君ヲ想フ
「なかい〜」
「ん〜?」
「SMAP×SMAP」の収録を終え、帰り支度をしていた中居は、声をかけられて振り返りもせずに返事をした。
それに慣れている木村は気にもとめないフリをして続ける。
「この後って、何か予定入ってる?」
「別に〜。なんで?」
そこでやっと振り返った中居は木村の顔を見て軽く小首をかしげる。
「いや、たまにはさ、一緒に飯でもどうかな〜、と思って」
中居の大きなアーモンドアイに見つめられて、思わずちょっと目を反らしながら木村が言うと、中居はますます不思議そうな表情を浮かべた。
「何、いきなり。何かあったの?久しぶりじゃん、木村が俺を誘うなんて」
そう、木村が中居を誘うことはここのところ全くといっていいほどなくなっていた。
ちょうど木村の結婚を境目に。
中居は少し寂しげな、それでいて綺麗な微笑を浮かべながら続ける。
「大体、めずらしくスマスマの収録が早く終わったんだから、早く家に帰ってやれよ。待ってる人がいるだろ?」
そうして、また背を向けてしまう。
木村は困ったような顔をしてその背中を見ていたが、まもなく決心したように口を開いた。
「…大丈夫。遅くなるって言ってあるし、それに…」
「それに…何?」
身支度を終えた中居が木村の正面に立って顔を覗きこむようにして先を促す。
「それに…今夜はもう少し中居と一緒にいたい」
「日本一の男が男相手に何言ってるんだか」
中居はそう言って笑い飛ばすと、楽屋を出て行こうとドアのノブに手をかける。
しかし、その顔が少し寂しそうだったのを見逃さなかった木村は中居の腕をつかむと一気に引き寄せてその華奢な身体を抱きよせた。
「ちょっ…やめっ…何すんだよ…離せって!誰か来たらどうすんだよ!?」
腕の中で暴れて抵抗する中居を木村はいっそうきつく抱きしめる。
「大丈夫、他のメンバーはみんな撮影中だし、他のスタッフとかだったらノックもなしに入ってきたりしないから」
そこで、一息おくと、木村はまた続ける。
「男とか女とか、そういうんじゃなくてさ、俺は中居正広と一緒にいたいんだよ。分かる?」
耳元で聞こえる木村の声に、力が抜けて中居はつい抵抗をやめてしまう。
そのスキを狙って、木村は手の力を緩めると中居の顔を覗き込んだ。
「じゃあさ、中居はもっと俺と一緒にいたいって思わないの?」
「なっ…お前、直球すぎる。…何でそんなに恥ずかしい台詞を真顔で言えるわけ?」
「ブッブ〜ッ!!質問に質問で返さないでくださ〜い」
木村はおどけたようにそう言ったが、目は真剣そのものだ。
少し間があった後、中居は観念したように顔を上げてまっすぐに木村を見ながら口を開いた。
「そりゃあ、さ、一緒にいたいと思ってるよ、俺だって。でも木村には奥さんもいるし子供っちだっているじゃんか。それなのに自分の気持ち押し通すなんてできないよ、やっぱり」
そう言いながら、少しずつうつむき加減になっていき、声も小さくなっていく。
木村はそんな中居を見て居ても立ってもいられなくなり、再び強く抱き締める。
「ごめん…中居がそんなこと考えてたなんて知らなかった。ごめんな。何度でも謝るから…今日は中居の言うこと何でも聞くからさ。だから今夜だけでもいい…付き合ってくれないか」
「…今夜だけでいいんだ?」
木村の腕の中でうつむいたまま、中居が本気とも冗談ともとれないような言い方で聞き返す。
「え…いや、できることならその後もずっと一緒にいてほしい…けど…」
中居の顔の様子が窺えないので、不安そうに木村が答える。
またしばらく間があったあと、中居は顔をあげた。
その顔は笑っているようで、今にも泣き出しそうだ。
「まったく、お前はよ〜」
「えっ?」
木村がなんのことか分からず少し慌てるのを見て、中居はクスッと笑う。
「せっかく俺が身を引いてやろうと思って大人しくしてたのに、木村がそんな態度とるからそんな考えどっかいっちゃったじゃんか。知らねーからな、俺は。もうどうなっても俺のせいじゃないからな」
そして、とびっきりの笑顔を浮かべて、立ち尽くしてる木村の胸を軽くたたいた。
「ほらっ。なーに、ボーっと突っ立てるんだよ。飯行くんだろ?早く行こうぜ。俺もう腹減って倒れそうだよ」
そして、さっさと楽屋を出て行こうとして、ドアを開けながら一言付け加えた。
「もちろん木村のおごりだからな、誘ったのお前だし」
後に残った木村はしばらく動けなくなっていたが、ハッと気づくと慌てて鞄を引っつかみ、中居を追って楽屋を出た。
「おいっ!なんで俺のおごりなんだよ!!」
その声で中居はちょっと立ち止まり振り返った。
「別におごってくれないんなら 、帰るからいいよ」
「えっ…」
「じゃあな、木村。またな〜」
中居は言葉に詰まった木村に手を振ると、背を向けて再び歩き出した。
「おいっ、中居待てよ!分かったよ、おごるよ。おごればいいんだろ!?」
「なんか、その言い方やだ。まるで俺が無理におごらせてるみたいで気分悪い」
「なっ…分かったよ。…ぜひ、俺におごらせてください、中居さん」
「しょうがねーな、じゃあ一緒に食いにいってやるよ」
中居は「しょうがない」と言いながら、かなり嬉しそうな顔をして、そう言うと木村の腕をつかんでスキップでも始めそうな歩調で歩き始めた。
木村も木村で、中居の嬉しそうな顔を見られた事でその直前の偉そうな言葉も自分のおごりだということも全く気にならなくなってしまって、むしろ幸せの絶頂のような顔をして中居の隣を歩いている。それも全て中居の計算かもしれないということは全く頭にないようだ。
そして、その時廊下で楽しくじゃれあうようにあるいていく2人を他のメンバーがしっかり見ていたということも。
「あ〜あ。まーた2人でいちゃついてるよ。しばらく静かだったのに」
慎吾があきれたように言った。
「うん。たまに中居くんって、計算マコちゃんなみに計算してるんじゃないか、と思う時があるよ」
隣で剛が慎吾の言葉に深く頷きながら、つぶやく。
「いいんじゃない?やらしておけば。別に僕には害はないし。木村くんだって、あれはあれで楽しそうだしね。まぁ、またもとの2人に戻ったってことだし、多少うるさくなるけど、2人で気まずい雰囲気かもしだされてるよりずっといいよ。じゃあ、僕は仕事終わったから帰るよ、じゃあね」
吾郎は言いたい事だけ言うと、帰り支度をしにさっさと楽屋へと戻っていった。
「かーっ、相変わらず超マイペースだね、吾郎ちゃん。上2人が楽しそうにいちゃついてるの見て、危機感とか感じないのかね。ね、つよぽん?ってつよぽん??」
剛はいつの間にかスタッフの輪の中に加わってなにやら楽しそうに話していた。
(うわっ。こっちにもいたよ、超マイペースな人!もうこんなグループやだ〜!!)
慎吾は心の中で叫んだ。
(自分の可愛さを知ってて計算してるリーダー、中居正広。そのリーダーにメロメロな犬っころみたいな木村くん。かなりミステリアスなのに天然ボケでその上マイペースな吾郎ちゃん。吾郎ちゃん以上にマイペースで、何考えてるのか分からないつよぽん。そして…そのつよぽん大好きで、SMAPもメンバーも愛してやまない俺。…なんだ俺もけっこう変なやつなのかも。しようがないか、俺もSMAPのメンバーなんだもんな。)
慎吾は勝手に1人で納得すると、つよぽんの元へと駆け出した。
「うわっ、なんだよ慎吾、いきなり」
急に慎吾がタックルでもするように輪の中に突っ込んできたので、剛は抗議の声をあげた。
「べっつに〜。ねー、それよりさっさと撮影終わらせて一緒にご飯でも食べに行こうよ!」
慎吾は満面の笑みを浮かべて言うと、撮影に入る準備を始める。
「また何で急に…ま、いっか、たまには」
剛も独り言のようにつぶやくと、笑顔になり撮影が行われるスタジオに向かった。
このあと、撮影が深夜を過ぎても終わらず、夕食どころか、朝食もスタジオでとることになるなんて2人とも考えてもいなかった。
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なんか、まとまりのない文章になってしまいました(汗)
本当にただダラダラと長いだけで…
こんな終わり方になる予定は全くなかったんですが。
これでもれっきとしたキナカの話なんです。
決してシンツヨの話ではありません(苦笑)
ちなみに題名は元ちとせさんの歌から取らせて頂きました。
あ〜あ、もっと文章力がほしい!!(かなり切実)
記念すべき自作小説第1作目がこんなんでいいのか?!>自分
こんなゆりかですが、これからもよろしくお願いいたします(必死)。
(2002/7/18 HINATA)