〜 アンジェリーク 〜

【深 更】

 

 気がつけばいつも、独り、闇のなかでたゆたっている自分がいる。
 どうして、これほどまでに闇へこの身を委ねてしまうのか。
 自分でもはきとした答えを知らず、ただ流れのままに、深い闇のなかを漂っている。

 闇は、常に私と共にあった。
 遠き昔より、そして現在も。
 恐らくはこれからもずっと。

 何時のときも、闇は、分かちがたく結びつけられし我が半身であった。
 ゆえにそこから抜けだすことは叶わず、ただこの身を、静かな闇のなかに沈めている。

 私が身を沈める闇はあまりにも深く濃く。
 闇を照らすはずの光さえ、私のもとまで届くことはない。

 それでも。

 ふと、この深い闇を照らす光を求める自分に気づく。
 誰よりも闇の奥深くに身を置いているからなのか。
 この身を押し包む闇を照らす光を望む自分がいる。

 求めるのは、優しき光。
 この闇をそっと照らしてくれる暖かい光。
 この闇のなかでも私をそっと包みこんでくれる温かい光。

 それは例えるならば。
 月明かりの望めぬ闇夜のなか天空を淡く彩る星々の灯り。
 旅人が夜道に迷わぬよう足許を照らす柔らかい月の灯火。

 

 昔、柔らかい月の光のごとく、この闇を照らしてくれようとした光があった。
 しかし、それはつかの間の邂逅にすぎず。
 やがて私の手をすり抜けて、世を遍く照らす慈愛の光へと変じた。

 ・・・・・・・・・・・・。

 つまらぬ繰り言を・・・。
 すべては遠い昔のこと。
 今更口にしても詮無きこと。

 ・・・・・・・・・・・・。

 私をこの闇からすくいあげる手などあろうはずもなく、今宵もまた深き闇のなかで漂うのみ。
 恐らくは、この身内よりサクリアが尽きるその日まで。

 闇は、常に私とともに。

 

END

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