幸せな、夢を、見た。
あいつと、あの人と、一緒に笑いあっていた、あの日を。
あいつの笑顔。
あの人の微笑み。
今でも、俺はちゃんと覚えている。
俺たちが、何の障害もなく、一緒にいられた幸せな時間。
それを、俺はちゃんと覚えている。
つかの間のうたた寝で見た、幸せな夢。
それを、俺は取り戻したいと思っていた。
総てを捨てても、それを取り戻したいと、本当に思っていた。
でも、それは二度と取り戻せない、泡沫の時間。
振り返ってはいけない、喪われた大切な日々。
二度と手にすることが出来ないがゆえに、至上の輝きを放つ大切な思い出。
本当に、幸せな夢を、見た。
あの人と最期の決着をつけに征かなくてはならない。
そんな時だというのに・・・。
俺の心がくれた、つかの間の安らぎ。
幸せな、大切な、夢。
頬を伝い落ちる涙を、俺は感じていた。