好きなんだもん
「何処が良いの?」
彼のことを話すと必ず言われる台詞。
『だって好きなんだもん。』
私の答えはいつも同じ。
理由なんて無い。
いらないの。
そりゃあね。
口が悪いかもしれない。
意地悪かもしれない。
私といても私のことだけを思ってくれてる訳じゃない。
怒りっぽくって気に入らないことがあるとすぐに怒鳴る。
手は上げられたこと無いけど、彼の言葉って暴力的だから傷つくこともいっぱい。
でも好きなの。
どうして…って聞かれても答えなんか見つからない。
だからいつも同じ答えを繰り返す。
良いところもいっぱいいっぱいあるのよ。
ホントはすっごく優しいの。
もの凄い照れ屋なの。
そしてとっても寂しがりやなの。
性格は不器用なのに、手先がとっても器用なの。
私とは逆の利き腕で、色んな物を作れるの。
一生懸命な横顔がとっても格好いいの。
出来上がった物を見せてくれるときの笑顔がね、ドキドキするほど素敵なの。
銀色の髪がね、お日様の光りを弾いてキラキラ綺麗なの。
あの真っ赤な赤い瞳に見つめられるとね、何も考えられなくなっちゃうの。
そしてこれは誰にも内緒なんだけど彼が歌を歌うとね、少し掠れたいつもより低い声しか私の耳には届かなくなっちゃうのよ。
「あんた。なに、赤くなってるのよ。」
言われて私は我に返る。
彼のことを考えただけで、身体中が心臓になっちゃう。
ドキドキバクバク、もの凄い早さで動き回っている。
「何処が良いんだか、理解に苦しむわ。」
肩を竦める友達に、それでもやっぱり理由なんて思いつかない。
だって私にとって、彼は良いところしか無いんだもの。
だから私はこう答えるの。
「だって好きなんだもん。」