青空テラス
−−− 4回目 −−−
『……イラッ。』
−−− 5回目 −−−
『……イライラッ。』
−−− 6回目 −−−
『……っの野郎………。』
−−− 7回目 −−−
『一生ここにいるつもりかよっ! てめーはっ!』
−−− 8回目 −−−
『……………はぁっ。』
とうとうゼフェル様は心の中で諦めの溜息をつきました。
「……っかたねーな。そんなに帰りたくねーってんなら俺がとっておきの場所に連れてってやるから来いっ!」
目の前のアンジェリークの手を掴んで歩き出します。
アンジェリークの戸惑いなどゼフェル様は我関せずです。
「………どうしたんだよ。呆けたツラしやがって。凄げぇだろ?」
やってきたのは聖殿裏手のテラス。
頷くアンジェリークにゼフェル様は目を細めました。
テラスの石畳の上に座り込み柱に背中を預けて空を見上げます。
「空が高い? ………そうだな。ここに来っといつも実感させられるんだ。俺の故郷じゃ青空自体珍しいから…特にな。」
自分の隣りに腰掛けるアンジェリークの言葉にゼフェル様が照れたような笑顔を見せます。
故郷の事を話すとき、ゼフェル様はいつも照れたような顔をするんです。
アンジェリークはそんなゼフェル様の顔が大好きです。
「えっ? 青空が優しいって? ………何だよ。それ。」
アンジェリークの呟きにゼフェル様は怪訝そうに聞き返しました。
「優しく見守ってくれてるみたい? ………おめーらしい考え方だな。」
小首を傾げてきょとんとした顔で同意を求めるアンジェリークにゼフェル様が苦笑します。
そんな考えは思った事もありませんでした。
「優しく見守る…か。………えっ? そう感じさせてくれる奴がいるから? ……………何だよ。それ?」
静かに青空を見上げていたゼフェル様にアンジェリークは更につけ加えます。
でも、残念な事にゼフェル様には伝わらなかったみたいです。
アンジェリークがそう感じるのはゼフェル様がいるからなんですけどね。
「……ん?」
二人で長いこと青空を眺めていました。
そんな時、突然寄り掛かってきたアンジェリークにゼフェル様は驚いたように彼女を覗き込みました。
「………寝てやがる。」
小さな声で呆れたように呟きます。
アンジェリークはスースーと安らかな寝息をたてて眠っていました。
「……………襲うぞ。こら。」
アンジェリークの寝顔にゼフェル様は呟きます。
つん、とアンジェリークの額をつついて………。
「〜〜〜〜〜〜〜〜。」
眠っている筈のアンジェリークが笑顔を作るのでゼフェル様は慌てて手を引っ込めました。
顔がカーッっと熱くなります。
「……ちっ。仕方ねーな。」
ゼフェル様はアンジェリークを抱き上げると特別寮へと歩き出しました。
眠り姫を起こさないようにそっと。
「今回は…特別だぜ。二度目は許さねーからな。つぎ眠りやがったら遠慮なく襲うかんな。……………お休み。アンジェリーク。」
眠るアンジェリークをベッドに降ろしたゼフェル様は眠り姫のおでこにそっとキスをして部屋を出ていきました。