最新判例演習室について

 雑誌「法学セミナー」で連載している、学生向けの(裁)判例紹介コーナー。刑事訴訟法の部は、2004年4月現在、南山大学の岡田悦典、静岡大学の渕野貴生両氏と私が受け持っています。3ヶ月に1回、誌面に登場する計算ですね。この連載を担当するようになって、3年目になります。

 私が執筆する際には、いくつか方針を立てています。
 第1に、典型論点が問題となった事例を扱うこと。これは読者の多くが学生であることを考慮したものです。
 第2に、面白いことをいうこと。典型論点をとりあげるのですから、読者はその問題についてさまざまな文献を簡単に入手できるわけ。そこで、どんな文献にも書いてあるようなことは省略し、誰も言っていないようなことを書こうと努力しています。もちろん、誰も言っていないことを書いても、全く面白くないことは十分にありうる訳ですが……
 第3に、私の価値判断をもって外在的に判旨を批判するのではなく、判旨内在的にその論理の当否検討するアプローチをとろうとしていることです。その理由は、紙幅の制約によるところが大きいです。理由を具体的に挙げるスペースがないのに無理に外在的批判をしようとすると、えてして、「この判例は、わしの考えと違うがゆえにおかしいのじゃ」なんて感じに終わってしまいがち。このような放談は避けようとしているわけです。

 以上のような方針のもとに書いていることを念頭において読んでください。判例評釈の定石どおりに書いているわけではありません。だから、私の原稿から、判例評釈の一般的書き方を学ぶことはできません。「典型的な判例のようにみえても、こんな見方もできるんだなあ」といった感じで、発想のヒントを得る素材として使ってやってください。