前回は「運動処方ってなに?」というテーマでお話ししました。
キーワードは「安全と効果」でした。
今回は、具体的に運動プログラムを作成する上での基本的な考え方についてお話しします。


 一般成人の健康・体力の維持向上には、有酸素運動が必要です。
主なねらいは、呼吸・循環機能の改善と肥満解消です。
安全で効果的な有酸素運動プログラムを作成するためには、運動の種類、強度、時間、および頻度を決めなければなりません。
それぞれについて、ワンポイントアドバイスします。

 まず「運動の種類」です。
運動の種類としては、下肢筋群が運動に参加 する大筋活動であり、動作がリズミカルで反復するものであることが必要です。
この条件を満たす運動として、歩行、走行、自転車、水泳が代表的 です。
テニス、サッカー等のいわゆるスポーツも充分有酸素運動ですが、多くのスポーツは規則的な反復運動ではなく、相手・場面によって無酸素運動も含まれていることから、安全面を考慮して運動処方では全面にでないのです。

 次に「運動の強度」です。
スポーツ科学は、この運動強度を“適度”や “マイペース”等の抽象的な表現から、定量的に表現するために多くの時間を費やしてきました。
その結果、安全で効果的な有酸素運動の強度指標 として各自の最大有酸素能力の約半分の強度が提案されています。
これは具体的には心拍数で110〜120拍/分、主観的には“楽である”から“ややきついと”感じる強度で、いわゆる人と話し合いながらのジョギングがこの運動強度に相当します。

 続いて「運動の時間」です。
有酸素運動としての効果を得るためには、最低15〜30分間運動を持続することが必要とされています。
勿論、ダイエットが目標の人はこの時間を長くして消費エネルギーを増やす必要があります。
運動時間で大切なのは、1〜2分の運動を合計して15分以上ということでは、有酸素運動として有効ではないということです。
なぜならば、ヒトの諸機能が運動負荷に適応するためには、最低3分以上の時間が必要だからです。

 最後に「運動の頻度」についてです。
週何日運動すればよいかということです。
勿論運動効果の面からは毎日実施したほうが効果的ですが、最低条件としては週3日でよいとされています。
私はこの週3日を天候や体調が悪いときまで無理して運動しなくてもよい、一日おきの運動でも維持向上すると解釈したいです。
 以上が安全で効果的な有酸素運動プログラム作成の基本的な考え方です。
実はこれらの条件は、一般成人の健康・体力の維持増進に必要とされて いる1日の運動量200〜250kcalに相当する中味となっています。
最後に、上記のいずれの条件も大切ですが、何よりも大切なものは「運動を継続」することです。
いくら良い運動プログラムを作成しても、継続しな ければ効果は期待できません。
継続こそ力です。
次回はもう一つの大切な健康運動である、無酸素運動(筋力トレーニング)についてお話しする予定です。

平川 和文
神戸大学発達科学部教授

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