エステ


「うふふー。」

 何度も何度も鏡の前でほくそ笑んでしまう。

 今日、オリヴィエ様お勧めのエステに行ってきたの。

 もう、お肌なんかツルッツルのピッカピカで………。

 ゼフェル様…帰ってきたら気付いてくれるかな?

 ううん。絶対! 気が付いてくれる。

『ただいま。』ってぶっきらぼうに部屋に入ってきて…私を見てポカンって驚いたような顔をするの。

 そしてね。そしてね。

『アンジェ……おめー。』って言いながら私に近づくの。

 私はちょっと恥ずかしそうに俯いちゃったりして…そんな私を抱きしめてゼフェル様が耳元で言うの。

『アンジェ。何か…おめーすっげー綺麗になったな。なんか俺…我慢出来ねぇ。』って私の事ちょっと乱暴な位に……………。

 キャー。キャー。キャー。

 私ったら何、考えてるのかしら。もう。

「……………早く帰って来ないかな。」

 ふと口から零れた言葉に鏡の中のピカピカの私が真っ赤に染まる。

 嫌だな。期待しちゃってる。私ってスケベ。

「ただいま。」

 あっ! 帰ってきたっ!

「お帰りなさい。ゼフェル様。」

「おー……………。」

 ほら。ほら。ほら。想像通り。

 ゼフェル様。私を見てビックリしたような顔してる。

「アンジェ……おめー。」

 うん。うん。これも想像通り。

 私に手を伸ばすゼフェル様に私は予定通り恥ずかしそうに俯くの。

「アンジェ。何か…おめーすっげー………。」

 私の髪に顔を埋めてゼフェル様が呟く。

 うん。なぁに? 早く言って。次の言葉。

「何か…おめーすっげーカレー臭くねぇ?」

 ………………………………………。

「ぐっ!」

 私はゼフェル様のお腹に思いっきり力を込めた肘鉄を食らわせた。

 どーせね。確かに行ったエステはインド式で使ったのもターメリックだったけど…だからって………。

 ゼフェル様のニブチン。莫迦。もう知らない。

 今夜は絶対! 絶対! OKなんかしてあげないんだからっ!


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