耳寄り情報 あっせんについて  (個別労使紛争の解決について)


あっせんという言葉をご存知でしょうか。


労使紛争の解決する方法のうち会社と(集団である)労働組合の労使交渉に対して、会社と(個人の)労働者の紛争解決の方法のひとつになります。
個別の労使紛争の解決方法にはここでお話しするあっせん以外にも裁判や労働審判などいくつかの方法があります。
それぞれ長所と短所がありますが、あっせんの良いところは
  • スピーディーに解決できる(原則1日で終わります。)
  • 一部の機関を除き費用がかからない
  • 解決した際にはその斡旋内容は民法上の和解契約の効力を持つこと
  • 解決に当たっては弁護士や大学教授・特定社会保険労務士等が、過去の判例などを参考に行うので、妥当な解決案が期待できること
  • 解決案に納得できなければ受諾しなくても良いこと(解決案は判決とは違う)
などがあげられます。


逆に短所としては双方が解決する気がなければあっせんそのものが行われない(裁判所の呼び出しと違い、強制力が無い。)という点が上げられます。
しかし前述したように過去の判例等を参考に解決案が出てくるので、実際に裁判になったときとそう大きく違う解決案になる可能性は低いと考えられ、そうであるならば時間と手間をかけずにあっせんで解決することも紛争解決の有力な一方法だと思います。


そして事業主の皆さん、このあっせんは会社サイドからも申し入れることができます。
専門家である第3者の解決案に基づき労使紛争を収めることができるあっせん、いざというときには利用してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。


耳寄り情報 社会保険料について

毎月の給与の手取額が¥304,068の社員Aさんより¥306,541の社員Bさんのほうが社会保険料(健康保険と厚生年金)が¥2,474も低いこと、ご存知ですか?


社会保険料は会社と社員が折半するので会社の負担も毎月¥2,474低くすむということになります。つまりこのケースの社員が20人いれば会社の負担する保険料だけで毎月¥49,480、1年間で¥593,760の違いになります。本人負担分をあわせるとなんと¥1,187,520です。


節税という言葉がありますが、税金だけではなく社会保険料もケースによってこれだけの違いを生じることもあります。目的の違う社会保険料と税金を同一視することはできませんが、税金だけではなく社会保険料にも注意を払うことは必要ではないでしょうか。


勿論、保険料が低くてすむということは給付も低くなるということです。このためやみくもに保険料を低く抑えることだけを考えるのはどうかと思いますが、昇給や給与の設定その他何か行動を起こす前に一度「社会保険料はどうなるのだろうか」と考えてみることも大事なことではないでしょうか。

耳寄り情報 就業規則の作り方について

「就業規則を自分で作りたい」でも実際に就業規則を作ろうと思ってもどうやって作ったら良いのかなかなか分からないものです。それは当然で、普通の社長さんは労働法の専門家でもなく自社の事例以外に精通しているわけでもありません。でもどうしても自分で作りたい、そんな社長さんのためにこのページでは、「専門家ではない貴方」が自分で就業規則を作るときに、どんな点に注意をしながら作ればよいのかといったことを書いてみました。
参考になれば幸です。

どのような就業規則を作りたいのか
就業規則を作るときに一番大事になるのは、自分の会社はどんな会社にしたいのか、どんな会社でありたいのかといった点を明確にすることです。社長であるあなたの思いをこめて就業規則を作りましょう。


現状を把握する
どのような就業規則を作りたいのか方向性が固まったら、次に現状把握を行いましょう。現在社員に適用している労働条件や、伸ばして生きたい社風、変えたい点など自社の現状を把握します。


盛り込みたい事項を書き出してみる
就業規則は社員の労働条件を包括的に定めたものですが、それだけではなく社員にして欲しいことやしてはならないことなどの規範を定めます。これが服務規定や懲戒規定を初めとした各条文を構成していくことになります。このため、じっくりと時間をかけてこの作業を行う必要があります。


例えば情報漏えいを阻止したいと思ったのならば、書類の持ち出しを禁止するといったように、あなたが必要だと思うことを書き出してみます。自社で想定できることは全て検討しましょう。また、盛り込みたい項目が現状と違う場合は、どうするのかといった点も考える必要があります。


条文を構成する
盛り込みたい項目が整理できたら、条文を構成していきましょう。就業規則には必ず記載しなければならない事項と定めをする場合は記載しなければならない事項が労働基準法で決まっています。また、労働基準法などの関係法令・労働協約に反してはならないので、盛り込みたい項目をこれらの点と照らし合わせながら構成していく必要があります。


条文の構成の仕方は労働基準監督署等にモデル就業規則があるので、それを参考にすると良いでしょう。尚、条文の構成は参考にしても良いと思いますが、モデル就業規則はあくまでモデルです。丸写しはお勧めしません。あなたの会社の就業規則にはもっと盛り込むべき事があると思います。特に解雇については解雇権濫用法理もあり、トラブルになりやすい項目ですので細心の注意が必要です。


就業規則に必ず記載しなければならない事項
  @始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には終業時転換に関する事項
  A賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
  B退職に関する事項(解雇の事由を含む)


定めをする場合は記載しなければならない事項
  @退職手当に関する事項
  A臨時の賃金(賞与)・最低賃金額に関する事項
  B食費・作業用品などの負担に関する事項
  C安全衛生に関する事項
  D職業訓練に関する事項
  E災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  F表彰、制裁に関する事項
  Gその他全労働者に適用される事項
  

就業規則全体が有機的につながっていること
就業規則を作ろうとする時に注意する点はいくつかありますが、そのひとつに就業規則の各条文やその他の規程が、一体となって構成されているかどうかということが挙げられます。


 例えばある条文で「○○をしてはならない」と定めているにもかかわらず、その違反行為を懲戒の対象にしていないというのでは何にもなりません。懲戒項目に具体的にその行為を入れておく必要があります。最低限「この規則に違反したとき」には懲戒処分を受けると記載しておく必要があります。


こういったことを避けるためには、あなたの会社で過去に起こった事例を参考にこの就業規則で対応できるかどうか検証してみましょう。また、色々なケースを想定して対応できるかどうかシュミレーションしてみることも必要です。


就業規則を運用する
就業規則が出来上がり、監督署への届出も済んだらそれを運用することが最も重要な作業です。就業規則を作ってみたものの、実際に運用してみると色々な問題が出てくる場合があります。問題が出てきたら、すぐに改善していきましょう。


就業規則は会社の法律です。社員が働く時に、それを読めば自分が一体なにをすれば良いのか、何をしてはいけないのか、会社は何を求めているのかといった点を明確にする大事なルールブックです。


もし不幸にして社員との間にトラブルがあって、労働基準監督署に呼ばれた際にも必ず就業規則の提示を求められます。(10人以上の労働者を使用している事業場では就業規則の作成義務があります。)
その際には労働基準監督官は、就業規則に基づいて判断していきます。つまり就業規則は、そういった場合にも耐えうるように作りこんでいく必要があります。


もう一度書きますが、就業規則は運用することが最も重要です。就業規則を作るときにはこの運用を常に念頭において作りこむことが、最も注意する点といえるでしょう。