眠れないときには…


   「ふぅ…」



中居はベッドの中で思わずため息をついた。

先ほどから何度となく繰り返し寝返りをうってみるものの、どうも寝付けないのだ。



   「…駄目だ。全然眠れない」



思わず、声に出して愚痴ってみたが、返事は返ってこない。

それもそのはず、部屋には中居以外いないのだから。



中居はコンサート会場の近くにあるホテルの一室にいた。

他の部屋ではあるが、メンバーも同じホテルに泊まっている。

無事にコンサートも終えて、明日には東京に戻る予定だ。



眠れないので仕方なく起き上がった中居は枕を抱えてしばらくボーっとしていたが、

意を決したかのようにベッドから降りると、そのままドアに向かった。

そして、ドアまで行くとまたしばらく考え込んだ。



   誰のところへ行こうか…



それは大きな問題であった。



木村…のところに行ったらなんて思われるかな。

吾郎はなんかバカにしそうだし。

かといって剛も微妙だよなぁ。

慎吾…慎吾なら付き合ってくれそうだな。



そう考えついて、ドアを開けると慎吾の部屋へ向かった。



   トントントン



慎吾が泊まってるはずの部屋のドアを軽くノックしてみる。

しかし、反応はない。



   トントントン



もう1度、今度は少し強めにノックしてみるが中からは物音一つ聞こえてこない。



仕方なくインターフォンを押してみる。

インターフォンの音が響くのが外にも漏れ聞こえてくる。

しかし、やっぱり部屋はしんと静まり返ったままだった。



   …寝てるな。



そう理解した中居はちょっと迷ったあとに他の部屋へ向かった。



   トントントン



また軽くノック。

すると、今度はしっかり足音が近づいてきて、



ガチャッ



ドアから木村が顔を出した。



   「中居?どうしたんだよ、こんな時間に」

   「いや、ちょっと…」

   「眠れなかったの?」

   「え?あっ、まぁ…うん」

   「そっか。まぁ、入れば」

   「ありがと…」



何の説明もいらなかった。

ただ簡単な相槌を返しただけで、木村はすんなりと中に入れてくれた。

なんだか少し悔しかったりもして。

でも、ありがたかった。



   「ハイ、紅茶」

   「えっ?」

   「だから、紅茶」

   「何で…」

   「よく眠れるよ?」

   「…」



しばらく、ゴソゴソやっていた木村は、ベッドに座っている俺の方に手を差し出した。

その手には部屋に備え付けのカップ。

たぶんティーバッグも備え付けのもの。

でも、それを飲めば、なんだか本当によく眠れそうな気がした。

――でも、なんかお湯沸くの早くないか?



そんなことを考えてると、木村が心の声を見透かしたかのように答えた。



   「俺も実は眠れなかったりして…」

   「え?」

   「だから、一緒に飲も?」

   「…うん」



2人でベッドに座って紅茶を飲む。

特に何も話すことなく。

それでも、その空気が中居には心地よかった。



   「ど?少しは眠れそう?」

   「うん。サンキュ」



木村に軽くお礼を言ってカップを返すと、ベッドから降りる。

でも実はちょっと離れたくなかったりして。



   「中居」

   「ん?」

   「泊まってけば?」

   「え?」

   「ほら、1人でいるより寝られるかも」



   まただ…



木村はいつも中居の望む言葉をかけてくれる。



   「な?泊まってけよ」

   「…」

   「その方が俺もよく寝られそうだし」

   「…うん」



そして中居が素直に「うん」とは言えない性格だということも分かってくれている。



中居は回れ右をしてそのまま木村のベッドに上がり、布団にもぐりこんだ。

木村もその隣に入り込むと軽く中居を抱き寄せた。

木村の手が心地よく中居の髪に触れ、優しく撫でる。

そして、木村の手が魔法をかけているかのように、中居はだんだんと眠りに落ちていった。



   「おやすみ、中居」



薄れゆく意識の中、そんな言葉が

まぶたに触れる柔らかな感触とともに聞こえた。

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なんだか、この頃不眠症なんですよね。。
なのでこんなもの書いてしまいました。
なんだか本当に意味のない文章なんですが、
ちょっとほのぼのしたものを書きたかったので。
でも、ちょっと文体変わってるような気がする(苦笑)
(2002/9/12 HINATA)