〜 ファイナルファンタジー9 〜

 

【貴女への願い】


 ねえ、ミコトのお姉ちゃん。あと、どれだけ、ぼくは生きていられるのかな?



 残念だけれど、貴方の寿命を延ばすことは私にもできない。貴方の身体のなかにある遺伝情報にはあらかじめタイマーが、生命として活動できる時間が定められているのだから。それを越えようとするには貴方の遺伝情報を一から作り替えなければならないの。



 ??



 そうね、こちらにはない概念だったわね。貴方には最初から寿命が定められていて、それに従ってまるでスイッチが切れるように死が訪れると言ったほうが解るかしら?



 ?



 まあ、いいわ。どちらにしろ、私にはできることはないのだから。でも、ひとつだけ訊いてもいいかしら?



 なあに?



 どうして、貴方は生きていたいと想うの?『生存を望むこと』、それが人として生きている証なのかしら?



 ・・・・・・・・・・・・。ぼくが、生きていたいと想う理由はね、簡単なんだ。ただ、ジタンにもう一度、会いたいから。それだけなんだ。



 ジタン?彼にもう一度会う?でも、彼はもう・・・・・・・・・・・・。



 ううん、ジタンはきっと今でもあそこに、イーファの樹にいるよ。一生懸命、どうやって脱出しようかなって、思ってるよ。



 どうして、そう、思うのかしら?



 さあ?



 さあ?それでも彼が生きていると想うの?



 ぼくは、ただそう感じるだけ。でも、それが多分、正解なんだ。だって、ジタンはぼくに『生きること』を教えてくれた人だもの。ジタンはそう簡単に『生きること』をあきらめたりはしないよ。



 それは、貴方の思いこみではないのかしら?私にはただの気休めにしか思えないのだけれど・・・・・・。



 ・・・・・・ミコトお姉ちゃん。お姉ちゃんは本当に生きたいと思ったこと・・・・・・ないんだね。そう、昔のぼくとおんなじで、ただ何となく日々を過ごしてるだけなんだ。



 私が無為に日々を送っていると言いたいの?



 ・・・・・・。お姉ちゃんにはお姉ちゃんの考えがあるのかもしれないけれど、ぼくにはそう思えるんだ。ねえ、お姉ちゃん、ミコトのお姉ちゃんは毎日が楽しいって思ったことある?



 ・・・・・・・・・・・・。



 ぼくにはあるよ。クエンおじいちゃんやジタンと一緒に過ごしている時が、とってもとっても、ぼくには楽しくってしょうがなかった。まあ、ジタンには時々、どきどき冷や冷やさせられたけど・・・・・・。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 人はね、自分一人だけじゃ『生きるということ』の意味も、『死ぬということ』の意味も、どちらも知ることは不可能なんだ。だってそれは孤独なままじゃ理解できないことなんだから。人の『心』と触れあってこそ理解できることなんだから。



 ・・・・・・、確かに、私は今まで独りで過ごしてきたのかもしれない。仲間であるはずの彼らジェノムたちとは異なり、わたしには最初から『魂』が与えられていたのだから。でも、それが何だというの?私にはそれが当たり前のことだったのだから、疑問に思うこともなかったわ。



 ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはジタンに会うべきだよ。そして、自分の『想い』をすべて話しちゃうんだ。『心』のままに、すべてのことを・・・・・・。ジタンはきっと全部聞いてくれるよ。そうすれば、お姉ちゃんも少しは寂しくなくなるよ。



 ・・・・・・・・・・・・。私には彼に話すべきことなどないわ。私が彼に会う可能性は限りなく低いのだから、その仮定は無意味よ。それに、私は寂しいと想ったことはないもの。



 ・・・・・・・・・・・・、お姉ちゃん、それじゃあ、お姉ちゃんが可哀想だよ。



 可哀想?私が?



 ・・・・・・・・・・・・。人は独りじゃ生きていけないんだよ。自分では独りで生きていると思っていても、実際にはいろんな人に助けられてるんだよ。ただ、それに気づいていないだけで。ねえ、お姉ちゃん、お姉ちゃんは本当に独りで生きてきたの?



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 あ、子供たちが呼んでる。ぼく、行かなきゃ。お姉ちゃん、またね。 きゃっ!



 ビビ!大丈夫!?



 はは、しっぱいしっぱい。ぼく、何でもないところで転ぶのが、最近、得意なんだ。



 ビビ、貴方?



 ねえ、お姉ちゃん。何も言わないで。ぼく、わかってるから・・・・・・。



 ビビ、わかってるって、貴方はそれでいいの?ジタンに会いたいんじゃなかったの?



 う〜ん。でも、仕方ないよ。ぼく、精一杯がんばってみるけど・・・・・・・・・・・・。



 ビビ、私に何かできることはないのかしら?



 じゃあ、ひとつお願い。ジタンにもしもう一度会えたなら、お姉ちゃんからは何も言わないで。ぼくがどんな風に生きたか、きっとジタンなら、わかってくれるだろうから。ね?



 それが、貴方の願い?それならば、私は貴方のいうとおりにするわ。それでいいわね?



 うん。それともう一つ。ミコトお姉ちゃん、ぼくの子供たちの面倒を時々でいいからみてくれないかな?あの子たちと触れあうこと、きっとお姉ちゃんにとっていいことだと思うから。



 子供たちの面倒をみる?何故、それがいいことなの?



 いつか、きっとわかるよ。それじゃ、あの子たちがしびれきらしちゃうから、ぼく、行くね。



END

 

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