詩哀歌(エレジィ)
私の指が泣き壁に
強く 強く 触れたとき
神秘なメロディ
悲しみのしらべ
忍び泣きにも似た
哀歌
エレジ−)が流れてきた

ああ哀(かな)しいかな
昔は人の恋たりしもの
女王たりしもの

いまは孤独となり
よもすがら泣き悲しみ
ケデロンの流れの如く
涙をそそぐ

ああ いつの日に
愛するもの
かえりきたる
私は孤独の中に
いつまで淋しく待つべき

深い夜の静寂(しじま)に
しのびよる
いとしきものの足音を
私はきいた

おお! 愛する者が
私の胸に今こそ帰ってくる

ついに待ちに待った
いとしき者かえりきて
火のような口づけを
雨とふらせ

この壁を歓喜の涙で
ぬらすとき
絶対にもう
いとしきものをはなさない

そのとき
悲しみの哀歌(エレジ−)は

歓喜の歌となり
それは新しい時代の
到来を告げる
全く新しい歌となる

泣き壁よ!
おんみの胸に積重なっている
神秘 神秘
それをひそかに
胸に抱きしめ
ひとり淋しく
はるかなとつ国へと
私は帰ってゆく

 
おんみが歓喜の歌を
あかつきの大空に
美しき声あげ
ひびかせるときは
いと近い

角笛(ショファー)が
私の耳に伝わり
おんみの呼ぶ声をきいたなら
新しい歌を合唱するために
翼に乗って私は
再びここに飛んでくる
シャローム シャローム!
ああ 最愛のエルサレムよ

深まりゆく神の川