浅尾省五の高血圧治療体験談(睡眠時無呼吸症候群)
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若い頃から健康診断の度に”血圧が高いのでは”とよく言われていた。”急いで来たのでそのせいかも”と良く答えていた。
ある時、廊下を歩いていたらフラフラしていることに気がついた。 これはおかしいな と思い、医者にかかった。やはり”血圧が高いなー”と言われた。そのころ私の血圧は下が110〜120で、上が150位であった。下が100を切ることは決してなかった。

一度会社にいるときに、”今日はいつもと違うぞ”と感じることがあった。頭が締め付けられた感じで胸はドキドキと動悸がしていた。このままではまずいと直感し、すぐそばの日比谷病院に駆け込んだ。もうその日の受診は終了の時間であったが受付で訳を話し受け付けてもらった。暫くして私の名前が呼ばれたので検診の部屋に入ろうとしたらドアの反対から女優の沢口靖子さんが出てきたのでビックリした。(関係ないか!)  私の前に受診していたのだ と思いながら医者の前に座った。症状を伝えるとすぐ血圧を測り始めた。するとすぐに医者の顔が変わった。これはまずい血圧が高すぎる。と言うのである。聞くと下が170で上が230とのことである。医者の動きが変わった。私は医学的なことは全く解らないので詳しくは書けないが、すぐにとても苦い薬を飲まされ、腕に注射、そして心臓周辺にニトログリセリン(?)入りの大きな膏薬(貼り薬)を貼られすぐにベットに寝かされた。
それから2時間程度経過したら、ほぼいつもの血圧に戻っていた。医者は”このまま入院だ”と私に告げたが、当時は私の人生で一番忙しい時期で病院のベットで寝ているような暇はなく、どうしても入院は出来ないと言って帰してもらった。その後しばらくは薬を飲んだが血圧は私の通常の値、110〜150を維持していたので一ヶ月もしない内に止めた。

96年3月始め、まだ春とはいえ寒い日の続くある日、私はスキューバダイビングのライセンスを取る事にした。伊豆半島で一日座学講習し、次の日はプールでダイビングスーツをつけての講習であった。まだ自分のダイビングスーツを持っていなかったため、借りものの装備で受講する事になった。たまたま借り物のダイビングスーツには頭に着けるスーツが無くて首から下だけしか覆われない事となった。素潜りは小さい頃から得意であったが本格的な潜水の装備をつけて水に入るのは初めてであり、勝手の違いに戸惑った。インストラクターが先に水に入り私を招き入れた。胸まで浸かったがドライスーツは全く水が体に触れないため水温を感じることはなかった。
インストラクターは少しづつプールの深い方に招き、頭が水に浸かった瞬間に、大変な恐怖感を感じた。プールに入った日は3月9日で屋外のプールの水温は何と摂氏6度であった。むき出しの頭を6度の水に入れた時、頭が締め付けられ割れんばかりの痛みを感じた。
それでもプールでの実習訓練は続けられたが、水に対して恐怖を感じるようになった。一通りのダイビングの訓練を終了しライセンスは頂くことが出来た。

暫くした頃、旅行仲間の集まりがあり、そこでダイビングのライセンスを取るときに低温の水に入り恐怖感を覚えた話をしていたら、アフリカ旅行仲間で慈恵大学病院の看護婦さんの榎沢さんに”何という無謀なことをしているの 自殺行為だ”と強く注意を受けた。
高血圧の人がダイビングをすること自体、危険な行為であるのに、おまけに水温6度の低温の水に頭部を覆わずに入るとは医療関係者から見るととても考えられない行為であったらしい。たしかに自分でも危ないと感じる位であったので自殺行為と思われて当然のことである。
榎沢さんが勤める慈恵医大病院の内科で高血圧治療を担当されているT先生を紹介して頂き、その後、継続的に診察していただくこととなった。
T先生からいろんな診察、検査を行っていただいたが、合併症もなくこれと言った原因も見つからなかった為、投薬による治療と運動、そして体重の減量に勤めた。運動の方はダイビングと時を同じくして始めたスクエアダンスを週一回、3時間を毎週行った。減量は暴飲暴食や遅い時間の食事を止め、量的にも控えめな食事とっする事で半年後には約8Kgの減量を達成できた。しかし、それらの努力後も血圧の下の数値が95−100位を維持し、なかなかそれ以下にはならず、また投薬の影響か、足や腕にかゆみが出てきて閉口した。

この状態が数年間続き降圧も半ば諦めていたところ、新聞である記事を読んだ。
それは、いびき、睡眠時無呼吸と高血圧症の関連を記したものであった。T先生の定期検診の折りにこのことを話、私自身もいびきをかき、また睡眠時の無呼吸が以前から家族に指摘されていた事を話した。早速慈恵医大の耳鼻科の千葉先生に紹介状を書いていただき受診することとなった。
受診した訳をはなし、早速検査してもらったところ鼻中骨がかなり曲がっているらしいことが解った。レントゲン写真を撮り、CTスキャンで断層写真を撮り調べて頂いた結果
いびきをかきやすく、また無呼吸になりやすい顎の構造であることも解った。また鼻の両穴の仕切板である鼻中骨が曲がっており、その結果鼻の気道がとても狭くなっていることが解った。鼻中骨湾曲は人間が立って歩くようになって以来、殆どの人にある症状とのこと。

色々と診断の結果 
★鼻の通りが悪い → ★息苦しいので寝るときに口を開けて寝る → ★咽の気道が閉塞しやすい → ★睡眠時無呼吸となる → ★はじめの内は苦しいが段々と慣れてきて苦しさを感じなくなる → ★体内の血液中の酸素濃度の低下 → ★脳から酸素要求 → ★心臓からの血液排出のパワーが上がる → ★高血圧 

と言う仕組みで高血圧症になっていると予想される と説明された。
(医学用語等は専門ではないので正確にはわかりません)

次に睡眠時無呼吸の状況を調べる必要があるので水道橋に99年12月に出来た”睡眠無呼吸障害クリニック”で一泊入院して調べることとなった。
諸手続を済ませ99年12月の始めに一泊入院した。そこでは睡眠無呼吸障害専門のクリニックでこぢんまりとした診療所である。夜8時頃になると個室のベットで横になり顔面や咽、体、指先等に沢山のセンサーを取り付け通常の睡眠状態で寝ているときの状態を測定するものである。鼻の空気の流れ、いびきの具合、瞼の動き、脳波、心電図、体の動き、睡眠の深さ、血液中の酸素濃度… 等々を一晩連続的に記録するのである。

後日、測定結果を解析した内容を伝えられたが私の場合、無呼吸状態が頻発しておりそれも1回が1分以上のが数百回もあることが解り、その結果、血液中の酸素濃度が71%まで落ちていることも解った。本来95%以上は常にあるものが71%とは睡眠時の内、半分は息をしていない状態のようである。昼間起きている状態で71%になるまで息を止めた場合はとても苦しくて耐えられないが睡眠時の無呼吸は長い時間をかけて少しずつ体が慣れたため苦しく感じなくなるらしい。

その対処方として無呼吸状態を検知し高い圧力の空気を鼻から送り込んで閉塞している咽を開ける装置CPAP(在宅持続陽圧呼吸療法)写真左の装置を使用することとなった。

この装置はアメリカ製で人工呼吸器みたいなマスクを鼻につけ、そこから伸びたパイプでコンピュータコントロールされた加給装置に結ばれている。正常の時は低圧の空気を鼻に供給し、人はそれを自然な呼吸として吸い込む訳であるが、咽が閉塞し息がある一定の時間停止すると装置は無呼吸状態と判断し、高い圧力の空気を鼻から喉に送出し閉塞した咽を開けて呼吸を確保する仕組みである。

その装置を使用した場合の効果を測定するため改めて一泊入院し、今度は装置をつけて寝たときの状態で測定するのである。その測定結果は目を見張るものであり、充分な深い眠りと連続した呼吸を得ることが出来た。
その時も鼻の通りが良くないため点鼻薬をつけ、鼻の粘膜を収縮させて鼻からの空気の取り入れをスムーズにした。

装置を自宅に持ち帰り毎日ロボットになった気分で装置をつけて寝ると朝起きたときの爽快感がこれまでのものと桁違いに良く、暫くしてから内科の検診を受けた結果、これまでいくら薬を変えても下がらなかった下の血圧値が90を切るようになってきた。内科のT先生もこの事実にビックリでこのまま行けば一気に問題は解決するかに見えた。

しかし、新たな問題が発生した。
元々鼻の通りが良くない問題があり、これをクリアーするために鼻の通りを良くする点鼻薬を毎日使用しているが、段々と効果が薄れ、2〜3週間後にその点鼻薬の効果が出なくなった。夜寝てから1〜2時間で息が出来なくなり苦しくてその装置のマスクを毎日夜中に外すことになってきた。結果、以前の状態と大した違いはなくなってきた。
もっと強い点鼻薬は無いのか聞いたが今使っているものが病院が出す一番強いものらしく、それ以上のものはなかった。せっかく導入したCPAPもこれでは何の役にも立たないこととなった。血圧値はまた元の状態に戻っていった。

悪いところを直すしかない!
耳鼻科の千葉先生に相談したところ、この状態からは手術をして直すしかないと説明を受けた。根本原因の無呼吸の手術と鼻の通りを良くする手術の二通りの選択肢があるが咽の手術は鼻の手術と比べて大変なため鼻の手術をすることとした。

手術は2000年7月10日の午後、千葉先生の元々所属する川崎駅の近くの太田総合病院で行われることとなった。そのために前日の9日(日)に入院した。

私は以前に一度入院し、手術をしたことがあるが、その時は局部麻酔であったため手術の様子が全て分かり、また2時間の手術が苦しくて途中で動いたため後でひどい頭痛がとれなく1週間延長した苦い経験があり、今回は多少心配ではあったが、”少なくとも今までは全身麻酔のための失敗例はない”との千葉先生の言葉を信用し、全身麻酔で手術することとなった。

午後1時過ぎからの手術のため12時過ぎに搬送用のベットが病室に運ばれた。
手術用の衣類に着替え、そのベットに移ってから、小さなカップに入った飲み物を飲まされた。それからベットに横になるところまでは覚えているが後は何も記憶にない。
気がついて目が覚めたので周りの人に”手術はまだですか?”と聞くと”とっくの昔に終ったよ” とのことにビックリ。何の感覚もなく手術が終わるなんて考えてもみなかった。
手術は2時間近く掛かったようだが全てうまく行ったとのことに一安心。

鼻の穴の内側から切り開き鼻の奥深くまである曲がって問題となっている鼻中骨の板状の軟骨をおよそ4センチ四方を切り出し、曲がりを直してまた元の鼻の中に戻すという離れ技?が行われた模様。そして鼻の穴の腫れた内壁の粘膜を削り取り空気の流通がうまく行くようにしてもらったらしい。外見は何も変わらずただ鼻の両穴に脱脂綿が詰めてありちょっとかっこ悪いのと、鼻で息が出来ない不便さだけであった。 手術後の経過も全く快調で痛みも腫れもなく調子は良かったが、何か頭が重く鈍痛の様なものが多少感じられた。

手術後3日目に鼻の中に詰めてあるガーゼを取り出すというので処置室に行った。
鼻の中にガーゼが詰められている? 半信半疑で処置室の椅子に座ると看護婦さんから薄い金属のお皿を顎に当てられた。あいにく千葉先生は大学病院に行かれていたためガーゼの取り出しは他の先生であった。以前に千葉先生からガーゼの取り出しは多少痛いと聞いていたが案の定、今回の入院手術の山であった。長くて尖ったピンセットみたいなはさみを鼻の穴につっこんだかと思うとガーゼをつかみズルズルと引き出した。真っ赤に血で染まったどろどろのガーゼが一枚出てきた。その時は広げると10センチ四方もあるかなと思ったが後で確認したら10センチx20センチ程もあった。一枚のガーゼが抜かれた瞬間に鼻からは真っ赤な血が滴り落ち、その痛さに両目からは涙があふれ出た。もう終わりかなと思ったら看護婦さんが手術時のカルテを見ながら浅尾さんの鼻には8枚のガーゼが入っていると言うのである。一枚でかなりの量と大きさで、痛みを伴うのにあと7枚も鼻の中に入っているとはとても信じられなかったが、その医者は次から次と私の鼻の奥に器具を差し込みガーゼを抜いていった。苦痛の数分間であったが終わって血が止まるまで流れ落ちる血を皿の上に流した。暫くすると血も止まり、それまで鈍痛のような頭の痛みが嘘のように取れすっきりした気分に大満足。まだ脱脂綿は詰めているもののガーゼが無くなってからは日に日に快適になっていった。10日間の入院となったが完璧な仕上がりで大満足できる結果となった。

これで空気の取り入れ口の改造が終わり念願のCPAPをつけて快適な眠りが出来るかどうか試すこととなった。
手術後最初のCPAPを装着して寝た日は苦しく感じて30分ももたず、この先どうなるのかと内心心配したが、数日後からはその苦しさも感じられなくなり、寝てから起きるまで理想的なCPAPの効果が得られるようになった。
手術前は一度も朝まで装着して寝ることは出来なかったが、その後は毎日夜中に起きることはなく、深い眠りを得ることが出来、また無呼吸の状態もないため下の血圧値が80を切る様になり以前から飲んでいた薬を減らすことになった。

しかし、CPAPの装置は自宅にあり、旅行や出張等の場合とてもそれを持ち歩く訳には行かないため、自宅以外ではまた同じ不安がつきまとう。その対処として無呼吸用のマウスピースを作ることとにした。このマウスピースは睡眠時に自分の舌が重さでダラリとなり咽を閉塞するのを防ぐものである。下顎を前につきだした状態を保つマウスピースで咽が閉塞しにくくする為、CPAPが無くてもかなりの効果がある模様。
自宅にいるときはCPAPとこのマウスピースを併用し自宅以外に出かけるときはこのマウスピースを持ち歩くことにしたことで、睡眠時の無呼吸が大幅に防ぐことが出来、高血圧対策は十分な効果を得ることが出来た。

血圧を下げるための長い道のりであったが大きな成果を得ることが出来た。
私の高血圧治療に沢山の方々のご協力があり、晴れて難題もクリアーすることが出来ました。
この事実を同じ様な境遇にある多くの方々の参考になるのではと考え、私の体験談をホームページに掲載することとしました。


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