彼氏が彼女に着替えたら…?


           その日、俺は毎週レギュラーで出ている某生番組に出演していた。
           そして、いつものように某コーナーに移る。
           ここまでは順調だった。
           しかし、そのコーナーが始まってすぐ、それは起こった。
          
           「彼氏が彼女に着替えたら〜!」
           タイトルコールが響く。
           このコーナーはつまり、彼氏を女装させて、
           そしてその可愛さに点数をつけて現金をもらえるというコーナーである。
           まず彼女が出てきて、そのあと女装して彼氏をお披露目するのである。
          
           1人目はいつも通りに終わった。
           まぁまぁ可愛く、惜しくも満点は逃したが、まずまずの評価をもらって帰っていった。
           そして2人目。
           「では、次の彼女に…と言いたいところなのですが」
           ん?いつもと流れが違う。
           僕を含む出演者も観覧者も訝しげに司会者を見つめる。
           「次はなんと、男です」
           はい??
           「え〜、スペシャルゲストです。木村拓哉さん!!」
           はぁ〜?!
           思いがけない名前が司会者の口から飛び出した。
           そして登場したのは、紛れもなく木村くんであった。
           「ちょっ、何してんの?!木村くん!」
           「おぉ、慎吾」
           木村くんは悠々と手を振ってくる。
           「今日は特別に木村くんには彼氏ではなくメンバーを紹介して頂く、とういうことでいいんでしょうかね」
           全くもって状況を把握出来ない僕を置いて、司会者が進める。
           「えぇ、まぁ。本当に彼氏なんですけど…
           「はい?何か??」
           「だからですね…」
           「いえっ、なんでもないです!進めてください!!」
           木村くんの言葉を遮って慌てて僕は口を挟んだ。
           生放送だってのに、何を言い出したもんか分かったもんじゃない。
           まぁでも、このカーテンで遮られた小部屋にいる人が誰なのかの予想はついた。
           「では、彼の紹介お願いします」
           「はい。こちらですっ」

           『中居正広(31)。SMAPのリーダー。
           小悪魔ともこりすとも言われる可愛らしさ』

           出たぁ!やっちまったよ、この人!!
           「えっと、小悪魔とかこりすとか言われてるということですが…」
           「えぇ、そうです。な、慎吾?」
           「えっ?あ、うん。そうなんです。もう、スタッフさんにも大人気で」
           って、言ってるの木村くんだけじゃんか…。
           「もうすぐ32歳になるんですけどねぇ。もう、本当に…」
           「そうそう、まだまだ若くてね。リーダー、付いて行きます!みたいな、ね」
           木村くんが暴走を始めそうなのを慌てて止めに入る。
           「早く、見たいですねぇ。中居くんの女装!」
           そして、司会者を促す。
           何で、俺がこんなに苦労してるんだろ。
           「じゃあ、そろそろカーテン開きましょうか」
           お願いします…。
           そろそろ泣きそうなんで。
           「カーテンオープン!!」
           カーテンが開くとそこには一人の美しい女性…
           いや、間違えた。
           女装した中居くんが座っていた。
           薄手の白いワンピースで、清楚なお嬢様風である。
           髪は地毛も活かして、軽いウェーブがかったウィッグを付け足してるようだった。
           当の本人はめっちゃくちゃ機嫌悪そうに腕を組んで木村くんを睨み上げている。
           しかし、それがまたいい感じで整った顔を強調してるんだけど。
           本人は気づいてないんだろうなぁ。
           組んだ足も女性顔負けってぐらいに細くて綺麗だし、顔も小顔だし、
           目鼻立ちもいいから薄化粧でも充分綺麗だった。
          
           「さて、では評価をお願いします!」
           すかさず、俺は5のカードを出した。
           周りを見ると、みんな5…ということは…
           「素晴らしい!満点です!!」
           「よっしゃ〜!」
           木村くんが大喜びしている。
           恐らく喜んだ理由は賞金ではないだろう。
           ただ、中居くんのこと自慢したかっただけなんだろうなぁ。
           なんて悠長に思ってる場合ではなかった。
           「だろ?!可愛いだろ、中居!!いいだろ、俺の彼氏なんだぜ!!」
           とんでもないことを木村くんが口走るのを止められなかったのだ。
           「かれし、です、か…?」
           最初にそう口を開いたのは誰だっただろうか。
           「いや、あのこれは、その…」
           何故か慌てる俺。
           「あぁ、やっぱりねぇ」
           思いがけず納得する声が聞こえた。
           「え?」
           「そうじゃないかとは思ってたんだよね」
           そしてそれに続く声…
           誰も驚く様子はなく、納得している出演陣を見渡す。
           「早く言ってくれよ、木村くん。水臭いなぁ」
           わけが分からない俺はその光景を呆然と眺めていた。
          
           と、そこで俺は目が覚めた。
           慌てて周りを見渡して、そこが自分の部屋であることを確認すると大きく息をついた。
           「ありえねぇ〜」
           一言呟くとそのまま俺は突っ伏した。
          

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久しぶりにいいとも見てたら、
なんか思い浮かんでしまったのです;
でも結局夢オチ…ごめんなさい。
収拾つかなかったんです(涙)
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(2004/8/16 HINATA)