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トレーディングする上での心得・ルール
1)目的
  1.資産運用
   
ほとんどの方が該当するはず。自分の資産を増やす為に行う。
   
ただ、レバレッジを利かせた証拠金取引の場合は、自分の「正
   味資金」を
越えて取引を行う為、余資の資産運用とは言えない。
   その場合は資金調達
を含んだ資産運用と言えるだろう。成功の
   鍵はリスク管理能力が大きな要
素を占める。
  2.娯楽
   
こんな人達がいるのか思われるが、客観的に判断して、どう見
   ても楽しみ
でトレーディングをやっている(本人は自覚してい
   ないかもしれないが)
人達が存在する。こういう方達へはアド
   バイス等など必要ないかもしれない。


2)資金力
 
1.資金は幾ら使えるか?
     例えば、個人で行うとなると、資金力は死活問題である。
   
特に、外貨証拠金取引等レバレッジを効かせたトレーディング
   を行うとなると、
マネーマネージメントが出来るかどうかが成
   功か破滅かの分かれ目となる。
   
 以前にも申し上げた通り、相場観よりはるかに大事なのはこ
   のリスク管理が
出来るかどうかであると言って過言ではない。
   所謂「博打打ち」になってはいけ
ない。一回で多額の資金をつ
   ぎ込むなんてことは愚の骨頂。人は時に、「今回の大
相場を逃
   したらもう儲けるチャンスがない。」などと考えがちであるが
   とんでもない。相場は永遠になくならない。なくなるのは自分
   の資金か職場である。

  2.幾らまで損(実現損、評価損共に)出来るか?
     上記1.に関することでもあるが、幾らの金額まで損失を計上
  (評価も含めて)
出来るかの判断はマネーマネージメント上極めて
   重要。人間誰しも損をすると
精神状態に支障をきたすわけで、
   自分の心のコントロール能力も成功の鍵で
あると言える。「損
   切り」が出来ない人は絶対に相場の世界に足を踏み入れる
べき
   ではない。「受身」が出来ないのに柔道をやるに等しく、大怪
   我の元である。
   
「買うか(ロング)」、「売るか(ショート)」に加えて、「何も
   しないか(スクエアのポ
ジションテイク)」という3つ目のポ
   ジションがあることを肝に銘じること。


3)収益目標
  
幾ら程度儲けたいか?
    先ほどの資金力との兼ね合いでもあるが、即ち「リスク・リター
   ン」の観点から、
使える資金力なり取れるリスクから収益目標は
   決まってくる。
収益対損失限度額の割合が例えば1対1か、1対
   2、それとも、2対1にするの
か等、自分が所属する組織の経営
   次第であり、個人で行う場合は各人の考えによ
り大きく変わって
   くる。ただ、個人で行う場合はどうしても甘えが生じるので、

   底した自己管理が必要になってくるのは言うまでもない。
   
大事なことは、とにかくお金を残すこと。出来るだけ、少しずつ
   でも積み上げ
るスタンスがベター。決して一度に大儲けしようと
   か、今までの損を一気に取り
戻そうとか、考えないこと。

4)期間
  
どの期間でトレーディングを行うか?
   1.日計り
  2.2〜3日
  3.1週間まで
  4.1ヶ月以上

  結局、雇われのトレーダー(例えば、銀行に勤務するトレーダー)
  か、個人自ら
リスクテイクするかによって、マーケットに参加す
  る上での条件等が変わってく
るわけだ。個人の場合、プロにでも
  ならない限り、サラリーマンが片手間に日計
りで儲けられるほど
  マーケットは甘くないし、一方、雇われトレーダーは1ヶ月
以上
  もポジションを寝かせるわけにはいかないだろう。
   
私もかつて外国人上司に「ドルどう思う?」という質問を頻繁
  に受けた。実に
曖昧模糊とした質問であり、今日(今夜)のこと
  を言っているのか、1週間程度
のことを指しているのか、それと
  も中期予想を求めているのか、一々確認せねば
ならなかった。結
  局は儲ければ良い訳であるのだが、私の相場観をベースにポジ

  ョンを取ろうとしていたものだから、さすがにこちらも慎重に言
  葉を選んだ記
憶がある。現実のトレーディングにおいて、限られ
  た資金量、リスク許容量の元
で大きく稼ごうと思うと恐らくオプ
  ションがベストなのだろう。それも究極のタ
イミング(時間及び
  価格)でアウト・オブ・ザ・マネーのオプションを仕込めば
最高
  である。通常、日計りをベースに収益を積み上げていくしか手段
  はないのが
現実で、特に個人投資家はそうだろう。

5)トレーディングスタイル
  
ざっくりと言って以下の2タイプに分かれると思う。
    1.勝率重視型、7勝3敗(6勝4敗)
    
大相場を狙わずにレンジを決めて売り買いを繰り返すタイプ。
    2.一発勝負型、1勝9敗(2勝8敗)
      
ボックス相場には弱いけれど、大相場には強いタイプ。
    両方を組み合わせてとかで格好をつけるとか、欲張ると、ろくな
   ことはない。
とにかく、自分のスタイルを築き上げることが大事
   で、過去の自分のディールを
振り返って反省し、あれこれ熟考し
   た後に決めることだ。所謂システムトレーディン
グを自分なりに
   生み出すのは大いに意義のあることだが、出来るだけ長い期間シ
   ミュ
レーションを行う必要がある。そしてこれだというシステム
   が出来れば「主観的、恣意的な判断」を排除して、徹底的にシス
   テムに従うべきだ。世の中にはテクニカル派だと言って、結局は
   最後に恣意的な判断でもってフィーリングで行っている人が多数
    である。

6)戦略
  1.ファンダメンタルズ
  2.テクニカル
  3.嗅覚(フィーリング

    
自分が何をベースにポジションを張るのかをよく考えて決める。
   ただ、「ファンダメンタルズ」と言っても極めて曖昧で経済指標
   やニュースを追いかけていることがファンダルズ派と思って(思
   い込んで)いるケースも多い。実は私達が日頃見たり聞いたりす
   る情報はその発信人、記者が恣意的な判断で、ある意味その時々
   の市場の雰囲気で
書いているケースが多いので、知らず知らずに
   「流されている」場合も多い。「ファンダメンタルズ」的要因は
   多いが、往々にして相場の「後講釈」に陥っているケースも
多々
   見受けられる。相場の動きを説明するに最も「理屈に適った」材
   料を探すのである。ある意味恐ろしいぐらい「いい加減」であ
   る。特に日本の機関投資家などの経営層にいる人たちの中には
   「頭で納得のいかない」限りフロントが何を言っても聞かないら
   しい。だからこそ、例えば1ドル=160円で買ったドルを1ド
   ル=80円台で
ロスカットする羽目になるわけである。不動産投
   資しかりである。この手の話は枚挙に暇がない。

      それと相場を「こうあるべきもの」をベースに語る人がいるの
   で要注意だ。円は安く「あるべき」で「介入をすべきだ」とかの
   類の議論だ。我々投資家はあくまで相場に付いていくべきで相場
   を誘導しようなんて考えてはいけない。どんなことがあっても、
   「常に相場は正しい」をベースに参加すべきだ。さもないと、意
   固地になって自分のポジションを切れなくなる。決して「評論
   家」「講釈師」に陥ってはいけないのだ。

     一方、「テクニカル派」と自称する人の中にも、果たしてどこ
   までテクニカル分析を使っているか疑問だ。普段何気なくテクニ
   カル指標を見ていても、究極のポジション造成、クローズ、損切
   りのタイミングで自分のフィーリング、場の雰囲気なり、恣意的
   な判断に左右されてしまっているケースが多いようだ。これまた
   「後講釈的に」テクニカル分析が使われているわけで、注意せね
   ばならない。

    「嗅覚」でもってトレーディングするというのはある意味経験
   を積んだトレーダーであれば、こんな強い武器はないわけで、特
   に日計りでディールする場合は功を奏するケースも多い。ただ、
   あまりにも個人差が多いのも事実で、一般的に言って「8割はず
   す」人は多くいても、「8割あてる」人は皆無に近い。ただ、確
   実にはずす人が身近にいればその人の逆をやれば理屈上「8割あ
   てる」ことは可能となってくる。ちなみに、あのチャーリー中山
   こと、中山茂氏は少なくとも、短期トレーディングにおいては8
   割の男どころか、9割5分の男であった。私自身直接オーダーを
   受けていたので、証人である。もっとも彼はポジションニングの
   戦略ベースは実のところ極めてファンダメンタル重視である。綿
   密な分析に加えて動物的な嗅覚を兼ね備えていると、無敵と言っ
   ても過言ではないだろう。

今日はトレーディングを行うに当っての心得と言うか、一種のルールのようなものが存在すると思うので、思いついたところを要点をまとめてみたいと思う。

 

円相場(対ドル、対ユーロ)長期相場分析

 今後のドル円相場、ユーロ円相場を予測する上で、やはり過去の国際経済、通貨体制をおさらいしておく必要があろう。何故、過去の相場を振り返る必要があるかと言うと、過去と現在の相場の相場は「因果関係」にあると判断出来るからだ。そして、これから未来の相場を予測する上で、大きなヒントを与えてくれると確信している。「木を見て森を見ず」式の相場観では、この複雑怪奇とも形容できる外国為替市場の予測を試しみることは不可能だと私は考えている。

 それでは、要点だけを押さえるつもりで、過去(戦中戦後)の外国為替市場を振り返ってみよう。

1)ブレトン・ウッズ体制と固定相場から変動相場制への移行

1929年のアメリカの大恐慌とその対応策として、各国はブロック経済体制を敷いた結果、国際貿易や経済の発展は阻害され、第二次世界大戦を引き起こす大きな要因となった。
 そこで、アメリカを中心とした連合国が、第二次世界大戦後の国際経済の復興のため、外国為替相場の安定や国際貿易拡大を目指して、1944年にブレトン・ウッズ協定を締結した。
 ブレトン・ウッズ協定では、上記の目的達成のために短期的資金を融通する国際通貨基金(IMF)と、長期的資金を融通する国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定された。

国際通貨基金(IMF)はアメリカ合衆国の通貨であるドルと金との兌換を保証した固定相場制(金1オンス=35ドル)を採用して発足した。

しかし、国際収支の赤字による金の流出やインフレによりドルの信認が低下し、ドルによる金の価値保証ができなくなったアメリカは、1971年8月15日にドル防衛策をとりドルと金との兌換を停止した。いわゆる「ニクソン・ショック」である。その後、同年12月18日のスミソニアン協定によってドルの切り下げ(1ドル=360円から308円へ切り下げ)を含む通貨調整が行われたが、1973年2月14日には主要国が変動相場制に移行したため、IMF体制の役割は大きく変わることとなった。
 1976年1月に、ジャマイカのキングストンでIMFの暫定委員会が開催され、IMFの協定の改正がなされ、1978年4月にそれが発効した。これをキングストン体制という。
キングストン合意では、 変動相場制の追認、管理フロート制(各国の協調介入によって為替相場を誘導)が採択された。キングストン体制下のIMFは、各国の外国為替市場への介入の監視や、政策協調の協議機関としての性格を強くしたわけである。

2)レーガノミックス

1980年のアメリカ大統領選挙で、「強いアメリカ」を標榜して地滑り的大勝利を収めたのがレ−ガンである。1981年に発足したレ−ガン政権が打ち出した政策は選挙公約である「強いアメリカ」の復活であり、軍事力の強化と経済の再建がその具体策として提示されたのである。このうち経済の再建策がいわゆる「レ−ガノミックス(レ−ガンの経済政策)」と呼ばれたもので、結論から言うと、@財政赤字の拡大、A経常収支の急激な悪化、B実質金利の上昇、Cドルの上昇、の4点を生み出すことになる。すなわち、いわゆる「双子の赤字」の拡大とそれに伴う、高金利、ドル高という1980年代半ばのアメリカの基本図式は、言うまでもなく、このレ−ガノミックスによって形成されたのである。

レ−ガノミックスは、大幅減税と歳出増の当然の帰結として、まず第1に、財政赤字の急拡大をもたらすことになり、経済活動は、減税の持つ所得拡大効果により活発化し、長期景気拡大が実現することになる。次いで第2に、急激な内需の拡大は、アメリカの急激な経常収支の悪化をもたらすことになった。第3に、財政主導による景気の急拡大と金融の強力な引締め政策は、アメリカの実質金利を大幅に上昇させることになる。そして、第4に、この実質高金利に引き寄せられる形で資本が世界中からアメリカに流入し、ドル高が生じることになったのである。

3)ドル高是正とプラザ合意

ドル高と経常収支赤字の拡大の悪循環が1980年代半ばに向けて、アメリカでの最大の政治・経済問題となっていったことが、「プラザ合意」を生む背景であった。経常収支赤字の急拡大により、1984年末にアメリカは第一次大戦直後以来始めて純債務国へ転落することになる。このような情勢の下で窮余の策として通貨切り下げ(ドル高からドル安への修正)が選択されたのである。

即ち、「プラザ合意」とは1985年9月22日に米、日、独、仏、英5カ国蔵相がニューヨークのプラザ・ホテルで、当時問題となっていた米ドル高を是正するために協調介入する旨の声明を出したことを指す。しかし「プラザ合意」の本質は、米ドル高是正の協調介入に象徴されるように、国際通貨制度が固定相場制から変動相場制に移行し、国際経済全体が国際投機資金の激しい動きによって「バブル化」し、常に不安定性を強いられる事態が生まれたことに危機感を持った5大国が、金融通貨政策の協調によって、国際経済の安定性回復を狙った最初の本格的試みとして位置づけられよう。

プラザ合意は一言でいえば、異常なドル高の是正を主たる狙いとして、そのために各国が経済政策の一層の協調を進め、さらに為替レ−トの適正化のために密接に協力すべきことについての5ケ国間の合意だったわけであるが、そのような合意が生み出された背景には、1980年代に入ってからのアメリカ貿易赤字の拡大と、その一方での異常ともいえるドル高があったことはすでに見た通りである。

私個人的には、この「プラザ合意」を当時邦銀ニューヨーク支店にて直に体験することになる。声明発表を受けた直後の生々しい為替市場動向は著名な「8割の男」(伝説のディーラー中山茂氏をモデルに書かれた小説)の「義の折半」の章あたりに詳しく書かれている。

4)円安是正から円高是正へ、そしてバブル発生

プラザ合意の直後、1985年9月24日から日銀が協調介入に率先して踏み出したのは、当然のことでながら、ドル高円安是正であるからドル売り円買い介入であった。

ところが、円相場が1ドル=180円を突破し、さらに175円を超えて円高が進んだ1986年3月18日、日銀は、それまでのドル売り円買い介入を突然逆転させて、海外市場でドル買い円売り介入に踏み切ることになる。このドル買い円売り介入を東京市場ではじめて実施したのはその年の4月1日のことであった。そしてそのような日銀によるドル買い円売り介入は、円高が1ドル=121円に達する1988年1月頃まで断続的に実施されたことは周知の通りである。

一般的にいって、日銀が外為市場で円売りドル買い介入に出ると、外貨準備が急増し、それに見合う円資金が国内金融市場に大量に流入することになる。日銀は、介入によって生じた円の余剰資金はなるべく政府短期証券の売却によって吸収する方針であったが、この売りオペによる余剰資金吸収にも限度があり、結果として過剰流動性が滞留し、「カネ余り現象」を慢性化させるリスクをもたらした。その後において、顕著になった株式投機や土地投機のマネ−ゲ−ムもまた、このような円高抑制のための懸命なドル買い介入の産み落とした鬼子と言っても良いであろう。

即ち、プラザ合意後のマネーサプライの急増は、ストック価格の暴騰をひきおこす原動力になったことを有力に物語っている。プラザ合意以降の日銀による大量ドル買い介入と、公定歩合の度重なる引き下げなど積極的な金融緩和措置は、不動産融資を急速に伸ばし、その後のバブル形成にあたって資金面の条件を用意したものとみてよいだろう。

 論点は外国為替から外れてしまうが、1980年代前半のアメリカの経済政策を研究、さかのぼると、日本のバブルの生成・崩壊と、アメリカの国内の事情とが実は因果関係にあり、日本の悪名高き「バブル」の元々の原因は米国のレ−ガノミックスにあったと言って過言ではなかろう。

5)1990年代以降の米国経済

 周知のように、1990 年代のアメリカ経済は、アメリカ史上最長の景気拡大、株価上昇を記録し、失業率もインフレ率も低下する“繁栄の90 年代” を実現した。ジャーナリズムは、この繁栄の下のアメリカ経済を「ニューエコノミー」と名付けた。

少し、詳説すると、1990年8月の湾岸戦争勃発を契機とする短期の景気後退から始まった90年代は、現ブッシュ大統領の父ジョージ・ブッシュ大統領時代の共和党政権が、レーガン共和党政権の遺産である景気の長期拡大を受け継ぐと共に巨額の貿易赤字・財政赤字のいわゆる“双子の赤字”負の遺産の処理に取り組んでいた。その最中に起きたイラク軍のクウェート侵攻は、それまでのアメリカ経済の長期景気拡大に冷水を浴びせ、その中断をもたらした。“スタグフレーションの再来” ともいわれた状態は、92 年の大統領選挙に影響を及ぼすことになる。米各企業は大規模なリストラクチャリングに取り組み、「雇用なき回復」(Jobless Recovery)を次第に達成していった。しかし、その後、企業は設備投資、雇用拡大を積極的に行えるようになり、消費者も金融・土地資産増加から安心して借入を増やして消費し、景気上昇の足取りは早くなり、力強さを伴うようになったのだ。

ところで、このような米国経済の復活が生まれたのは何が原因なのであろう。1990年代を通して、アメリカの経常赤字は続いた。にもかかわらず、ニューエコノミーと呼ばれる好況が1995年以降起きたのは、経常赤字以上に海外からの資金流入があったからにほかならない。それが株価上昇をもたらし、IT革命など類いまれな好条件が結びついた。ドル高と高成長を材料に、経常赤字を上回るカネがアメリカに流れ込めば、さらにそれが成長を支え続けたわけである。

1990年、91年の不況時、アメリカは、金融緩和を行い、ドル安に誘導し、これがアメリカ企業の収益を引き上げた。1992年以降、長期好況に転じたのは、ニューエコノミーではなくて、ドル安のためだったと言えなくはないだろうか。

6)1999年代以降の外国為替市場と市場参加者

この間、ドル円相場は実に乱高下に晒される。1990年4月に160.35円の高値をつけた後、95年4月に79.75円まで一方的に下落する。そして、今度は、大規模介入等もあり、一転上昇に転じ、アジア危機などの材料も手伝って、98年8月に147.64まで上伸する。99年11月には101.25円まで下落する過程では、前代未聞の急落(3日で135円から111円台まで24円急落)が見られた。その後も2002年1月に135.20円まで上伸した後、3年程度下げ続け、現在に至っている。

多くの日本企業が中期経営計画策定の中で外国為替相場要因を極めて不確実性の高いリスク要因として認識し、兎にも角にも、リスクを回避することを第一義に経営計画に織り込んでいった。そして、それまで、外債投資を積極的に進めていた多くの日本の機関投資家や商社は、為替リスクに対しては基本的にはフルヘッジのスタンスを取るようになり、いわゆる投機目的のトレーディング玉は激減した。多くの邦銀、外資系東京支店の外国為替チームは、顧客玉が減少し続けた結果、収益源が縮小、広い範囲で業務縮小、撤退を余儀なくされることになる。

90年代、特に後半の外国為替市場は米ヘッジファンドの独壇場とも言える状況と化し、円は投機筋の格好の投機対象となる。特にその低金利のせいもあり、低金利の円を借り入れて、高金利通貨等その他に投資にする「グローバル・キャリー・トレード」の対象として多く利用されるようになった。98年10月の135円台からの急落はまさにその手法で大量にポジションを抱えていた米大手ヘッジファンドが損切りに動いた結果の断末魔的な動きであった。

7)米国の双子の赤字問題の起源と日本当局の通貨政策

以上のように、歴史を振り返ると、1980年代前半、日本の貿易収支・経常収支が黒字基調になって以降、この黒字を日本はドル建てで米国債購入にあて、米国の財政と経常収支の双子の赤字を埋めることに協力する格好となったわけだ。これは大蔵省 (当時) の指導(提案?) もあったと言える。日本の金融資産がドル資産に振り替えられていったわけだ。

  これが最初の「ボタンの掛け違い」だった。その後日本は、ドルを支えることを第一とする経済政策をとらざるをえない方向へと突き進み、ドルが弱体化するなかで、無理を重ね、ますます通貨政策を歪めていく。それは現在も続いており、これがわが国の「外国為替の構造」なのである。

日本経済は依然、外国為替リスクに大きく晒されている。ドルを支えるために、円の世界が政策破綻してしまっているというリスク構造はまったく変わっていない。そのなかで、ここにきて、ドルの行方が再び問題になっている。これから起きるかもしれないドル下落によって、日本は1985年や1995年のように、またも経済ショックを受ける可能性はないのかどうか。

  アメリカは1980年代からすでに20年以上も経常赤字が続いている。これはアメリカ経済が実質的に破綻していることを示す。それにも関わらず、世界各国の外貨準備に占めるドルの比重はまだ高い。具体的な数値は差し置いて、近年一部の中央銀行はドルを他通貨に振り替えてきたのは事実だし、原油の決済通貨が一部ユーロに変更になっているのも周知の事実である。一方、我々日本は、基軸通貨国の通貨というだけで、この通貨を国家単位で買い続けて良いものだろうか?

8)今後の円相場分析に当たって

 以上、述べたように、日本という国は構造的に、外貨ロングになるのは国家レベルの経済活動から言って当然の帰結なわけである。今後、日本の経常収支が恒常的に赤字に転落しない限り、世界のどこかで円需要が発生するわけである。何故、「世界のどこかで」という表現にしたかというと、近年輸出に占める円建ての比重がかなり高まっていること、輸入においても、割合は少ないが円建て輸入も見受けられるが、結局、貿易相手方に円の手当てをする役割が移っただけである点で、円絡みの基本的需給構造は変わらないわけである。

 問題は、それでは、一方的に円高に行くのかというと、実はそうはならないということである。理由は実に単純なのだが、あくまで外国為替市場というのは実需だけではない、投機目的の売買がかなりの程度占めているということである。一日の売買高が1兆ドルを上回ると言われている現在、そのほとんどが投機目的であるという事実は決して無視できない。即ち、そこに「相場」が現れるわけだ。だからこそ、1990年代のドル円相場が、あれほど乱高下したわけである。5円、10円、アゲンスト(ポジションの思惑と逆に市場が動く)になっても、平気でポジションをキープ出来る人はほとんどいないだろうし、決してしてはいけないわけだ。だからこそ、ある程度、短期の値の動きに気を配りながら、トレーディングする必要があるわけだ。

 一つ大切なことは、「木を見て森を見ず」といった間違いを犯さない為にも、以上に述べた過去の相場の歴史、そして基本構造を忘れてはならないことだと思う。そして、今後まだまだ乱高下が予想されるだけに、くれぐれも、ポジションは控え気味に軽いタッチで市場に参加して頂きたいと思う。(1月17日)

 一目山人翁の一言。
 「ここまで来ましたなれば、安心して次のことを申してもよいと思います。それは予想と予測のことであります。昔はそうでもなかったのですが、近年の相場研究熱は素晴らしいものでして、折柄ラジオにテレビに、さらに新聞に雑誌に、マスコミの画期的発展と相まって、毎日のように相場の予想が発表されています。一方、ケイセン研究もまた、外国ものから古典ものまで驚くべきブームを呈していますが、これは実に当然の成り行きであり、また大いに喜ぶべき現象であるに違いありませんが、しかしそれで特殊の人々は兎に角として、一般者が相場で果たして儲かるでしょうか。
 三猿録でしたか、見ざる、聞かざる、言わざる。ということを教えていますが、今はそれと全くの逆の現象でして、いかに見まいとしても、いかに聞くまいとしても、およそ近代を生活しているものには、かなうことではないでしょう。この上はただ一つの方法しかありません。何を見ても聞いても、それに迷わされ惑わされることがなく、反ってそれを利用する能力を持つことであります。もちろんそれは容易なことではありませんが、もし皆さんに、毎日この均衡表を連続して頂ければ、、その能力は十分であります」
(一目均衡均衡表第1巻、P35〜36)
 一部に表現が独特のものが散見されるが、さすが、一目山人翁の視点は鋭い。その当時(昭和44年より前)にして、すでに相場解説が溢れていたと認識されており、一般投資家の立場に立って、何が大切かを力説されていたと言えよう。(2005年4月9日)

 相場に参加する上の手段について

外国為替相場のみならず、相場に参加している人の最大の関心事は、「今後相場はどう動くのか?」であり、まさに相場予測が究極のターゲットとなる。決して、終わってしまった相場の解説を聞きたくはないものだ(もちろん、時間と心の余裕があれば聞いても良いが)。特に、アゲンストのポジションを持っている人は相場の行方についての一刻も早い情報獲得は死活問題となってくる。如何に理論整然とした相場解説を聞くよりも「今これから上がるか、下がるか」を知りたいわけだ。

そこで問題となるのが、嗅覚だけで相場を張っている人は別として、ほとんどの人は、やはりそれなりに頭で考えて納得のいく説明を聞きたいということだ。一般に言うところの「ファンダメンタルズ」面から後押しする説明があれば安心して、アクションが取れるというわけだ。

ところが、実はここで厄介な現実が立ちはだかっている。即ち、全ての「材料」は相場に織り込まれているということだ。所謂投機筋の行動パターンというのは、上がると思うものを上がる前に買っておく、下がると思うものを下がる前に売っておくわけだ。つまり予想を元に行動(売買)を起こし、事実を見て収束(反対売買)するのである。極論すれば、相場が動くのは、新たな予想が生まれたり、それまでの予想が修正された場合だ。だから短期的な相場の予測をすることは、今の予想が、近いうちにどう修正されるかを予測することに等しい。実際の相場が、発表される経済指標が予想比良いか、悪いかで動くといったことや、「Buy on the rumor , Sell on the fact」(噂で買って、事実出尽くしで売る)という現象がそれを説明している。

上記の行動は、まさに「相場の神様」に挑むことになる、かなり乱暴な行動であるという認識が必要だ。世界中で自分だけしかしらない情報があれば、当然それを基に行動する価値があるだろう。しかし、現実にはありえないわけで、人は常にリスクとリターンを計算しながら、投機筋の一人として相場の世界に足を踏み入れるわけだ。

それでは、私たちは何を手段にして相場に参加すれば良いのだろうか。私は、決して、「ファンダメンタルズ」を無視して良いと言っているわけではない。「美人投票」という言葉があるように、市場参加者(自分ではない)がより重きを置く材料に注目し、そこにトレンド(短期でも長期でも良い)が存在する限りにおいて、トレンドフォローで参加するのは有効な戦術の一つだと思う。このスタイルで成功するかどうかは、マネーマネジメント、リスクコントロールが出来るかに大いに依存する。何故なら、どこで自分のポジションに見切りをつけるかにルールが存在しないからだ。それ故、往々にして、アゲンストにいったポジションを塩漬けにしてしまいがちだ。世の中で大損をするパターンはこのスタイルをとる人に多いのは歴史が語っている。

私は個人的な独断であるが、相場で生き残るのはテクニカル分析に従うしかないと理解している。ところが、このテクニカル分析というのが、厄介であって、テクニカル派と自称する人達の中でも、本当の意味でテクニカル分析にて相場を張っている人はなかなかお目にかからないものだ。その理由は、テクニカル分析を信じることが結局は出来ないからだ。自分独自のテクニカル分析を生み出すか、ルールを打ち建てた上で、それらを信じることが、果たしてどこまで出来るか。この命題をクリアー出来れば、所謂キャリア・プロフィット(生涯収益)をコンスタントにプラスにすることは可能だろうと思う。

日本が世界に生んだ一目山人翁(一目均衡表の創始者)がいみじくも仰った、「任運自在」という言葉がある。運びに任せて、自由になれ、拘るな、といった意味だ。執着心を持たず、ただ信じ尽くすことが究極に大事なことだ、といった趣旨のことも仰っている。この言葉の行間を読み、理解した上で自分の相場スタイル構築に役立てたいと思うが、まさに一生のテーマかもしれない。
(8月2日)

相場の心得  (その1)

1)ロス・カットは柔道でいう「受け身」。

    損切りが出来て始めて市場に参加出来る。

2)コストにこだわるな。

    自分が最初に作ったポジションのコストにこだわると、損切りが遅れる。

3)利食いは「腹5分め」。

    生身の人間は皆、過度に結果を期待するもの。相場は“煩悩”との戦い。

4)相場は繰り返す。

    同じような相場の動きはよくあるもの。過去のパターンを思い出せ。

5)市場のクセをつかめ。

    それぞれの時期には特徴的な動きをよくするもの。

6)熱くなるな。

    相場に情熱は必要だが、冷静さはさらに重要。

7)ポジションのサイズは控えめに。

  過去の大物相場師の多くは過大なポジション保有で大損した。

8)自分の勝ちパターンをつくれ。

  相場で勝ち続けるには自分独自の売買方針を構築する必要あり。

9)見栄をはるな。

    所詮自分の力(資力)の範囲でしか相場には勝てない。

10)逆境に耐えることよりも、順境に打ち克つことにエネルギーを使え。

     アゲインストのポジションを抱えるよりフェイバーなポジションの管理に注力。

11)大きく利食った後は休憩せよ。

      大儲けした後は往々にして大損するもの。

12)勝ち馬に乗れ。

      勝っているディーラーの相場観には謙虚に耳を傾けよう。

13)相場にはロング、ショート以外に“スクエアーというポジション”もある。

     買ったり、売ったりするだけでなく、ポジションをゼロにする勇気をもて。

14)何か不安になったら、一旦ポジションを減らすか、なくせ。

      投資家は思いつめてはいけない。ポジションなんていつでもとれる。

15)大半の情報は百害あって一利なし。

      どこでも手に入る情報は完全に市場に織り込まれているもの。

16)8割当てる相場師はめったにいないが、8割はずす相場師はごろごろいる。

    大半のディーラーはせいぜい収支トントン。市場の大勢に流されるな。

                                                (9月3日)

 最近よく思うことですが、外貨証拠金取引を行っている人達の中には、いわゆる「スワップ狙い」の方が増えているという印象があります。

 即ち、手持ちの円資金を元手にレバレッジを効かせた上で外貨を購入して金利差を狙う戦略です。保証金の何倍、何十倍もの外貨を持つのと同効果がある為、通常の外貨預金よりはるかに多くの金利差を享受出来るというわけです。

 当たり前のことですが、この投資戦略は、円安の局面では、金利差、即ちインカムゲインに加えて、キャピタルゲイン、即ち為替差益まで獲得出来ることになり、二兎を得られるわけです。

 事実、昨年初以降に外貨証拠金取引を始めた人は円を売って外貨を買ってさえいれば金利プラス為替差益の両方を簡単に手にすることが出来ました。そして、多くの「市場参加者」が外貨証拠金取引とは何て簡単にお金が儲かる方法だろう、と思われたことだと思います。というものも、この1年ほどは円安トレンド、それもほぼ一本調子の展開であったからです。

 ところが、最近でも例えば1998年半ばから1999年末にかけての時期や、2002年から2004年にかけての時期は円高傾向にあった局面であり、その頃に手持ちの円を売って外貨を購入する上記の方法だと、もちろん幾らかの金利(スワップ)は享受出来たかもしれませんが、大きな為替差損を被ったことも事実です。

 何をお伝えしたいかと言うと、金利差狙い、即ち世に言う「スワップ狙い」を目的とする人は、長いトレンドが円安外貨高トレンドであると予測した場合において、自分の責任でもってポジションを円安外貨高に賭けるべきでしょう。現実にはそのトレンドの分析が最も困難な作業であり、熟練を要するわけですが、私個人的には別に長期の予測を出来なくても中期、短期の予測を丁寧に行った上で、ポジションテイクも同じように中期、短期とある程度割り切って行うようにすれば、トレンド予測を仮に間違ったとしても、大筋では利益を残すことが出来るのではないかと思います。もちろん、柔道の受身に当る「ロスカット」「ポジションの手仕舞い」が出来なければ市場に参加する資格がないのは言うまでもありません。
(2月11日)

 「円相場のファンダメンタルズ的解釈」

1)   米国自動車産業の衰退

米国自動車業界のビッグ3、中でもGMとフォードの衰退。米国経済の強さの象徴とも言うべき存在であったGM,フォードが大手格付け機関から立て続けに格下げを食らっている。投資不適格級への転落となって、益々凋落の一途を辿っている状況だ。

1980年代後半から90年代前半頃は米国による日本の対米貿易黒字に対する激しい牽制が目立つ中で、米国自動車産業の保護を訴える動きが為替相場にも影響を与えてきた。特にクリントン大統領就任直後の当時のベンツェン財務長官の円高プレッシャーは特にインパクトがあった。

 ところが、最近は日本勢に押される一方の、ふがいない米自動車業界へのバッシング、批判が目立ち、米政府からも積極的なサポート体制が期待出来ない情勢だ。日本の大手自動車メーカーも米国内にて数多くの工場を建設、生産しており、多くの米国人労働者を雇っていることで、かつてのように反日運動が起こりにくくなっている。

2)   米国の沈黙、米政局、米中間選挙

    それにしても、米国当局の日本自動車メーカー、貿易不均衡に対する静観な姿勢を見ていると、不気味な感じすらある。ブッシュ大統領の信任度合いが落ちていることもあり、まるでレームダック化している印象がある。イラク戦争以後の人気凋落傾向に歯止めがかからない様相だ。

    それでも、今年は米中間選挙があり、何としても現政権への信任度を上げる必要がある。過去の歴史を見ると、中間選挙の年は対外的に強硬的な外交政策が採られる傾向にある。戦争を仕掛けるケースも実際にあった。そして、貿易不均衡問題が大々的に取り上げられることも頻繁であった。ここ数年は、中国の為替政策が槍玉に挙げられていることは周知の通りだ。今現在も、中国のことを「為替操作国」として、米国が敵対視している状況にある。

3)   日本の国内事情、経済情勢、財政緊縮、金融緩和

    日本の国内事情はどうかというと、小泉政権が昨年の衆議院選挙にて圧倒的勝利を得た後、ポスト小泉政権を睨んだ次なる体制に関心は移っている。そして、状況は決して予断の許されないものとなっており、消費税上げ問題、三位一体改革、年金問題、財政再建、等々問題は山積みの状態だ。

    財政再建の為、財政緊縮政策が採られており、この方向性は今後も変わらないと思われる。当然のことながら、それは、景気に悪影響を与えるわけであり、政府としても日銀に対して、金融緩和継続を訴えているわけだ。ところが、最近の福井日銀総裁の発言は、タカ派の強気姿勢が目立ち、是が非でも量的金融緩和政策を解除したい雰囲気だ。そういった発言が、直近の円買戻しの口実となっていることは事実だろう。

    事実、米欧のヘッジファンドが進めてきた戦略というのは、日本の金融緩和政策に変化ないという前提で、一方、米国の金融引き締めも継続というシナリオの中で日米金利差を材料とした円キャリートレードであった。必然的に、安い金利で調達した円を売って、その他高金利の外貨を購入するといった戦術を採ってきたわけだ。   

4)   米国の国内事情、経済情勢、財政拡張、金融引き締め

    米国の国内事情はと言うと、景気は回復基調にあるとは言え、歴史的超低金利に支えられた住宅需要、そして、住宅価格の上昇によるキャピタルゲインを背景にしたホームエクイティローンでもって、米国個人需要が景気を支えてきたわけだ。

 その一方で、やはり同じく歴史的低水準の米国貯蓄率が対外収支不均衡を生んできたわけであり、マクロ的に見て、明らかに国家としては歪んだ経済であり、諸外国の対米国投資に支えられて米金利も低く抑えられている状況だ。

 国際外交、政治面でも、イラク戦争以後、巨額の財政支出を余儀なくされ、財政拡張の路線は崩せそうもない。その過程で、対内証券投資を引き付ける意味でも金融引き締め政策を採り続けていると言えよう。

5)   ヘッジファンド、海外勢の日本株買い、日本株上昇を歓迎

 欧米のヘッジファンドは日本の株価が相対的に売られ過ぎとの判断の下、数年前から日本株買いを進めてきたことは周知の事実だ。そして、昨今の日本円金利の低さに着目した円キャリートレードは先ほど述べた通りだ。

 彼らの分析は、米国の「財政拡張、金融引き締め」と日本の「財政緊縮、金融緩和」というポリシーミックスに基づいたポジションを造成してきたわけだ。しかも、日本株が日経平均でみて5年ぶりの高値をつけてきた状況だけに、以前から仕込んでいる日本株買いポジションが功を奏している格好だ。

日本企業が、円安、株高、低金利を享受している一方で、彼ら海外の投資家が現在の状況を同じく歓迎している環境が続いているわけだ。

6)   米国経常赤字、GDPの6%を越えるレベル

それでは、果たして、今の状況、即ち、日本にとっても、海外投資家にとっても好環境は続くのだろうか。客観的に見て、今の状況では、日米それほど困ったわけではないというのは理解に困らない。しかしながら、一つ懸念なのは、積み上がる米国の経常赤字である。今や、米国経常赤字は米国GDPの6%にも及んでおり、継続不可能な状況であると言って過言ではないだろう。もちろん、米国の対外赤字をファイナンスするほどの資本が入っているうちは許容出来るのだろうが、何かのきっかけで、国際不信任が生じれば、一気に今の均衡は崩れ去る。

一つのきっかけは、今年の米国中間選挙であり、それに呼応して対中国の貿易不均衡への牽制発言が波乱要因となり得よう。先に述べたように、中国を為替操作国として、米国が直接的に名指ししているのは事実である。中国元がプレッシャーを受けた時の円への反応はここ最近のドル円相場を見ても明らかだ。

一方の中国は、ご存知のように、策略的な政治スタンス、狡猾的とも形容し得るやり方でもって今後も対米政策を考えてくると思われる。それこそ、かつて、当時の橋本元首相が米国にて「米国債をいつでも売ることが出来る」と言った時の市場のインパクトは甚大であった。今の中国は実に不気味とも言える。

そして、韓国にとっても、事態は穏やかではない。即ち、韓国ウォンは最近円に対して上昇の一途を辿っており、韓国企業の輸出が大きな悪影響を受けている事実を忘れてはいけない。中国にしても、韓国にしても、円だけが安くなって、自分たちは困るといつ言い出さないとも限らないと言えるかもしれない。

7)   米金融引き締めの終焉、円キャリートレードの手仕舞い

    一部で言われているのが、米金利が上げ止まった途端にそれまで積み上がってきたキャリーポジションの巻き戻しが入るのではないかという点だ。バーナンキFRB理事の発言、その他FOMCの議事録を見ると、まだ金利引き上げの余地を残していると解釈出来る。金利差からの円売りポジションを今の時点で手仕舞う理由はないが、現在までのヘッジファンド戦略のシナリオの一つの条件がなくなると見なされることは注意する必要がありそうだ。

    加えて、上記の通り、日本の金利が上昇に転ずるのは時間の問題であり、金利差が縮小に転じるのは誰の目にも明らかな情勢となってきている。もっとも、金利が一気に縮小するのも想定し難く、果たして、どこまでポジションの解消が起こるか、予断は許さない。

8)   日本円が実効レートで1985年以来の円安水準になっている状況

    それにしても、15カ国との貿易を考慮に入れた加重平均でもって算出した実効為替レートベースでは、日本円は1985年以来の安値にまで下げているのも事実だ。まさに20年ぶりの円安と言えるわけだ。それだからこそ、海外生産が大きく進んだとは言え、日本の企業が円安を謳歌しているのも当然と伺える。全般的に見た場合、日本企業の05年度平均社内レートは105−110円程度であり、予想収益にプラスの要因となっているのは疑いの余地がない。来期に向けては、社内レートを変更してくる企業も多いだろうとも察し出来そうだ。こういった、近年稀に見る対外的経済条件の下で、日本株が高値をつけてきたのも当然といえば当然かもしれない。

9)   機関投資家、個人投資家による外債投資

    日本の低金利を理由とした、外国債券、資産等への投資熱が盛んだ。機関投資家によるヘッジなしの外債投資も活発化しているとも聞く。国内の投資機会は企業のクレジットの向上も加わって、融資等の上乗せスプレッドが縮小、収益チャンスが益々減少している。

    そうなると、機関投資家に加え個人投資家も自ずと外貨建て資産の購入に関心が向く。団塊の世代の大量定年退職に伴って、巨額の退職金等の個人マネーが市場に溢れ出てくるとも言われる。日本の金利が上昇するとの観測は根強いものの、依然として国内円預金のメリットは小さいことに当分変わりはないだろう。

    それだけに、国民を挙げての外国通貨建て資産の増加となる。為替リスクへの理解が改めて必要とされる時代に入ってきていると言えよう。
(2月26日)

 「新次元のテクニカル分析

ドル円相場は膠着相場が続いています。保ち合い相場、往来相場、三角持ち合い、様々な表現はありますが、面白くない、儲かりにくい相場であることは事実です。

この状況を私たち投資家はどう生かしていくべきでしょうか?ただ、手をこまねいているだけで良いのでしょうか?それとも、無理にでもポジションを持つべきなのでしょうか?

大多数の市場参加者がドル円相場はレンジ相場だと解説しています。ただ、相場が「離れ」た後は、日米金利差、日本の財政赤字拡大等々から円安だとか、米双子の赤字、イラン、原油情勢等々から円高だとか、中長期相場観は分かれてはいます。

ただ、そもそも、コメントを求められる為替トレーダー、為替アナリストが目先の過去の動きから大きくはずすレンジ、一方向に片寄った予想をするケースは稀です。意識している、していないに関わらず、本能的、煩悩的に「リスクヘッジ」を行うのが普通の人間だからです。

朝起きて、ドル円相場が118円後半にいたら、120円越え方向だと答えるでしょうし、同じように116円後半にいたら、115円方向に行くだろうと答えるのは、私たちがトレードをしていて、損を極力避けたいと思う気持ちと全く次元は同じです。

普段私たちが市場に参加して相場を張る時の判断基準は、過去の動きです。少なくとも過去数ヶ月、相場がどう動いたかを脳裏に焼き付けている為に、これから先の動きを予測する上での決定的に大きな判断材料となります。

「原因」があって「結果」があるという論理は、私たちが自明の理として認識していますが、これを相場の世界に当てはめて考えてみると、「材料」があって、「相場」があるということになります。逆に言うと、「相場」は「材料」がないと動かないということになります。

しかし、果たして現実の相場はどうでしょうか。突然動き出すことがあります。もちろん、大量の玉が出たからとか、背景に需給の変化があるからとか、材料出尽くしとか色々と説明されますが、実際には「材料」が「後講釈」にしか聞こえないケースが大半です。

このような相場の突発的な動きにどう対処すればよいのでしょうか?もちろん、如何なるマーケットでも、買い材料、売り材料は枚挙に暇が無いほど存在するわけで、後講釈的に説明はなされるわけですが、果たして投資家としての市場参加者である私たちはどう行動すれば良いのでしょうか?

ここで、私は、新次元のテクニカル分析が非常に有効になってくるのではないかと考えます。それは、どんな理論かと申しますと、「カオス理論」と呼ばれる新しい分野(物理学)の理論です。定義としては、予測できない複雑かつ不規則な様子を示す現象を扱う理論です(ここで言う予測できないとは、現在人間の持っている数値計算手段ではという意味で、例えのことです)。

「カオス」には以下の特徴があると言われます。

1)  自己相似(フラクタル)

2)  単純な数式からランダムに見える複雑な振る舞いが発生する。

3)  初期値のごくわずかなずれが、将来の結果に甚大な差を生み出す
  (バタ
フライ効果)。

4)  過去の観測データから将来の長期予測が困難となる。

この「カオス理論」を相場分析に応用しようと試みがごく最近になって現れてきました。それこそ、スーパーコンピューターを用いて血のにじむ研究がなされているようですが、一部は私たちのパソコンでも使用出来るレベルで還元されてきているようです。

私の知っている限りでは、この「カオス理論」を応用した分析手法として、特別にプログラムした平滑移動平均線、及び、同じく特殊なオシレーターを併用させたモデルがあります。

ただ、実際の分析方法の段階では、チャート上にて、上記の「カオス」の特徴の一つである「自己相似(フラクタル)」を如何に発見するかがキーポイントのようです。

「フラクタル」とは、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念で、図形の部分と全体が自己相似になっているものを指します。

フラクタルな図形は自然界のあらゆる場面で出現されるとされ(例:樹木の枝分かれ)、自然科学の新たなアプローチ手法となりました。また、自然界で多くみられる一見不規則な変動(カオス)をグラフにプロットするとそのグラフはフラクタルな性質を示すことが知られています。

実は、この分析手法の根底に流れる最重要の投資方針は、一般的に言って相場の80−85%程度に見られる「保ち合い」局面を如何に避けて、残りの15−20%の明確なトレンド局面に如何に参入するかという点です。

相場で成功する鍵の一つは、大きく儲かる可能性のある取引だけを行い、あまり儲からない取引には手を出さないことだという風に言い換えられます。

例えば、ここ最近のドル円相場は保ち合い局面であり、中期で見た場合は決して参入してはならないということです。保ち合い相場だから、レンジを決めて上がれば売り、下がれば買いを繰り返せば良いではないか、とはならないわけです。保ち合い相場というのは、あくまで現在から振り返って過去の相場に対して初めて言えることだというわけです。

そして、相場に参加することの最大の目的が収益を上げること(中にはそうでない人々もいるかもしれませんが)である以上、損する(し易い)相場局面では、決して参入しない、儲かりやすい相場局面が訪れたら逃さず一刻も早く参入することを目指すわけです。

この相場が動き出すタイミングをどのように見つけるかがポイントであり、その分析手法として、チャート上に「自己相似(フラクタル)」を見出すことが最優先となってくるわけです。そして、この見出す作業は実は「波動」の発見をするのと同じ類のことであることが分かります。

文章だけだと、ちょっと分かり難くて恐縮ですが、相場が膠着状態に入った時というのは、じっとポジションを控えて我慢する必要があるわけですが、それは次の大きな動きの為の準備期間だということです。今のドル円相場が良い例だと言えます。

ところで、あの「一目均衡表理論」の骨子の一つとして、「準備構成期間」というものがあります。例えば、26日、33日、42日といった期間、相場が小さなレンジ内で動く期間です。そして、相場が「離れて」いく時に、転換線、基準線、遅行スパン等々で相場への参入のタイミングを図るわけです。

そして、この相場の初期段階、準備構成期間を発見する、そしてモニターすることが実は大きな意味のある作業となるわけです。ある相場で絶好のポジションを持てるかどうかは、全てこの「準備構成期間」直後の行動に拠るといっても過言ではありません。

それが、先ほど申し上げた、チャートに「自己相似(フラクタル)」を見出す作業と同じ類のことであるわけです。その意味では、一目山人(一目均衡表理論の「創始者」)は、最先端の科学である「カオス理論」を真っ先に相場に応用した偉大な人物だったと言えるかもしれません。

この最先端の「カオス理論」を用いた相場分析については、又機会を見つけてご紹介したいと思いますが、私自身は、この理論を相場分析に応用して、精度のより高い予測を今後お届け出来ればと考えております。
(4月23日)