〜 ファイナルファンタジー9 〜
「ねえ、ジタン。何で、お姫さまは名前が3つもあるの?」
「へっ?」
前から不思議に思っていたことを素直に尋ねただけなのに、ジタンは大きな両目をさらに大きく見開いて、間抜けた声を出した。
ぼくは少しだけむっとしちゃった。でも、分からないことがあるのは、『セイシンエイセイジョウヨクナイ』ことだそうだから、我慢して、もう一度尋ねた。
「だから、お姫さまは名前が3つあるでしょう?」
「へっ?」
やっぱり、ぼくが聞きたいことが分からないみたいだ。いつもなら、とってもとっても察しがよくて、隠し事ができないくらいなのに。
仕方がないから、もう少し詳しく話してみることにした。
「お姫さまの名前、ガーネット・ティル・アレクサンドロス17世っていうんでしょう?名前、3つ、あるよね?」
ここまでいって、やっと、ジタンはぼくの言いたいことをわかってくれたらしい。
でも、何でそんなに不思議そうにぼくを見つめるのかな?
そんなに目を丸くしてぼくのこと見つめなくても・・・・・・・・・・・・。
「おい、ビビ。それ、本気でいってるのか?」
小首を傾げてそう言ったあと、ジタンはおもむろに大きくため息をついた。
「ぼく、何か変なこと言った?」
ぼくも目を丸くしてジタンを見つめ返す。
やれやれと言いたげに頭を左右に振るジタン。
「あのなぁ〜、ダガーの名前、長いけどよ、あれで一つなんだよ。ガーネットが名前でティル・アレクサンドロスが名字ってとこかな?」
名字?名字ってなんだろう??おじいちゃん、そんなことちっとも教えてくれなかった。名前とどう違うのかな???
何だか、頭が、混乱してきた。
「かくいう俺も、ジタン・トライバルっていうのが正式(?)な名前。でも、だあれも名字では呼んでくれたためし、ないけどな〜」
ジタンも名前、長いのあるんだ!
「ま、名字で呼ばれても、俺も自分が呼ばれてるって気づかない可能性大だけどな!」
ジタンは呵々と笑ってそんなことを言っている。
どうしよう、名前、長いのないと、変なのかな?ぼく、普通の人じゃないのかな?ぼく、そんなのないよ〜。
なんだか、悲しくなってきちゃった。しくしく。
「おいおい、泣くなよ〜。俺、お前をいじめるようなこといったかぁ〜?」
頭をかきつつ、苦笑するジタン。
ジタンには悪いと思うけれど、ぼく、涙が止まらない。
ジタンが心配そうにぼくの顔をのぞき込んで、優しく優しく頭を撫でてくれる。
やっぱりジタンはとってもとっても察しがいい。
そんな不器用な心遣いが嬉しくて、涙は自然に止まってくれた。
「なあ、ビビ。じゃあ、俺がお前にもう一つ、名前やるよ」
えっ?ジタン、ぼくに、名前くれるの??
「そうだな、何がいいかな?お前、なにか好きなものあるか?」
好きなものって、それが名前になるの、ぼく、ちょっとやだよ。
「じゃあ、クポっての、どうだ?」
クッ、クポ?もしかして、それ、クポの実?・・・・・・・・・・・・、ぼく、モーグリじゃない。
「それじゃあ、ギサール!」
ギサール?今度はギサールの野菜からとったでしょう〜。ぼく、チョコボでもないんだけど・・・・・・・・・・・・。もう、ふざけてばかりいないで、もう少し真剣に考えてよ!
「まあ、そう怒るなって・・・・・・。真面目にやればいいんだろ」
じゃあ、どんな名前、考えてくれるの?
「う゛〜ん、オルドゲロス。・・・・・・・・・・・・、てのはあんまりだしなぁ〜」
うんうん。ぼくもそう思う。
「オル・・・・・・、オル・・・・・・・・・・・・。そうだ!オルニティアってのはどうだ?ちょっと不思議な感じのする名前だけど、お前にはぴったりだと思うし・・・・・・」
オルニティア。
ビビ・オルニティア。
ぼくの新しい名前。
何だか、とっても格好いいや。
ありがとう、ジタン。ぼく、この名前、大事にするね。
END