本コーナーは、昨日今日ミリタリー方面に興味を持った方のための、ごく初級(?)
の軍事用語辞典です。各項目において多々存在する「例外事項」はビギナーには話が
ややこしくなるだけなので意図的に省いてあります。従って「えー?それはこういう
事もあるよ?」と言ったツッコミはなしに願います(というか無視します)。
明らかに間違っている点はどしどしご指摘下さいm(_ _)m。
※参考にした文献など
◆雑誌系
航空ファン・エアワールド・航空情報・世界の艦船・戦車マガジン・アームズマガ
ジン・Gun・COMBAT・ラジオライフ
◆雑誌以外の文献
世界の傑作機・航空用語辞典各種・現代用語の基礎知識・imidas・知恵蔵・
COMBAT BIBLE・アップルシード総集編・最新ピストル図鑑2
◆その他、googleによる検索でヒットしたサイトさま多数
※体裁は決定ではありません。現在はまだ項目を増やしている段階です。 もう少し増えたら、50音順とかに分ける予定です。
○AFV【陸戦】
Armored Fighting Vehicle(アーマード・ファイティング・ビークル)の略で、
日本語には「装甲戦闘車両」と訳される。
文字通り戦闘時には最前線で敵と戦う戦闘車両の総称で、この下にAPC・IF
V・MBT・自走砲などがくる事になる。装軌式(キャタピラ式)か装輪式(タイヤ式)
かは問わない。
前線まで歩兵や物資を運ぶ事があっても、トラックなどの非装甲車両はAFV
には入らない。
○APC【陸戦】
Armored Personal Carrier(アーマード・パーソナル・キャリアー)の略で、
日本語には「装甲兵員輸送車」と訳される。
そのままではひ弱な存在である歩兵を、少なくとも至近弾の爆発による破片や、
ライフルによる狙撃ていどからは護り、戦車や自走砲など他の機械化陸戦兵器に
ついて迅速に輸送するための車両だ。自らも機関銃ていどの軽い武装を持ち、
歩兵を降車させた後は火力支援を行う場合もあるが、防御力は前述のとおりあまり
重装甲とは言えない。装軌式(いわゆるキャタピラ式)と装輪式(タイヤ)のいずれ
もがある。
現在では、より重武装を施し、十分な火力支援を行えるIFVが主流となり
つつあり、列強国の主要装備からは外れている。
○IFV【陸戦】
Infantry Fighting Vehicle(インファントリー・ファイティング・ビーク
ル)の略で、日本語には「歩兵戦闘車」と訳される。
装甲防御力や輸送力はAPCと同じとしつつも、武装面で一歩進んで口径20〜
40mmのより強力な機関砲や対戦車ミサイルなどを備え、APCより強力かつ有効
な歩兵への支援が行えるようにした車両。
列強国では歩兵輸送車両の主力となるべく配備中だが、重装備がたたってAP
Cよりもはるかに高価なため、APCを完全に置き換えるには至っていない場合
が多い。
○MBT【陸戦】
Main Battle Tank(メイン・バトル・タンク)の略で、日本語には「主力
戦闘戦車」と訳される。いわゆる「戦車」の事であり、陸戦の花形だ。敵の
戦車と渡り合ったり、速度と火力を生かして敵の戦線を突破/拡大するのが
主な役目である。
現代の戦車は口径120mm前後の主砲と複数の機関銃を備え、チョッパム・複合
などの先進的な装甲板で鎧われている。主砲はコンピュータ制御され、走行に
よって車体が揺れても1点を指向し続ける事ができる。動力は1000馬力以上の
ガスタービンやディーゼルなどで、道路上なら70km/h近い速度で走れるモンス
ターマシンである。
これらの重装備により重量がかさんで1両が50〜70トンにもなり、一般道を
走ると舗装を傷つけてしまう可能性があるほか、鉄道の貨車に載せられなかっ
たり、ジャンボクラスの輸送機でも1両しか運べなかったり、といった運用面
での不利がある。
○RPG【陸戦】
旧ソ連で開発された、携帯型対戦車ロケット弾とその発射器の事。兵士の肩に
担がれた無反動砲と同じ原理のランチャーから弾頭を発射、30mほど飛んでから
ロケットモーターに点火され、固定目標なら500m、移動目標でも200mほどの
射程を持つ。対装甲用の成型炸薬弾頭により、30cmの鉄板をも貫通する威力が
あるという。
開発年次は1960年代と古いものの、今でも第三国で生産/輸出されており、
ゲリラやテロリストの手に渡ったものも少なくない。中東などでは露店で1発
10ドル程度で売られているとも言う。中東方面で「ゲリラ/テロリストがロ
ケット弾を発射した」というニュースがあれば、十中八九RPGだと思って
間違いないだろう。それほど世界中に普及している兵器だ。イラクなどに駐留
する地上最強のアメリカ軍にとっても、旧式ではあるが最も驚異度の高い兵器
である。
○アンチマテリアルライフル(対物ライフル)【銃砲】
狙撃銃と言えば口径は8mm以下、射程は1km以下程度が一般的だが、これを口径
12.7mm以上、射程2km程度とした、本来は対戦車ミサイルのテリトリーだった距離
をカバーする超大型の狙撃銃が、フォークランド紛争で用いられて以来脚光を浴び
つつある。
主たる目標物は機関銃の弾で太刀打ちできる程度の軽装甲車両やホバリング中の
ヘリコプターなどで、ジュネーブ条約によりこのような大口径の銃弾で人間を撃つ
事は国際法上認められていない事から「アンチマテリアル(和訳は"対物")」という
名が付いたという。
弾丸も誘導装置も簡単なもので済むため、コスト的にミサイル兵器をはるかに
凌駕するが、反面歩兵が持ち運ぶにはかなりかさばる事と、人間が扱うには反動
が大きすぎるのが欠点だ。
○化学兵器【その他】
人体その他に悪影響を及ぼす化学物質を兵器として用いたもの。航空機から
散布したり砲弾に詰めて敵陣に撃ち込んだりするが、最終的にはガス状になる
場合が多い。吸い込むとくしゃみや涙を誘発するもの、マスタードガスのように
付着した部分の皮膚や粘膜に激しい炎症を起こすもの、サリンのように吸い込む
と神経の接続を侵して呼吸困難などを誘発するものなど、効果はさまざまだ。
ウランの精製に膨大な手間とお金がかかる核兵器に比べれば、まだしも化学
物質の生成は簡単であり、農薬を作る設備があれば化学兵器へ転用が可能とも
言われている。このため、核兵器を持てない国が手っ取り早く大量破壊兵器と
して使おうとする事もあり、細菌などを用いる生物兵器とともに「貧者の核兵
器」と呼ばれている。
○ガトリング砲【銃砲】
トリガー(引き金)を引いている間、連続的に弾丸を発射する機関銃を、さらに
いくつか束ねて回転させながら発射する事により、普通の機関銃よりも弾丸の発射
速度(=弾幕の密度)を向上させた、機関銃の一種。
元々はアメリカ南北戦争時代に発明されたものでその後廃れていたが、第二次
大戦後、航空機がジェット化されて飛躍的に高速になり、空戦で機関銃を発射する
タイミングも1秒未満と極端に短くなったのに伴い、短時間に多数の弾丸を集中
させるのに銃身が1本の機関銃を多数搭載するのは重量的にマイナスな事から、
より軽量化できるガトリング形式の機関銃が再び脚光を浴びるようになった。
現在もっともポピュラーなガトリング砲にアメリカGE製のM61"バルカン"があり、
口径20mmで6砲身、電動または油圧作動により1分間最大発射数6000発という驚異
的な性能を誇る。この辺りになると、発射音はもはや「ダダダダダ」などではなく、
「ズルルッ」とか「ブウウン」としか聞こえない。主にアメリカで多数用いられて
おり、この他にも7.62mmから30mmまでバラエティは豊かだ。
なお、ガトリング形式の砲を「バルカン砲」と呼ぶ場合があるが、この"バルカン"
はM61固有のニックネームであり、ガトリング砲の事を何でもかんでも「バルカン砲」
と呼ぶのは厳密には間違いである。
○ガバメント【銃砲】
1911年に制式採用されて以来、イタリア製のベレッタM92に取って代えられるまで
じつに80年以上もGI(米兵のこと)の腰に吊るされていた名ハンドガン。設計が古い
だけに最新型に比べればやや扱いづらい部分もあるが、一般的な9mm弾より一回り
大きい弾薬を使用するため、威力を重視する向きには未だに根強い人気がある。
また、多数の周辺メーカーによって、収容できる弾数を増やしたり、銃身の長さを
変えたりしたカスタムタイプが数多く作られているのもガバメントの特徴と言えよう。
○機雷(きらい)【海戦】
水底、または水深の浅い海中に潜み、艦船が通りかかると爆発して被害を与える。
直接接触しなくても、艦船が通りかかるときの水圧や磁力の変化を感知するなど、
起爆センサーの種類は様々だ。中には、敵と見るや自動で追尾する魚雷を発射する
ものもある。
海に囲まれた敵国や、敵の港の入り口を封鎖するためなどに用いられ、艦船や
航空機から投下される。目標が通りかかるまでじっと待つ、気長な兵器だ。原始的
ではあるが、爆雷とは違って現在でも有効に用いられている現役バリバリの兵器
である。
なお、艦船が機雷にひっかかった時は「命中する」とか「被弾する」ではなく、
「触雷(しょくらい)する」と言う。
○空中給油【航空】
文字通り、航空機を地上ではなく、空中を飛行中に、他の航空機から燃料を受け取る
事を言う。米空軍などは平時でも日常的に行っており、決して珍しい行動ではない。
最もポピュラーなのがプローブ&ドローグ式で、移送ホースを給油側が繰り出し、先端
についた傘上の部分に受油側が管を差し込んで燃料を受け取る。装置が小型にまとまるので
ホースを内蔵した「給油ポッド」を搭載できればいずれの機体でも給油機になれるのが利点
だ。しかし気流でホースが暴れるためドッキングに手間がかかる。俊敏な小型機ならとも
かく、鈍重な大型機には困難な仕事だ。またホースでは燃料の移送に時間がかかるのが
欠点である。専用の給油機を用意しづらい米海軍やイギリスなど各国で採用されている。
対する米空軍は金属製のパイプを給油側から繰り出し、受油側の受油口(リセプタク
ルと言う)に差し込む「フライングブーム式」だ。パイプ製のため給油量が多く、またパイ
プは給油側が操作するため、受油側は給油機に接近して一定の編隊を組んでいればよく、
大型機の給油作業も苦にならない。欠点としては給油パイプは機体に作りつける必要があり、
給油専用の機体を用意しなければならず、経費が余計にかかる点だ。
空中給油により単純に航空機の航続距離を伸ばせるほか、一旦離陸した航空機を燃料
補給のために帰投させずに済み、所要機数を減らすこともできる。
また、ほとんどの航空機は離陸に際しての重量が制限されており、武装を多く積むと
燃料は少ししか積めないが、本来許されている重量は離陸重量より多いのが普通であり、
わざと燃料を少なめにして離陸し、空中給油によって武装も燃料も満載にする、という
離れ技も可能になる。
○クレイモア地雷【陸戦】
アメリカ陸軍が開発した対人地雷で、正式名称はM18A1。一般的な地雷と違って
地中には埋めず、20×10cmほどの本体を4本の金属の足で立て看板のように地上に
立てて用いる。ワイヤーによるトラップや遠隔操作で作動させ、爆発すると看板状に
なった前方の距離50m、角度60度に渡って、内蔵された約700個の鉄球を飛散させ、
人馬を殺傷する。
"クレイモア"というのは通称であり、またベトナム戦争の頃から「活躍」している、
それほど新しくはない兵器である。
○グロック【銃砲】
オーストリアの新興銃器メーカー、グロック社が製造したハンドガンシリーズの総称。
グリップ・フレーム・マガジンといった主要な部分に、金属ではなくプラスチックを
使用した銃としてはかなり先発の部類であり、他メーカーが出遅れる間にまたたく間に
世界中に売れ、ベストセラーとなった。
プラスチックでできた銃と聞くとヤワなイメージがあるが、プラスチックと言っても
むろん特殊なものである。金属製に比べ水分や塩分に強く、熱帯や極寒地など極端な温度
環境下にあっても人間の皮膚に貼り付いたり火傷を引き起こしたりしない。製造に手間
がかからず銃の値段を安くできる。また当然プラスチックは鉄より軽いので、銃そのもの
を軽くする事ができる。
これらの利点に気づくのが遅れ、プラスチック製の銃をあわてて造り始めた古くから
の銃器メーカーを尻目に、グロック社はハンドガン界の大きな一角を占めるようになっ
ている。
○ケブラー【その他】
アメリカの繊維メーカー、デュポン社が開発した繊維。炭素繊維などに比べると
強度は劣るが衝撃にはたいへん強く、抗弾ベスト(防弾チョッキ)の抗弾素材として
有名である。また炭素繊維よりも軽いため、翼の表面の一部など航空機の非強度部材
としても用いられる。
天文学者のケ「プ」ラーと似ているためによく混同されているが、こちらは完全な
濁音のケ「ブ」ラーである。
○憲兵【陸戦】
軍隊内の治安や風紀を取り締まるための兵科。基本的に戦線より後方での活動が
主体となるため戦車や大砲といった重装備は持たず、また持っている銃などの装備も
最前線の歩兵部隊で使わなくなった「お古」が回されている事が多い。軍隊が活動
している地域では警察が機能しなくなっている場合も多いため、警察の仕事を肩代
わりする事もある。また、対テロ任務やデモの鎮圧など、一般の警察では荷が重い
と判断された任務に駆り出される場合もある。
一般の兵士からすれば、憲兵は「自分たちが命がけで護ってやっている後方でデカ
い面をしている頭の堅いやつら」であり、基本的に他の部隊との折り合いは良くない
と言っていい。一般人からしても「軍隊」との接点は憲兵が最初であり、思想やデモ
の弾圧の尖兵ともなったりする事から、これまた受けは良くない。
国によっては「軍警察」などとも呼ばれ、英語では「Military Police(ミリタリー・
ポリス)」、略して「MP」と表現される。
○口径(こうけい)【銃砲】
銃砲の用語として「45口径」「0.303口径」などというように用いられた場合、
「口径」という言葉は単に管状の物体の内径を表しているわけではない。
銃身の内径が1インチ(約2.5cm)を下回る場合、口径という言葉は「銃身の内径が
1インチの何%程度に当たるか」を表す。50口径と言えば1インチの50%で約12.7mm、
38口径では1インチの38%で約9mmとなる。欧米ではあまり細かい数字は好まれ
ない傾向にあるようなので「1インチの何分の1」くらいの表現の方が分かり易い
から、かもしれない。
ところが、銃身(砲身)の内径が1インチを越えると、今度は「銃身そのものの
長さが、銃身の内径の何倍に当たるか」を示す単位となる。砲身の内径が15.5cmの
砲で45口径と言えば、砲身の長さは15.5cm×45で約6.97mになり、同じ15.5cmの砲
でも50口径となると砲身の長さは同様な計算から7.75mとなる。大砲というものは
内径が同じなら砲身の長い方が対装甲貫徹力が高くなり射程も伸びる(ただし、
砲身の寿命が短くなる)ので、砲身長の違いが単位化されているのは重要な事なのだ。
○高射砲・対空砲【陸戦・海戦】
文字通り空中から襲来する敵機を撃ち落とすための大砲で、榴弾砲などよりも
高めに角度をつけて撃つために「高射」という文字がつくが、どちらかと言えば
「高射砲」という言い方は「対空砲」に比べると古いイメージだ。
第二次大戦までは、1万mにも及ぶ高高度を飛ぶ爆撃機に対抗して128mmという
大口径の高射砲が造られた事もあった(口径が大きくなれば、より高くまで届く)が、
現代では航空機と言えばレーダーに捕まらない地面すれすれの低高度を飛んでくる
ものであり、また目標が高速で移動するため数秒単位の短時間に多くの弾丸を集中
して発射させる必要もあり、口径20〜40mm程度の高発射速度の機関砲を、場合に
よっては何門も束ねたタイプが主流と言える。こういうタイプの対空砲の1分間に
発射される弾丸の数は2000〜6000発にも達するが、実際はコンピュータとレーダー
によって計算された、数秒ずつに区切って発射される。
水上艦の場合、対空用に機関砲を搭載している艦もあるが、主砲として搭載される
70〜130mmクラスの大砲も、航空機に近づいただけで炸裂する近接信管付きの弾丸
を用いたりして対空射撃も可能にしているものがほとんどだ。
ミサイルが幅を利かす現代にあっても、依然として対空砲は航空機にとって最大
の脅威である。むしろ、レーダーなどを使って第二次大戦当時よりはるかに正確な
照準で撃たれる事も多くなり、対空砲が数多く配備されている地域は空爆側にとっ
て決して侮れない「危険地帯」だ。
○自走砲【陸戦】
以前は大砲と言えば、輸送する際に用いる車輪は装備しているものの、自力での
移動はほとんどできないものが多かった。しかし、戦車その他の高い機動力を持つ
兵器が増え、空爆など空からの脅威も生じ、レーダーなどによって照準が精密さを
増す現代では、これまでのように悠長な展開/撤退を行っていては戦線の推移に
ついていけなくなってきた。また、専用の牽引車が必要となると運用にもいろいろ
と不都合があるし、牽引車がやられてしまえば砲自体は健在でも移動はできなく
なってしまう。
そこで、榴弾砲やロケット砲などにも自力で移動できる装置を取り付けたものを
自走砲という。最初は旧式化してお払い箱となった戦車の砲塔を取り払って砲を
載せた応急的なものが多かったが、現代では専用の下回りを持つものが多い。上に
載る砲の種類によって、自走榴弾砲、自走ロケット砲、自走対空ミサイル、自走
対空砲などに分類される。
○スラストリバーサ【航空】
ジェット機によくある装備で、航空機が着陸した後、ジェットエンジンの排気の
向きを前方に向ける事によりブレーキ力を得る装置。いわゆる「逆噴射」を行う
装置だ。民間機に乗っていて着陸後に一時エンジンの音が高まるのは、これを使っ
てそれまで絞っていたエンジン出力を上げて逆噴射によるブレーキ力を高めている
からに他ならない。当然、着陸してから用いられるべき装備で、飛行中は作動しな
いようロックをかけられているのが普通。
基本的には輸送機などによくある装備で、戦闘機や攻撃機などには重量がかさむ
ため敬遠される。ひと昔前のスウェーデンの戦闘機など、特別に短距離で着陸する
性能が求められるような場合に、例外的に装備される。
プロペラ機では、プロペラの角度を変えてやはり逆向きに推進力を得る「リバー
スピッチ」があるが、スラストリバーサと同様、全てのプロペラ機に装備されて
いるわけではない。
ジェット・プロペラとも、これらの逆推力装置を使う事により"バック"する事が
できる機種もある。
○セミアクティブ・レーダーホーミング【その他】
ミサイルの誘導方式の一種。ミサイルとは別に誘導電波を発射する装置を設け、
その装置が発して目標に当たり、跳ね返ってきた電波をミサイルのシーカーが感知
して目標に向かうタイプ。主に対航空機用ミサイルに一般的な誘導方式だ。ミサイル
自身が誘導電波を発するタイプは「半分」を意味する"セミ(semi)"が抜けて「アク
ティブ・レーダーホーミング」となる。
ミサイルが自らレーダーを備え、発射すると自律的に目標を追ってくれれば便利
には違いないが、ミサイルが備えられるレーダーは空中発射母機となる航空機や
地上施設のレーダーなどに比べて小さくならざるを得ず、性能もそれなりになって
しまうばかりでなく、ミサイル自体も高価になる。むろん維持・点検にも手間が
かかり、いざ発射という時に故障する確率も高くなる。電子妨害を受けた場合の
対処能力も、小さなミサイルでは弱くならざるを得ない。
またセミ式の場合、特に航空機から発射されると母機は誘導のためレーダーを
目標に向けていなければならず、その行動に制限を受けてしまう。地上施設の場合
なら誘導装置の位置が逆探知でバレてしまい、爆撃による返り討ちを受けかね
ない。
ミサイルは基本的に消耗品であり、戦闘状態になれば多量に消費される。主に
価格や信頼性の面から、色々と欠点を抱えてはいるが現代のレーダーホーミング式
ミサイルはセミ式が主流である。
○スマート爆弾【航空】
航空機から投下する爆弾のうち、何らかの誘導装置を備えて自ら目標に向かって
行くタイプの爆弾の事。この場合の"スマート"は「スタイルがいい」と言った意味
ではなく「(落下するだけの爆弾に比べて)頭がいい」という意味だ。
落下(滑空)していくだけなので対地ミサイルに比べると射程距離は短いが、推進
装置がない分安価であり、取り扱いも簡便だ。さらに、通常の爆弾に誘導装置を取り
付けるだけで精密誘導兵器に早変わりする、という点も"手軽"である。
目標の近辺に民家がある場合など命中精度が要求される場合に用いられ、特に
巻き添え被害が社会問題にもなる最近では、無誘導型に比べその役割は比重を増す
ばかりである。
目標にレーザー光線を当てて跳ね返ってきたレーザーを追いかけるタイプが主流だが、
他にもテレビに映った目標を形状認識して追いかけるタイプ、目標の放出する赤外線
(≒熱)を感知して追いかけるタイプなどがある。
○掃海(そうかい)【海戦】
ある海域から、そこにある機雷を取り除く事。ヘリコプターや木造船など、機雷の
対金属センサーに感知されにくいもので掃海具と呼ばれる機械を引っ張り、機雷を一
箇所に留めているワイヤーを切断、海面に浮上した機雷は機関銃などによって爆破処分
されるのが一般的だ。
掃海訓練というのもむろん行われるわけだが、訓練海域にいずこかから本物の機雷
が流れついてきている可能性もあるため(実際、処分してみたら本物だった、という
事は珍しくないらしい)、見た目は地味ながらいつも実戦同様の緊張を強いられるハード
な任務である。
○ソナー【海戦】
空中を飛来する航空機を遠方から探知するためには電波の反射を利用したレーダー
を用いるが水中では電波はほとんど伝わらないため、海中に潜む潜水艦などを探知
するためにはレーダーは使えない。しかし音波は水中でも遠くまで伝わるため、水中
を探査するためには音波(音)の反射を利用したソナーを用いる。
ソナーには自ら音を発射してその反射音を調べるアクティブソナーと、こちらから
は音を出さず目標が発する音を拾うパッシブソナーの2種類がある。こちらから始終
音を出していては敵にバレてしまうので、まずパッシブソナーで周囲に聞き耳を立て、
攻撃の直前、敵の位置などを精密に知りたい「ここぞ」というときにアクティブソ
ナーを用いるのが水中戦の定石だ。
○地対空ミサイル【陸戦】
ミサイルは「地対空」「空対空」「艦対艦」などのように、どこから発射されて
何を狙うかによって区分され、それぞれを「対」という単語で挟んで表される。
ここで言う「地対空ミサイル」とは地上から発射され、空中を飛行する目標を狙う
ためのミサイルを表す。英語では「Surface to Air Missile」となり、頭文字を
取って「SAM」と書き、さらにこれをそのまま読んで「サム(実際にはセィムの方
が近い)」と発音する。
ミサイルの大きさは全長で5m以上もあるものから1m程度のものまであり、誘導
方式は別に設置したレーダーで目標を照射した反射波を追う「セミアクティブ・レー
ダーホーミング式」と、ミサイル自身が赤外線センサーを備え、目標の発する熱を
感知して自動で追尾する「赤外線ホーミング式」の2種類が主流だ。一般的に、レー
ダー誘導方式の方が赤外線誘導型より大型かつ長射程である。
現代、対空砲の弾丸に比べればミサイルが備える爆薬の量は比較にならないほど
多く、また高速で衝突してくるため、仮に直接命中しなくても近接信管によって至近
距離で爆発すれば、ろくな装甲を施せない航空機はカタストロフィックな破壊をまぬ
がれ得ない。ただし、一人の兵士が肩に担いで撃つ携帯式ミサイルなど、小型のミサ
イルの場合は、破壊または墜落までには至らない場合も多い。
○チタン合金【その他】
原子番号22番のチタンをメインとし、その他の金属を微量に混ぜた合金。アルミ
よりは重いものの金属としては軽い方に属し、熱にもよく耐え、強度もあり、ステン
レスなみに錆びない。
欠点としては加工が非常に面倒な点で、削るにもプレスするにも鉄のようなわけ
にはいかない。その手間がかかる分だけ、鉄に比べて高価なアルミ合金よりさらに
5倍以上というとてつもなく高価な金属素材である。航空機の強度部材として理想
的ではあるが、なにぶん高価なため戦闘機など、それもエンジン周りや主要な骨組み
など、耐熱性と強度が同時に要求されるような部材に限定的に用いられるにとどまっ
ている。
○トカレフ【銃器】
旧ソ連で開発されたハンドガンで、形式名はTT33と言う。特に注目されるべき存在
ではなかったのだが、西側世界の裏社会に流出するようになると一転「抗弾ベストが
効かない銃」として注目を浴びるようになった。
もともと西側の抗弾ベストは9mmピストル弾に耐えるよう考えられていたのだが、
トカレフが用いる弾丸の直径は7.65mmとやや小さく、かつ発射用の火薬も多めだった
事から、想定よりも狭い面積により大きい衝撃を与えられた抗弾ベストが抗し得な
かったのだ(むろん抗弾ベストの種類にもよるし、現在はトカレフの弾丸にも耐えられ
るものがほとんどだ)。
日本の暴力団も、中国やソ連から流出してくるこれら比較的入手し易いトカレフを
「使用」し、発砲事件にしばしばその名が登場した事から一時「トカレフ」という言葉
は日本の流行語にすらなった。もっとも、純正のソ連製トカレフはそれでも入手しづ
らく、ほとんどは中国でコピー生産されたもの(54式拳銃)だったらしい。もともとの
トカレフはよくできた銃だったが中国製の粗悪なものが横行したため、トカレフ=粗悪
銃という間違ったイメージが先行してしまう結果となった。
○ドラッグシュート【航空】
航空機が着陸した後、後方に向かって落下傘のようなカサを開く事によって、空気
抵抗を増し、航空機を減速/停止させるための装置。
主に戦闘機や攻撃機など、軽量さが求められる軍用機に多い。また車輪に装備されて
いる機械的なブレーキだけでは制動力が不足するものの、スラストリバーサのような
飛行中は死重となるものは極力装備したくない場合などにも用いられる。
一般的に、航空機は300km/h近い速度から減速しなければならないため、機械ブレーキ
だけで止めようとすると負担が大きいので、ドラッグシュートやスラストリバーサの
ような機体部品が過熱する危険性の少ないブレーキを主に使うわけだ。大型機になれば
必要なパラシュートの大きさも大きくなり、回収や折り畳みに手間がかかる(人力で行わ
れる)ので、ある程度以上の規模の航空機になるとスラストリバーサが用いられる。
○ナパーム弾【航空】
ガソリンなどの可燃物をゲル(ゼリー)状とし、容器に詰めて投下するタイプの爆弾。
落下する途中で容器を破裂させゲル状ガソリンに着火、数百m四方にばら撒かれて火の
海となる他、周囲の酸素が燃焼によって一気に消費される事により酸欠状態とし、これ
らの相乗効果によって付近の生物を死に至らしめる。
ゲル状となった可燃物は2000度にもなり、粘性があるため一度張り付くと容易には
取れず、張り付いたものを焼却してしまう。B-29から日本に落とされた焼夷弾も原理的
にはこれと同じものであり、第二次大戦当時から既に「活躍」していたものである。
○ハーフトラック【陸戦】
高速化していくAFVに徒歩の歩兵がついて行けなくなった時、とりあえず歩兵を
トラックに乗せてみたが、悪路(道路外)の走破性が極端に悪く装軌式のAFVには
やはりついていけなかった。そこで歩兵を輸送するための車両も装軌式にする事に
なったが、完全装軌式にすると製造コストなどの面でいろいろと不経済なため、動力
を担当する後輪部分だけを装軌化した「合の子トラック」が、第二次大戦直前にドイ
ツで生まれた。
こうしてハーフトラックは生まれたが、第二次大戦後期になると本家ドイツより
それを取り入れたアメリカで主力となって、産みの親たるドイツの地を駆け回る事に
なった。戦後になるとAPCが登場したため、現在ではハーフトラックは完全に過去
帳入りする存在となっている。
○爆雷(ばくらい)【海戦】
水上の艦船または航空機から、潜水艦を狙って投下する爆弾。水中を自重で沈下
していき、あらかじめ定められた水深か、または目標まで一定の距離に達した時点で、
接触していなくても爆発する。相手が水の中にいる潜水艦なので、爆発の衝撃力が
水を通して伝わるため、これだけでも潜水艦は甚大な被害を被る。
第二次大戦までは対潜水艦用の主力兵器だったが、戦後は潜水艦の水中速度が向上
したため、対潜魚雷などに主役を譲った。
○飛行艇(ひこうてい)【航空】
胴体の下半分を船底のような形にして水密構造とし、水上に離発着できるようにした
航空機。河川や湖沼の多いカナダや、海に囲まれてなおかつ(飛行場のない)小さな離島
の多い日本などでは重宝されている。
利点としては、離発着のために広大な土地を確保しなくても良いのがいちばん大きい。
陸上機だと滑走路の長さが足りなければ離発着できないが、飛行艇なら理論上「水さえ
あれば」離発着できる。また、複雑な降着装置を持たなくて済む。これらの利点から、
第二次大戦より前、まだ航空エンジンが非力だったころ「大型機と言えば飛行艇」だった
時代もあったくらいだ。
欠点としては、陸上機に比べて頑丈に造らなければならず、重量がかさむこと、船底
構造のために在空中は空気抵抗の面で不利なことだ。主翼の端が水面を叩かないよう翼端
にフロート(浮き)を備える機体が多いが、これも飛んでいる間は不要物となる。
「水さえあれば」と言っても、水面がちょっとでも荒れると離着水不能となるものが
ほとんどで、例外的に日本製のUS-1シリーズだけが、波高3mという荒れた海面にも
離着水できる性能を持っている。
軽飛行機に離着水できるフロートを取り付けたものは「水上機」と言い、飛行艇とは
呼ばない。また陸上機で言う「離陸/着陸」は飛行艇や水上機の場合は「離水/着水」
となる。数十年ほど前までは飛行艇といえば水上専用が普通だったが、現在用いられて
いる飛行艇は離着陸のための降着装置も持ち、普通に陸上機として飛行場に離発着する
ことも可能だ。
○フォネティックコード【その他】
軍事利用に限らず、無線や有線で通信を行う場合、アルファベットのT(ティー)と
E(イー)などは聞き間違う可能性が高い。そこで、分かり易いようにアルファベット
ごとにニックネームのようなものに置き換えて通信するのが普通であり、世界共通に
取り決められたこのニックネームの事をフォネティックコードと言う。
アルファベットの場合Aはアルファ、Bはブラボー…と続いてZはズールとなり、
例えば「RYU」なら「ロメオ・ヤンキー・ユニホーム」と現す。
日本語でも同様の取り決めがあり、「朝日のあ」「いろはのい」「上野のう」と
続いて「おしまいのん」となり、例えば「りゅう」は「りんごのり・弓矢のゆ・上野
のう」なる。
数字の場合、日本では「数字の」を頭につけ、特に自衛隊では他の数字と混同し
ないよう1は「ひと」、2は「ふた」、4は「よん」、7は「なな」、0は「まる」
と現すのが一般的だ。
○マズルブレーキ【銃砲】
ピストルやライフル程度であれば、発射時の反動は持っている人間が何とか抑え込め
るが、銃砲の規模が大きくなると反動も大きくなり、そうもいかなくなってくる。また、
機関銃など連続射撃を行う銃砲も連続的な反動で銃が暴れ、着弾地点が狂ってしまう事が
多々ある。
この発射時の反動を機械的に抑えるため、銃口から弾丸が飛び出した後に勢いよく噴出
してくる発射薬の燃焼ガスを後方に向きを変えて噴き出させ、反動を相殺させるように
する装置。ただこれだけでは完全に反動を抑え込めないので、バネや油圧シリンダーを
等を用いた装置を併用するのが普通だ。
発射ガスが前方に向かって噴き出すと周囲の土砂を風圧で舞い上げてしまい、視界
(照準)を妨げる事があるので、これを防ぐ効果もある。
なお「ノズル」と「マズル」は語感も意味合いもよく似ているが、ここでは「マズル」
が正しい。日本語には「砲口制退器」と訳される。
○無反動砲【陸戦】
大砲は発射時に火薬の爆発(厳密には燃焼だが)により大きな反動が生じるため、
20mm以上の大きさになってくると人間が抱えたりする事ができず、地面に据え付けて
使用せざるを得ない。また反動で砲が後ろへ下がったりしないよう、バネや油圧で
反動を吸収する機構が必要になってくる。これでは砲そのものが大きくなり扱いづらく
なっていくので、燃焼によって生じたガスを後方へ逃がすなどして反動をなくした砲を
無反動砲という。ただし"無"とは言っても全く反動がないというわけではない。
発射の際に生ずる、弾丸を前進させるエネルギーを一部逃がしてしまうので射程や
装甲貫徹力に劣るが、弾丸を工夫する事によって戦車などの重装甲目標にも十分対抗
できる事から、歩兵が携行する対戦車兵器として用いられている。
○榴弾砲(りゅうだんほう)【陸戦】
100〜200mmの、比較的大口径の弾丸を発射する大砲の一種。前線よりやや後方に
陣を敷いて目標を直接狙わず、航空機や前線部隊と連絡を取り合って目標の位置を
割り出し、複数の砲を組織的に運用して目標を弾丸の雨で取り囲むようにして撃破
する。射程は2〜十数km程度。以前は牽引式が普通だったが、最近は無限軌道式の
車両に載せた自走式が主流だ。
○ロケット砲【陸戦】
弾丸を、火薬の燃焼で生じるエネルギーで発射するのではなく、弾丸自らが
ロケット推進で自発的に発射していく、火砲の一種。
発射の際の反動がほとんどないので、通常の火砲のような反動吸収機構が省略
でき、砲自体を軽く安価にでき、戦時などの大量生産に向く。砲と言っても極端
に言えば弾丸が飛んでいく方向を決めるための筒やレールをいくつも並べただけ
でも構わず、実際そのようなロケット砲はいくつもある。
反面、弾丸が推進剤を消費しながら飛翔するため、飛行中に重心が変化して
弾道が乱れ、命中精度が通常の火砲に比べて大きく劣るのが最大の欠点だ。
このため、1)砲も弾丸も安価に造れる、2)通常の火砲に比べて時間当たり
の発射可能数が多い…という利点を生かし、多数のロケット砲を同時に発射する
事で大火力を短時間のうちに集中させ、破壊よりは一定の面積の敵を制圧する
のに用いられる。