっと前のある日*****

      「お疲れ〜」

      比較的機嫌のよさそうな中居が楽屋へ戻ってきた。

      これはチャンスだとばかりに、いそいそと中居に近づく木村。しかし―

      「中居、お疲れ!あのさ…」

      「あっ中居くん、今日も行っていい?」

      後から楽屋に入ってきた剛にあっさりと先を越されてしまった。

      「またかよ。最近、お前来すぎじゃねぇか?」

      (何?!俺だって最近行ってねぇのに…)

      木村が心で呟いたが、もちろんその言葉は2人には届かない。

      「またまたー。嬉しいくせに」

      「ハイハイ。その根拠のない自信はどっから来るんだかな。ま、別にいいけど?」

      「じゃ、帰ろ。中居くんも、もう終わりでしょ?」

      「あぁ。んじゃ、帰るとすっか。じゃあな、木村」

      「バイバーイ、お疲れ」

      「えっ、あ、じゃあな、お疲れ」

      木村は慌てて笑顔を作って2人を見送ることとなった。



      *****また別のある日*****

      今日こそは、とはりきって楽屋へ向かう木村。しかし―

      「お疲れ〜」

      「あ、お疲れ、木村」

      「あのさ、中居…」

      「ね、いいでしょ?来なよ」

      すでに楽屋にいた慎吾に遮られる。

      どうやら話の途中だったらしい。

      「う〜ん、でもなぁ」

      「いいじゃん、ごちそうするよ?」

      「マジで?んじゃ、行こっかな」

      「えっ、何の話?」

      「ああ、今日、慎吾が家に来いって」

      「そうそう。というわけで、お疲れ、木村くん」

      「あ、お疲れ…」

      「じゃあ、またな、木村」

      「うん、また…な」

      こうしてこの日もまた木村は寂しく2人の後姿を見送ることになった。



      そんなことの繰り返しで、かれこれ1ヶ月近く経とうとしていた。

      剛と慎吾だけでなく、時には吾郎までもが中居を誘って帰っていく時もあった。

      木村のイライラもピークに達していた。



      「そろそろヤバイかもね」

      「だね。んじゃ今日はやめておきますか」

      「うん。後が怖いからねぇ」

      「ってか吾郎ちゃんが連れてっちゃうのは俺達のせいじゃないしね」

      「ね。まさか吾郎ちゃんにお持ち帰りされちゃうとは思わなかったけど」



      「あ、お疲れ、中居くん」

      楽屋の隅っこで剛と慎吾がひそひそと話あっていると、中居が戻ってきた。

      「お疲れ〜。あ、慎吾、今日行ってもいい?」

      「あ…え〜と、ゴメン。今日はつよぽんと約束してて…」

      「そっか。ってことは剛もダメなんだ?」

      中居は剛に目を向ける。

      「うん、ゴメンね」

      「いや、全然いいんだけど。じゃあ今日の晩飯どうっすかなぁ」

      「あのねぇ、僕らは中居くんの専属シェフじゃないんだから」

      「あ、そっか。ごめんごめん」

      「別にいいけど、好きでやってたし。あっ、木村くん誘ってみれば?」

      「木村?」

      考えてもみなかった、とでも言うように中居は不思議そうに聞き返す。

      「うん、それいいかも。そうしなよ、中居くん」

      「木村ねぇ…」

      「きっと喜ぶと思うよ?」

      「そうかなぁ…んじゃ、そうすっか」

      中居はそう言うと、前室に残っているはずの木村の元へ向かった。



      「ふぅ。これで木村くんの機嫌も直るでしょ」

      「うん。慎吾、よく思いついたねぇ」

      「まぁね。あのまま続ける勇気もなかったし、かと言ってほっとくのもなんか怖いしねぇ」

      「だね」

      剛と慎吾は顔を見合わせるとちょっと笑った。



      「んじゃ、本当に一緒に食事でもしようか」

      「いいねぇ。慎吾、おごってくれるの?」

      「何言ってるの、割り勘でしょ」

      「え〜」

      「いいから、いいから。ほら、行くよ」

      「しょうがないなぁ、もう…」



      こうして、ちょっとしたイタズラを終えた2人は、満足気に帰っていった。


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ちょっと早めのハロウィンものです。
ハロウィンを意識して書いたじゃなくて、
最初は「ちょっとしたいたずら」っていう感じで書いていたんですが、   
後からハロウィンのことを思い出し、書き足してみました。
時期的には来週辺りアップするのがベストだったんですが、
今週は他に書けなくて、やむを得ずアップさせていただきました(^^;
大したものでもありませんが、感想頂けると嬉しいです。
(2002/10/20 HINATA)