僕の全てを君に


僕の全てを君に

君が望むのであれば

その全てを捧げよう

今日という日に感謝して

君がこの世に生を受けたことに

2人が同じ時代を生きていけることに

そして2人が出逢えたことに



*****



「な・か・い〜v」

コンサート後に毎回行われるメンバーとの反省会も終え、

中居は1人でホテルの廊下を自分の部屋へと向かって歩いていた。

そこに唐突に聞こえてきた甘い声。

そして背後から回されるよく鍛えられた腕。

「…何?」

中居はなるべく冷たい声で言い放つと後ろから絡まってくる腕から逃れようとした。

「何、ってことないでしょ」

腕の主、木村は少し不機嫌そうに言って、仕方なく腕を解くと中居の前へと回った。

「今日もコンサートお疲れさま」

「…お疲れ。じゃあ俺もう寝るから」

そう言って中居は再び歩き出した。

「ちょっ…待てって。明日は中居の誕生日だろ?」

木村も慌てて隣に並んで歩きながら話を続ける。

「…だから?」

「誕生日迎える瞬間は俺も一緒にいたいな〜、なんて」

木村は極力明るく言う。

「だから、俺はもう寝るんだって。珍しく反省会も早く終わったことだしな」

そう。いつもなら朝までかかってもおかしくない反省会が今日に限って妙に早く終えられた。

理由は他でもない、メンバーが揃いも揃って酔っ払ってしまったからだ。

「あ〜、それね。みんな本当は全然酔ってなんかなかったって知ってた?」

「はっ?」

予想外の木村の言葉に思わず足を止めた。

「どういうことだよ」

「俺が頼んだの」

「なっ、お前まさか2人で誕生日迎えるために、とか言い出すなよな」

「いや、そのまさかだけど…駄目?」

木村が足を止めた中居の前に回りこむと上目遣いで中居を見る。

「そんなかわいっぽくしても駄目。全然かわいくないし」

口ではそう言いつつも、木村のその顔に中居は思わず笑った。

「笑うことねぇだろ〜。人が必死に頼んでるのにぃ」

木村も中居が笑ったことで調子づき、すねたように口をとがらせて見せた。

「それが必死に頼む態度かよ…しょうがねぇな〜。勝手にしろよ、もう」

中居は歩き出しながらそう言った。

「よっしゃ!マジ?!」

「ハイハイ、お好きにどうぞ」

本気で喜ぶ[日本一の男・木村拓哉29歳]に中居は苦笑したが

「結局、俺も木村には甘いんだよなぁ…」

とつい声に出して呟いてしまう。

「ん?何か言った?」

「いんや、別に。じゃ俺の部屋で飲みなおすか」

「おう!とことんお祝いしてやるよ」

「サンキュ。そう言えばなんかプレゼントとかくれたりするの?」

「ちゃ〜んと用意してありますよ。でも、こっちで渡しても持って帰るの大変だろうから東京でな。

その代わり今夜は…」

そこまで言って木村は怪しく笑った。

「ん?」

「いや、その今夜は…2人で多いに盛り上がろうな!たっぷり奉仕するからv」

「…ちょっと怖いんだけど…なんか企んでない?」

中居が眉間に皺を寄せて訝しげな顔をする。

「別に何にも企んでなんかないよ。だから今夜はたっぷり奉仕するってv」

「…木村」

何か悟ったらしい中居は思い切ったように口を開いた。

「あん?」

「…俺、明日も仕事あるんだけど」

「だから?夕方からでしょ」

そのことはもうマネージャーに確認済みだった。

「その…俺ももう歳だし」

「同じ歳じゃん」

「いや、一応もうすぐ30だし」

「大丈夫、大丈夫!お、中居の部屋ここだよな?鍵貸して、鍵。」

木村の計画を止めさせようと必死になる中居を軽く流し、木村は満面の笑みで中居に向かって手を出した。

さっきとはまるで立場が逆転している。

「…ハイ」

「サンキュ」

木村は中居から受け取った鍵で素早く鍵を開ける。

「さぁ、どうぞお先に♪」

「…ありがと」

恐る恐る中居が部屋に入ったのを確認した木村はその後に続いて中に入ると、

きっちり鍵を掛け、ご丁寧にドアチェーンまでした。

そして中居は、今夜はもう酒にありつけないことを悟った。



*****



この後、2人がどのように8月18日を迎えたのか…

それはご想像にお任せいたします。



しかし、一つだけ付け加えておくならば、

翌朝「妙に機嫌のいい木村」と「少し憔悴した顔の中居」がメンバーによって目撃されたようです。



*****



僕の全てを君に

そう、全てを君にあげる

飽きれるほどの愛を捧げよう

嫌だと言っても離れてなんかやらない

返却不可能な愛をどうぞ

報酬は君のその笑顔



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はい。誰が何と言おうと中居さん三十路記念小説でございます。
そう見えないかもしれませんがそうなんです!!
例によって苦情は受け付けておりませんので、あしからず。
あ〜あ、本当はもっと甘々にしたかったんだけどなぁ。
かと言ってこの続きを書くのもなぁ…
絶対いつか激甘なの書いてやる(爆)
(2002/08/18 HINATA)