〜 ファイナルファンタジー9 〜
ザザン・・・・・・
どこかで、何か、音が、してる・・・・・・
ザザン・・・・・・
あれは、波の音?
ザザン・・・・・・
波って何だろう?
ザザン・・・・・・
ぼく、何でそんなこと、知ってるんだろう?
ザザン・・・・・・
ぼく、何処にいるんだろう?
ザザン・・・・・・
何故か、身体が、とっても、暖かい・・・・・・
◇◆◇
「ああ、やっと目が覚めたアルね」
不意にそんな言葉が、ぼくの耳に飛び込んできた。
とっても不思議なイントネーション。こんな話し方、今まで聞いたことない。
お陰で、ぼくに、誰かが話しかけているって、気づくのが少し遅れちゃった。
「あんなところで寝ているなんて、自殺行為アルよ」
目を開けると、そこに、不思議な格好のおじいさん(?)が、ぼくのことを、心配そうに見つめていた。
本当に奇妙な格好のおじいさん(?)だ。
真っ白で、大きな顔。大きな口。そして、そこから垂れている長い長〜い、舌。
でも、その目は、本当に、心配そうにぼくのことを見ている。
「どうして、あんなところにいたアルか?わたし、もう少しで気づかずに通り過ぎてしまうところだったアル」
おじいさん(?)の声に宿る、不思議な、不思議な響き。
そんな響き、今までぼくは聞いたこともない。だから、少しだけ、戸惑う。
「わたし、ク族のクワンいうアルよ。お前、名前、何というアルか?」
ぼくの、名前?
ぼくに、名前なんて、あったっけ?
「ぼくの・・・・・・な・・・まえ・・・・・・?」
そんなもの、ぼくに、あったこと、あったっけ?
ぼく、いつから、自分のこと、ぼく、っていうようになったっけ?
いろんなことが頭のなかでぐるぐるしている。
「お前、名前、ないアルか?」
クワンさんが何を言っているのか、よく理解できなかったけど、ぼくはとっさに頷いていた。
「うむむ。それは困ったアルね。名前は大切アルよ」
クワンさんは眉間(?)にしわをよせて難しい顔になった。
ぼく、何かいけないこといったのかな?
クワンさんはしばらくの間考え事をしていたみたいだった。ぼくは何をすればよいのかまったくわからなかったから、そんなクワンさんをただ見つめていた。
遠くで、ザザンと波の寄せる音がしている。
「よし、決めたアル!」
突然、両手をポンとたたき、クワンさんは叫んだ。
ぼくはびっくりしてしまった。だって、あまりにも突然大きな声を出すんだもん。
「お前の名前、ビビ、アルよ。今、わたしが決めたアル」
ビビ?
それが、ぼくの、名前??
クワンさんが、ぼくに、名前、くれるの???
「お前は、ビビ、アルね。そして、わたし、ビビのおじいちゃんアルよ」
おじいちゃん?
クワン、おじいちゃん??
そう、呼んでもいいの?
ぼく、そう呼んじゃうよ?
なんだか、胸のあたりがキュウっと痛いや。それに、何故か、目から水があふれてくる・・・・・・。
これは、何?
「泣くほど、いや、アルか?」
泣く?これが泣くっていうことなの?でも、いやじゃない。だから、ぼく、クワンおじいちゃんにそう告げる。
「ううん。いやじゃないよ。ただ、何故か、目から水があふれてくるんだ」
「そう・・・・・・・・・・・・アルか。わたし、家族ができて、とても嬉しいアル」
そういうと、おじいちゃんはぼくのことを優しく抱きしめてくれた。
あったかい。
心がとてもふわふわして、気持ちがいい。
ぼく、今までこういう風に他の人と触れあったこと・・・・・・・・・・・・なかった。
おじいちゃん、クワンおじいちゃん。
ぼくのこの気持ち、なんていうのかな?
END