穏やかな、夢を、見ました。
あの人と、あの子たちと、一緒に笑っていた、あの日を。
あの人の慈愛に満ちた微笑み。
あの子たちの無邪気な笑い顔。
今でも、私は思い出すことができます。
私たちが、過酷な運命を知らず、一緒に暮らしていた穏やかな時間。
それを、私は思い出すことができます。
ほんの僅かに支配から逃れ得た時間のなかで見た、穏やかな夢。
それを、私は取り戻したいと思っているのです。
自分という総てを犠牲にしても、それを取り戻したいと、強く思っているのです。
でも、それは恐らくこの手に戻ることのない、幽遠の時間。
取り戻すことの最早叶わない、喪われてしまった優しい日々。
運命という残酷な楔で切り裂かれてしまったからこそ、かけがえのない優しさを纏った大切な思い出。
本当に、穏やかな夢を見ました。
あの子たちと闘わなくてはならない。
そんな時だというのに・・・。
私の心がもたらした、消し去ることのできない悔恨。
穏やかな、大切な、夢。
頬を伝って滑り落ちる涙を、私は感じていました。