それは半月前のことだった。



「夏祭り、行かない?」

梅雨真っ只中。

窓の外には、かろうじて雨は降っていないものの、どんよりした空が広がっている。

俺はぼーっと窓の外を眺めていて、慎吾の言葉を一瞬聞き流してしまった。

「……え?」

「もう、何ぼーっとしてんの?」

「ごめんごめん」

俺の間の抜けた返事に口を尖らす慎吾が可愛くて、思わず笑いながら謝った。

そしたら、慎吾はさらに頬を膨らませて軽く睨んできた。

「なんだよ、つよぽん。せっかく2人っきりなのに、さっきからなんか上の空じゃない?」

「そう?なんか、雨で憂鬱だな〜、って思ってただけだよ」

「なんだよ、それ〜」

「ごめんってば。なんだっけ?夏祭り?」

「そうそう、夏祭り!」

『夏祭り』という単語が出た事で、慎吾の機嫌は直ったようだ。

単純なヤツ。

まぁ、そこがまた可愛いんだけどさ。

「でも、混んでない?ヤだよ、俺。人込みなんて、パニックになるだけだし」

「大丈夫でしょ。夏祭りなんて、誰も人のことなんて見てないって」

「そんなもんかな?」

「そんなもんでしょ。それに、久し振りに行ってみたくない?」

「まぁ、ね。そういえば、久しく行ってないなぁ」

「でしょ?」

慎吾も嬉しそうに相槌を打つ。

「でも俺、あれはヤだ」

ふと思い出して、俺は顔をちょっとしかめた。

「あれって?」

「金魚掬い」

「金魚掬い?なんでまた」

「小さい頃やってさ、何匹かもらって飼い始めたんだけど…」

「だけど?」

「すぐ死んじゃったんだ。2、3日ぐらいかな」

「あ〜、ああいうのって弱いよね」

「なんか、子ども心にショックでさ。もう、やんないって決めたんだよ」

そこまで言って、金魚の白い腹を思い出した俺は、再び顔をしかめる。

「そっか〜」

「うん」

その後しばらく、2人共黙っていた。

再び窓越しに空を見上げる。

空は相変わらず暗くて、今にも泣き出しそうだった。



慎吾のカードを見て、その日のことを思い出したのである。

改めてぬいぐるみを眺めた俺は、そのぬいぐるみをそっと抱きしめた。

「ありがと、慎吾」

今は傍にいないはずの慎吾のぬくもりを、少しだけ感じられた気がした。

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遅くなりました〜!
ツヨBD記念作品です!!
ギリギリ10日以内に仕上げられてよかったです。
で、結局2人は夏祭りへ行ったのか。
それはご想像にお任せします(笑)
ツヨも29歳ですねぇ。
早い早い。
来年の今頃には、SMAPも慎吾以外30代ですね(爆)
信じられない(^^;
本当にいつまでもSMAPでいてほしいものです。
(2003/7/17 HINATA)