〜ファイナルファンタジー10 〜

【淡い願い】

 

 俺、気が変になっちゃったのかな。
 な〜んてこと、この世界に来て思ったの、一体どれくらいあったんだろう。

 どうして自分がここに居るのか何て、考えてもわけ分かんないから、とりあえずそれは横に置いてみて、この世界に溶けこんでみようかなんて考えたりしたね、ほんと。
 でもさ、突然変なことに巻き込まれて、見たことも聞いたこともない世界に放り込まれてさ、文句のひとつもなく一生懸命順応しようとしてる俺って、何だか健気。

 俺が住んでた『ザナルカンド』が、千年も前に滅んだ都市だって?
 それ、最初は何かの冗談かと思った。
 でも、会う人会う人そういうんだから、きっとそれがここでの現実なんだろう。

 ここはとてもへんてこな世界だ。
 俺が常識として知っていることが、ここでは通用しない。
 かと思えば、覚えのある仕草や歌が俺のなかの記憶と微妙に異なる形で使われてたりするんだ。
 そんなことが判って俺はほっと安心したんだ。
 ここはどこかで『ザナルカンド』と繋がってるんだって、俺、安心できた。

 やっぱりどんなに強がってみても、正直心細かったんだ。
 あてもなく世界を彷徨うしかないのか、とか思ってたら親切な人間は何処にでもいるものなんだと感心した。
 あ、俺の人徳ってヤツかもね。
 ま、それはさておき、俺は事情をよく飲み込めないまま、っていうかさ、俺ってば後先考えずに突っ走っちゃうことがよくあって、そのお陰で『召喚士』だという少女と出会うことができたんだ。

 『召喚士』。
 聞いたことも見たこともない不思議な職業(?)。
 どうやら何もない空間から不思議な獣を呼び寄せて使役する不可思議な能力を持つ人のことを指すらしい。

 でも、そんなことはどうでもよかった。
 『召喚士』だという少女の瞳に宿る強い光を目にした途端、彼女を助けたいって思ったんだから。
 細かいことはもうどうでもよくなっていた。
 多分同い年くらいの少女は、俺が知るどんな女の子たちとも違っていて、何だか張りつめた糸のような緊張感を漂わせてた。
 時々にっこり笑ってくれるけど、どこかぎこちないその笑顔。
 柔らかく微笑んでくれたらたいそう綺麗だろうと思えるのに、彼女は痛々しい笑顔しか浮かべられないでいる。

 召喚士?
 覚悟??
 使命???

 彼女がその細い肩に背負う何かを、誰も俺には教えてくれようとしない。
 俺が部外者だから?
 俺じゃ頼りないから?

 俺は、俺は、それでも彼女のために何かしたい。
 せめて、もう少しだけ柔らかい微笑みを浮かべられるくらいのことは・・・。

 だから、俺は『召喚士』の『ガード』になりたいと、心の底から思ったんだ。
 せめて、部外者扱いにされないように。
 いつも彼女の傍らで笑ってあげていたいから。
 その辺の普通の女の子と同じように接していたいから。

 みんなが彼女をそう扱えないのなら、俺が、俺だけでもそうして接していればいい。
 それで彼女の心が少しでも軽くなってくれるなら。

 なあ、いいだろ?

 ユウナ。

 

 END

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