待 子(マチコ)


                     5年振りのこの町で
                     お前がやってる小さなお店
                     壁に『待子』と書いてある
                     切れたネオンで ほの暗い
                     何も言わずに 言わずに
                     消えた俺だけど
                     気が付けば知らぬ間に
                     ホームに立っていた


                     のれんに覗く細い指
                     顔を見合わせ立ちつくしたよ
                     見ない振りして差し出した
                     小鉢持つ手が震えてる
                     冷たい世間の波間に 
                     ホサれて消えたけど
                     忘れたことなんか
                     なかった俺なのさ


                     お帰りなさいと言うお前
                     積もる話も昨日のようねと
                     だって私は『待子』でしょ
                     待つ身の辛さ知ってるわ
                     女一人も幸せに
                     出来ない俺だけど
                     寂しさ隠して
                     待っててくれたのかい

                     私あなたを待つしか
                     出来なかったのよ
                     もうどこへも行かないで
                     ずっとそばにいて





トップへ
トップへ
戻る
戻る