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小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会
会長声明 2010.7.8 
 本日の和解成立にあたり、「支援する会」は遺族の決断を全面的に支持致します。

 11年前、「小児科医は天職」と言い切った中原医師が、過重労働から自死に追い込まれた当初は、労災であることさえ認められませんでした。医師の過重労働は、世間では殆ど認知されていなかったのです。遺族が労災認定を求める訴訟を起こし、当直勤務の実態や、過酷な勤務体制を訴える中で、医師の労働環境の劣悪さは、多くの人の知るところとなりました。

 行政訴訟では勝訴しましたが、病院の管理者責任を求める民事訴訟では、地裁、高裁共に敗訴。高裁判決の破棄差し戻しと安全配慮義務違反の認定を求めて、遺族は最高裁に上告受理の申立を行いました。受理されるのはごく稀であると承知した上での申立です。 受理を求めて遺族が全力を尽くした結果、最高裁は異例の和解勧告を行いました。これは「より良い医療を実現する」ために、司法がその良心を発揮したものと考えます。 

 最高裁の重い扉が開いたのは、33,000筆を越える署名やメッセージ、ボールペン作戦等でご協力くださった皆様のおかげと心から感謝申し上げます。

 一方で、高裁判決の破棄差し戻しに至らなかったのは、私ども「支援する会」の力不足とお詫び致します。 

 昨年の日本医師会による勤務医の健康調査でも、過労から心身の健康を害する医師が少なくないとの結果が出ております。医師も、病院も、国民によりよい医療を提供するためには、まず医師自身の健康を守ることが大切という共通認識に立つべきです。

 中原裁判が終結しても、医師不足、医師の過重労働がただちに解決するわけではありません。長年、医師不足を認めなかった国が、ようやく医師の増員に政策転換したことは、社会的成果の一つと考えますが、一連の運動や裁判の中で問われたことの多くが課題として残されています。 

 この和解が、日本の医療が変わる初めの一歩となることを願ってやみません。

                                               
 「支援する会」会長 守月 理


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