@VE(Value Engineering)とは、製品やサ−ビスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コ スト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法です。
AVEは、製品または仕事の機能を分析し、その必要な機能を確実に達成して、最低の総コストにする組織的な活動 であると定義されています。
Bどんなものにも機能があります。機能の追求がVEの最大の特徴です。
・機能を辞書で調べてみますと、役割・目的・働きといった説明がなされています。
・何のために買うのでしょうか。
たとえば、冷蔵庫。わたしたちは、”何のため”に高いお金を支払って、この冷蔵庫を買い求めるのだろうか。
それは、”食物を冷やす””食物を保存する””氷をつくる”などのためです。
・ほしいのは機能です。
わたしたちは、冷蔵庫という”物”がほしいのではなく、それが果たしてくれる”食物を保存する””氷をつくる”など
の”働き”がほしいために、高いお金を支払っています。
こうした考えは、たんに製品だけでなく工程や作業,間接業務についてもあてはめられます。
・機能を追及する。
そこで、VEでは”何のために”製品や作業,間接業務があるのかを、とことん追求します。
このように、”何のために”という質問を、改善すべき対象になげかけて、機能つまり、”本来果たすべき働き”を追 求し、機能本位に改善をすすめていきます。
VEの考え方
@ものの本質である機能を考えます。
・従来の改善
現状調査→改善検討(改善対象の機能追及をしない)→改善案
・VEによる改善
現状調査→機能追求(”何のために、この作業はあるのか”と機能追求)→機能本位の改善検討→改善案
A他人の知恵や知識を活用する
B物の価値を考える
機能とコストの関係で価値をとらえて、”機能を高め、コストを下げる”ことによって、価値を高めるのがVEの狙いで す。
Value(価値)=Function(機能)/Cost
・コスト低減による価値向上(F →,C ↓,V ↑)
・機能向上による価値向上 (F ↑,C →,V ↑)
・コスト低減と機能向上による価値向上(F ↑,C ↓,V ↑)
VEの範囲
VEの適用分野は、購入資材費の低減にはじまって、製品全体のコスト低減や製品開発段階にも大きな成果をあ げています。現在は、製品ばかりではなく、組立作業や機械加工、包装や運搬などの製造工程、さらに物流業務への適用も活発に進められています。また、書類の作成や伝票の発行、事務手続きなど、管理業務、間接業務にも適用できます。
VE活動は製造業だけでなく、サ−ビス業や建設業などでも導入され、会社の利益改善に効果を発揮しています。
このように、コストの発生するものすべてがVEの対象となるのです。
VEの必要性
経営環境がめまぐるしく変化する今日、企業経営には効率化のみならず絶えざる革新が求められています。単に安いものをたくさん作る努力だけでは、多様化し高度化した顧客の要求をみたすことはできません。
お手本のない新たな時代に企業が生き残るためには、現状改善型の努力ではなく、現状を打破する革新が必要です。何をすべきか、どんな働きを果たさなければならないかを常に見直し、製品やサ−ビスの価値を高めていくその努力を欠かすことはできません。
VEは、まさに価値向上のための技術であり、新たな時代をリ−ドしていく企業にとって欠くことのできない管理技術といえます。
VEの資格認定
社団法人日本バリュ−エンジニアリング協会は、米国VE協会(SAVE International)との連携によりVE専門家資格であるCVS(Certified Value Specialist)の認定と国際登録を行っています。
このCVS資格は、受験者のVEに関する知識、経験、行動について審査し、極めて高い水準に達していると認められた場合に授与されるもので、日・米双方のVE協会に国際登録されます。
社団法人日本バリュ−エンジニアリング協会は、国内外のVEに関する情報を提供し、産業界におけるVE活動の促進とVE成果の向上を目指して、さまざまな事業活動を展開しています。
VE事例紹介
上記CVS資格を取得して、VE活動を推進しています。
米国VE協会のwelcome to SAVEのcertificationをご覧ください | |
三本の矢
社団法人日本バリュ−エンジニアリング協会発行のバリュ−・エンジニアリングNO.212(2002年9月)に掲載されまし たVE事例です。
VE活動の歴史の中で、製品VE・開発VE活動を推進してきました。活動を振り返ってみて、製品VE・開発VEにおい ては、三本の矢「↑VEの原点とVEの5原則,↑イメ−ジ思考と論理的思考,↑情報解析」により、目標と現状のギャ ップを対策することだと思います。
社団法人日本バリュ−エンジニアリング協会発行のバリュ−・エンジニアリングNO.219(2003年11月)に掲載されましたVE事例です。
高血圧治療のVE成果が短期間に得られたのは、
・やる気。
・インタ−ネットを活用して収集したテ−マに関する断片情報をテ−マの解決に向けて、問題点を体系的に整理して真因を追究。
・代替案の作成においては、医師が「血圧が高いときは寝ればよい」がヒントになり、NM法のQBを活用し欠点克服にチャレンジ。等を推進したことです。
なお、本VE活動は、実用VE研修会テキストのVEジョブプランを活用する計画でした。しかし、インタ−ネットから高血圧に関する情報を収集して、服用していた高血圧用降圧薬を止める視点から情報を体系的に整理しているうちに、問題解決の糸口が見つかりました。
高血圧治療のVEを効果的に進めるためには、本テ−マに適したVEジョブプランが必要であり、代替案の欠点克服と並行して、VEジョブプランの研究にチャレンジしています。
戦略VEプログラムを活用した製品開発VE事例
@戦略VE(VA)プログラム
戦略とは、世の中の流れを見定め、この流れをうまく利用して、競争相手と自分との差が最も大きくなるように、努力を傾注することです。
戦略VE(VA)プログラムは、マ−ケットシェア−の拡大と収益力の向上を目的とし対象製品を取り巻く販売の状況・市場顧客の状況・競争企業の状況を十分に把握し、変化する戦略的成功要因KFS(kye Factor for Success)を掴み、性能・品質・価格を企画し、永続的に競争相手との差別化を図るプログラムです。
A戦略VE(VA)プログラムを骨子に、開発段階からのシステマティツクな取り組みにより、当初目標を達成した開発VE事例を紹介します。
機能達成手段の発想は、発想技法を選択して、各機能毎にアイデアを発想します。発想法として、ブレ−ンスト−ミング法・特性列挙法・欠点列挙法・希望点列挙法・等価変換法・NM法等があります。
発想技法の選択では、小さな目的には小さな手段を、大きな目的には、大きな手段を用いるのが、思考の経済としては最良の策です。
異質情報を組合わせて、飛躍的な創造を行う手段としてNM法があります。
NM法は、金沢工業大学(創造性工学研究所長)の中山正和教授が開発したもので、キ−ワード(KW)を使って、着想を求めると共にそれをカ−ド化し、異質の着想(ヒント)の統合を図ることによって、ユニ−クな発想(アイデア)を導き出す技法です。 中山教授は、「創造とは、異質なものを組合わせて新しいハタラキをつくること」といい、新しい技法としてNM法を体系化しました。 |
機能から発想したアイデアを体系化することにより、アイデアの位置付けを明確にします。また、アイデアの体系化により、不足しているアイデアを発見し、アイデアを追加します。
@アイデアの漏れを防止する。
Aアイデアを追加し易くする。
製品VEで、機能からアイデアを発想し、アイデアを体系化して、多くの特許を出願した事例です。
実用VEは、現場の問題(Problem)を実践的(Practical)に解決するVE手法として日本バリュ−・エンジニアリング協会西日本支部が開発したもので、その考え方やステップが作業や治工具の改善、業務や事務などの改善に即活用できます。
私は、実用VE研修会の講師として活動をしてきました。
WAVE手法
「各ステップがワ−クシ−トのみで作業できるように工夫している」WAVE手法を活用して、部品VE・製造VE等で活動を行いました。
何か物事を改善しようとするとき、改善しようという結果のみに心を奪われて改善の糸口がなかなか見つかりません。「やめられないか」「減らせないか」「ムリ・ムラ・ムダな働きはないか」について、じっと見つめていると改善の糸口(ネタ)が見つかります。(ヤマハの現場改善発想法)
私は、VE活動の歴史の中で、VE専任者として、製品VE・開発VEを推進しました。
資源不足の戦後まもない頃、GE社のアスベスト事件がVEの契機となりました。
VEの考え方
@ものの本質である機能を考える
A他人の知恵や知識を活用する
Bものの価値を考える(価値=機能/コスト)
戦後まもないアメリカのGE社という電気メ−カ−での出来事です。 購買部門に倉庫の敷物としてアスベストの調達要求がありました。 資材が不足していた時代で、アスベストがなかなか手に入らないので、購買の担当者は専門業者に相談しました。 すると逆に、アスベストは、”何のために”使用するのですか、という質問を受けました。 購買の担当者は、アスベストは、”燃焼を防ぐ”ためですと答えたところ、専門業者はアスベストに代わるもっとコストの安い”燃焼を防ぐ”敷物があることを教えてくれました。 |
購買の担当者がさっそく、その敷物を調達しようとしたところ、当時のGE社では、社内の消防法でアスベスト以外のものは使用してはならない、ということになっていました。 しかし、アスベストという”物”が必要なのではなく、”燃焼を防ぐ”という機能がほしいのであって、”消防法そのものがおかしいのです。 この出来事をキッカケにVEが誕生しました。 つまり、固定観念を捨て、物の本質である機能にたちかえって、ものごとを考える必要性に気がついたのです。 |