4channel Videomixer Rolnad V-8 User Review

OfficialSite http://www.roland.co.jp/products/jp/V-8/

3/14に待望の新機種、8チャンネル・ビデオミキサー Roland V-8が発表されました。
出たばかりの最新型のミキサーですが、Rolandさんの協力を頂いて製品レビューを行わせて頂きました。 名前のとおりの8チャンネルの同時入力が可能となり、更に現地で役に立つインターフェースやエフェクト・ミックスの増強が図られています。

インターフェースデザインはV-4と殆ど変わりませんので、V-4に慣れてる人であれば、初めて触るときでもまず戸惑うことはないでしょう。買ってすぐに利用できるというメリットはなかなか大きいです。
逆に見た目的にはフルモデルチェンジっぽくはないので、その分内部にどれだけの進化が見とれるか、という点が重要なチェックポイントになるでしょう。

それでは実際に追加・増強された機能について、現場で使うことを想像しながらレビューしていきます。


※<映像ファイル>は、後日Youtubeにアップしてリンクを張ります。2,3日後にチェックしてみてください。
  静止画じゃ伝わりにくい部分までしっかりわかりますよ。

画像:セッティング
・レビューする場所は、北九州市のカフェ、Keliの一角をお借りしました。ありがとうございました。
・Powerbookとmacbook pro2台、iPod touchのビデオ出力ということで4つ繋いでます。


■1.映像入力・出力について

1.a 8チャンネル入力
まず最も大きな変化といえば、名前にもついているとおり、同時入力数が8つになったことです
。 これまで4つあれば充分じゃないか?と思われてたV−4ですが、実は1つのパーティで複数のVJチームで共有して使うケースでは、普通に足りないことが多いですね。セレクタとかミキサー複数台使うとか工夫してました。

共有で使うカメラ入力やアタック・テロップ入力+2,3チームとなっただけでも、4つではすぐあっぷあっぷしちゃいます。 複数台のミキサーやスイッチャをつなげば問題ないように思われそうですが、現場のVJブースはあまり広くないし、それほど何台もミキサー・スイッチャを同時におくことは難しいのです。
(それにミキサをあんまり数珠つなぎにすると、信号遅延や画質劣化の原因になるんであんまりやりたくない)。

それが入力8チャンネルともなると、複数のチームのマスターミキサーとしては余裕になるし、配置次第では全参加チーム共有のプレイ用ミキサーとして使うこともできるでしょう。中継のカメラだってたくさん同時に入力できれば、中継の演出の幅が広がります。単純な考え方ですが、入力数は多いにこしたことはないわけです。

更に今回は入力数が単に増えただけではないことに注目。 まず基本的なRCA入力端子がBNCの同軸端子になりました。業務イベントで業務用機材と手持ちのVJ機材を同軸で接続すれば信号劣化の防止につながりますし、なにより業務関係者から「ピンなの?(ふふ
)」といった感じで見られなくて済みます(笑)。

また高画質映像を使えるソフトや機材が増えてきた今、S端子入力が4つも用意されてるのが個人的に非常に嬉しいです。最終的にプロジェクタにつなぐのが結局RCAになったとしても、途中まででもSのくっきりした映像信号で配線しておくことは無駄にならないんじゃないかと。

そして今回の目玉であるRGB入力!これは嬉しいですね。テレビ用の外部出力をもってないPCもダイレクトにつながりますし、ズーム機能も普通についているので、昔のバージョンのVJソフト(motion dive Ver1 or 2 or3とかm7など)を好んで使ってる方もスキャンコンバータを持ち歩かなくてもよくなる!という素晴らしい環境が手に入ります!(^ ^)。 個人的にはRGB入力は、かなり大きな機能強化なので、後述の段落※で詳しく取り上げたいと思います。

1.b 出力
出力は3つで、BNC端子 x 2 + S端子 x 1。これはV−4と同じ数ですね。実用的には問題ないと思います。「同一画面」を4つ以上分配するケースはこれまであまりありませんでしたからね。
(切替式プレビュー画面を見ないのなら、設定でメニュー表示を消したプレビュー出力も最終出力として使えるのでまあ強引には4ついけますけどね。
※プレビュー用出力については、この次の段落の話で)

V-4から大きく変わった部分として、最終出力をBLACK OUT、もしくはWHITE OUTさせるためのつまみが縦フェーダーになり、またBLACKかWHITEかの選択が切替式のスイッチになりました。
V-4のつまみでは、黒〜通常出力〜白まで1つのつまみの最小・最大に割り当てていましたが(中間地点が通常出力)、それが通常出力〜黒 or 白の2択をスイッチで選ぶ形になった点は、人によってメリット・デメリットがあると思われます。
例えば頻繁にブラックアウトを使う場合、V-4では元に戻すとき「中間位置に戻す」という操作がそれなりにデリケートだったのに対し、V-8ではフェーダが止まるまでガッとあげたりガッと下げたりするだけでいい、というのはラフな感じで悪くないと思います。
ただし黒っぽい映像から白っぽい映像までを波のように変化させるようなことをしてた方には、途中に切替操作が入るので滑らかにいかずにストレスになるでしょう(結構少数派だと思うんですが)。

1.c プレビュー出力
プレビュー出力については、今回は大きな進化があります。勿論これまでどおり、切替式のプレビュー出力も1つありますが、なんと全入力(8こ分)に対してのスルー出力が1対1でついてるんです。
これはなんでもないように見えて非常に便利です。一番のメリットとしては、チームでVJプレイしている場合やたくさんの中継カメラを利用してる場合など、最終のミキサーを操作するマスタープレイヤーが状況把握し易いってことです。 (モニタ自体にスルーがついてるものを持ってれば、ミキサー入力前にモニタをスルーするという手もありますけどね。しかしまあこれをやるとモニターからスルーで出てる端子のタイプでボトルネックになることもあるし、ミキサー側でスルーしてくれたほうがありがたいです)

具体例として、複数のVJツールを操るプレイヤー数名と最終ミキサーを操るプレイヤーで担当分けしているチーム構成は結構よくあります。V-4では、ミキサープレイヤーが各入力ソースの状態を把握するためには、プレビューの切替スイッチを使って見たい入力に切り替えていくか、他のプレイヤーが使ってるPCその他を覗き込む必要がありました。 中継カメラなどは、ブースから遠いところに設置する事が多いから特にプレビューを見るしか手がないですね。つまり同時に全ての映像の状態を確認できないわけです。

VJにおいてミキサープレイヤーが、一番いいタイミングを逃さずに入力を切り替えてプレイするためには、やはり自分の目の前に「全ての入力映像」が「リアルタイム」に「フルレート」で動いているモニタが集まっている環境が理想的です。V-4のときのようにプレビュー切替機能だけで、1度に1入力づつしかチェックできないのはそれなりに不便でした。

入力数分のモニタ、もしくNumarkの3連モニタなどを利用して、常に全ての入力映像を把握していれば、より精度の高いフェーディング・スイッチングプレイが可能となるでしょう。 他にも中継カメラを複数台使えて、ライブ中継主体のVJをするときも、いいタイミングを狙ってカメラをチェンジできて便利です。
プレビュー用モニタを入力台数分用意するっていうのは、予算的にも荷物的にも大変なのですが、ミキサープレイを長年やってきた方ならそれだけの価値が分かってもらえるのではないでしょうか。

補足ですが、複数の中継カメラを使う場合、業務用スイッチャのように3番>5番>7番>8番みたいにパンパンとスピーディに入力変更する際は、入力番号のボタンをダイレクトに叩くと少々ノイズがのるので、多少ノウハウが必要です。FSが2系統のみだからか、この部分は業務用スイッチャレベルとまではいきません。

切替式プレビューについては機能的にはV-4と同じです。ただ切替ボタンが1〜8+最終アウトと入力数分増えてます。
それでもスルーがあるから、とこっちを省略しないでくれたのはありがたいです。プレイスタイル的、荷物・予算的に複数のプレビューモニタを用意できない方は、これまでどおり一個のモニタで済みますしね。

もしV-8のコンセプトがホビー・ミキサー路線になっていたら、逆にスルーはいっこもなしで、全入力を1画面に分割表示とかの機能追加の方向にいくのも可能性としてアリだったかもしれませんね。そっちのやりかただと、複数のプレビューモニタがなくても一度に全体を把握できるので。(表示フレームレートやプレビュー画質は勿論犠牲になるでしょうからあくまで次点アイデア的な解決法ですが)。


1.d RGB入力について
[入力のメリット] 今回何より嬉しいのはRGB入力がついたことでした。しかもズーム機能付き!ダウンスキャンコンバータを持たなくよくなる、というのがどれだけありがたいことか。 これは単に僕個人だけ、というレベルではないと思ってます。 ちょっと長くなりますが、RGB入力がミキサーにあるメリットを考察していきましょう。

もともとPC-VJブーム初期のころは、パソコン本体(ノート含め)にビデオ出力自体ついてない上に、デュアルモニタモードでのパフォーマンスが厳しい時代でした。 そのため、昔のVJソフトはRGB外部出力をスキャンコンバータ+エリアズームモードでビデオ出力信号に変換するのが必須だったわけです。
それに比べ、最近の大抵のパソコンは、処理能力があがってビデオ出力も最初からついてる機種が増えました。それに伴い、最新VJソフトもほぼデュアルモニタモード対応になり、ある意味このスキャコンを利用するVJ環境はどんどん減少しています。きています。
しかし今でも旧バージョンのVJソフトの持つそれなりの魅力を捨てきれず、まだまだ旧環境でプレイしているVJは沢山います。それに最近はMacでもbootcamp機能のおかげでWindows用VJソフトが利用可能となり、Macbook系で風立やfireflyを使いたがってる人も多いのですが、微妙なことにbootcampで立ち上がるWindows(XPのみ確認)では、なぜかデュアルモニタ機能を使うとRGB出力用コネクタでは問題ないのにビデオ出力用コネクタではうまく出力されないという問題がありました。 そのため、このパターンでもスキャンコンバータだったんですね。

今回、ミキサー本体にRGB入力が出来るようになったため、上記の2つのケースでもスキャンコンバータは必要なくなったというわけです。
スキャコンたった1つ、といいながらも、持ち運びの荷物が多い上にブースがせまくコンセントも沢山使うVJにとっては非常に大きな環境改善となります。 移動用バッグから余計な荷物が一つ減り、現場でも若干のスペースが確保され、コンセントの穴も一個空き、スキャコン自体の設定時間も省けるとなれば、これは私を含め、一部の人には非常に有り難いことでしょう。

それ以外のケースでは、メディアアート系のインスタレーションや静止画を使うデモではかなりの割合でRGBの出力を使います。彼らと映像のコラボを行なったり、ワークショップやセミナーに呼んだりして作品を紹介するとき、最終の映像出力をミキサーに入力してコントロールしたいときはとても便利です。 企業イベントや業務プレゼンテーションなどの現場でも、飛び入り的な参加者を許している場合にはRGB入力があるだけでずいぶん助けられる場面もあると思います。

※ただし非常に解像度の高いもの(スライド写真やリアルタイムレンダリング系のインスタレーションなど解像度が横解像度が800ピクセルを超えるもの)を、最高のクオリティで映したいときビデオミキサーを使うのはお勧めすすめできません。
ミキサーの最終出力はがんばってもRCAかS-VIDEOレベルになるので、理論値的にも720*486以上の解像度を映せないからです。こういう場合はやはりそのPCをRGB出力をプロジェクタに直接接続して、切替が必要ならプロジェクタのリモコンで入力切替とかしたほうがいいでしょう。(VJはできないけど)
(勿論440HDといったような業務用クラスの ミキサーを使ったりすればいいわけですが、100万超えてますしね)

ちなみにひとつ把握しておくべきポイントがあります。V-8のRGB入力端子は2つありますが、あくまでRGB入力は8つのうちの「8番入力の1チャンネル」のみの割り当てです。2つのRGB入力を同時にスイッチしたりミキシングすることはできません。
切替スイッチでどっちを8番入力に活かすか選択するのですが、この切替スイッチはプレイ中のスイッチングには使えません。周波数変更設定が変わるから画面がぶれるし、切替後の映像が出てくるまで多少時間がかかりました。
プレイ中に切り替える場合は、最終出力には別チャンネルの画面を出しておいて裏で操作する必要があるでしょう。

[ズーム機能]RGB入力にはしっかりと2倍ズーム機能がついていました。 若干古めのVJソフトは、ご存知のとおりデュアル・ディスプレイ機能に対応しておらず、画面の1部を拡大出力する必要があるためエリア・ズーム機能が必要なんです。
ちなみにスキャンコンバータとしての性能は現行の民生品レベルだと思われます。機能をいぢりまわしたところ、さすがに業務用クラスのスキャコン(SONYの1024HDとか)機能とまでいきません。しかしそれでもポジションやサイズ変更(ズーム中は無理だけど元画面で調整OK)もできるし、筆者の利用している古めのスタンドアロンのスキャコン出力よりもエッジが効いて鮮明に映ってるし(ホントに)、VJ用途に限っていえば充分なレベルです。

最初に試したとき、他の入力に比べてアンダースキャン※気味で、別入力の映像(オーバースキャン※設定)と出力サイズが若干ことなっていましたが、サイズ調整で他の入力画像とちゃんとぴったり合うように調整できました。
(※画像の出力が、画面の枠内に全部納まるようになっている設定。画面一杯に広がらないのでVJは基本、全入力映像をオーバースキャン設定にする)
また嬉しいことに、このズームや微調整の結果は内部に保存されるようで、一度電源を落としてから立ち上げ直しても大丈夫でした。立ち上げ直すたびに設定を調整し直す必要はないようです。

ちなみにmixiなどでよく聞かれたのが、通常のビデオ入力よりRGB入力のほうが画質があがるか?という点です。同じ出力(DVレベルのソース)をS端子とRGBの2つを試し、ブラウン管で確認しましたが、特に違いは感じられませんでしたね。どっちもキレイです。 (結局この比較って、PCがビデオチップがやるスキャンコンバートとV-8内部で行なわれるスキャンコンバートの性能差の勝負になるんですが、そういう意味ではどっちも充分な性能だってことでしょう)
ちなみに元コンテンツの解像度は同様のものです。当たり前の話ですが、例えばRGB入力でXGAクラスの映像を突っ込んでも、結果的に最高でもSビデオ画質までには落ちますよ。これは前術の出力のボトルネックですからね。

画像左 ハード:macbook pro , ソフト:modul8 接続:S-VIDEO / 画像右 ハード:powerbook , ソフト:motion dive.tokyo ,接続:S-VIDEO


画像 ハード:Powerbook , ソフト:m7 , 接続:RGB , オプション:ズームオン


画像 ハード:macbook pro( bootcamp WindowsXP ) , ソフト:firefly ,接続:RGB


画像 ハード:iPod touch ,接続:RCA(BNC変換コネクタ)


画像 背面の状態 1番:iPod 4番:modul8 5番:motion dive 8番:上m7下firefly

■2.スイッチング・ミックス

ミックスは通常のフェード・ワイプ・特殊ワイプの分類は変わりませんが、種類はかなり増えました。 特筆すべきは、業務用スイッチャにはよくついているFAMとNAMというフェードがついたことでしょう。
FAMとNAMは、A/B映像の輝度を比較しながらクロスフェードするモードです。簡単にいうと、明るい部分から変わっていく、もしくは暗い部分から変わっていく、というような感じになるんですが、口で説明するより見てもらったほうが分かり易いと思います。

<映像ファイル>

個人的に好きなのは、ルミナンスのキーイングをワイプに応用している機能でした。もともとV−4で、A/B切替時に、ルミナンスキーをエフェクトに割り当てて、閾値をエフェクトつまみでコントロールして映像を切り替える、という手法を好んで使っていたのですが、これが最初からミックスモードに存在しています。

<映像ファイル>

A→ブラックアウト→Bといったように、クロスフェードでなく、ブラックに一旦フェードアウトしてから次の映像がフェードインしてくるモードもありました。 (確かこれV−4のデフォルト設定になかったんですよね。KORGのcrossfourにはあったけど)。
この切替は、テンポよくやると映画のトレーラーの演出のように見えてなかなかイカしてます。

VJといえば、クロスフェードかカットチェンジのつなぎが基本で、勿論それだけでも熟練してれば素晴らしいプレイが可能です。でもせっかくこれだけ「つなぎ」について色んな演出が可能になるのだから、新しいプレイスタイルの模索として、複数の新しいミックス表現を使いこなしてみるのは非常に有効な実験だと思われます。

それから沢山ワイプパターンはありますが、ユーザ設定で色んなワイプパターンを組み合わせることもできるようになってますね。フェーダーの右左の位置を0〜100とみなすと、0〜50はこのワイプ・51〜100はこのワイプ、といったフェーダー位置による設定が可能となっているようです。 ワイプはうまく使えばカッコよくもかわいくもなりますが、乱用してハマらないとダサかったり(笑)するので、この辺をどう使うかはユーザの腕次第でしょう。

<映像ファイル>




ちなみにミックスではないんですが、エフェクト調整のために両側についてる縦フェーダが、ボタンを押すとA/Bそれぞれ独立してブラックアウトできる出力フェーダに切り替わります。 おまけ(沢山のミックスパターンをとり急ぎ切り替えてみました)

<映像ファイル>

■3.エフェクト

エフェクトも新しいものがかなり追加されて、一段と実用的になりました。 とりあえず気にいった新エフェクトとしては、フィードバックにアフターイメージ(残像)、シルエットに輪郭検出ですね。

・フィードバック
もともとこれはエフェクト、というよりビデオアーティストが好んで使うテクニックの1つで、出力された映像を更に入力に入れたものとミックスする、という合わせ鏡的な効果を狙ったものでした。 実際は合わせ鏡というよりも、信号遅延によって、にぢんだ独特の効果を得ることができます。
もともとは分配された出力ラインをまた入力端子に突っ込むことによって実現できていましたが、今回V−8はそうした配線テクニックを使わなくても1機能として持たせたので、理屈を知らない初心者でも簡単にループ・フィードバックの面白さを楽しめるようになりました。



<映像ファイル>

・アフターイメージ(残像)
残像機能は使いどころのあるエフェクトです。結構たくさんのVJソフト自体にこのエフェクトはついているのですが、それなりに処理が重めの表現ですね。こういうのはミキサー側で処理してしまえば、入力元のPCの再生パフォーマンスに負荷をかける必要がないため、ミキサー側でやってくれるのは助かります。

<映像ファイル>

・輪郭検出とシルエット
この辺のエフェクトは中継映像にかけるといい感じになります。こちらも既にVJソフトによくついていますが、VJソフト(パソコン)にダイレクトに中継映像を入力してエフェクトかけるケースって、設置系のアートインスタレーションとか反応系・トラッキング系のジェネレーションを利用したりするとき以外ではあまりやれないんですよね。
理由としては、USBやDVでの入力ではカメラと繋ぐラインが短くて硬いし、RCA入力可能なキャプチャカードをつけてるPCってのもあまりないわけで、実際の現場では非常に多くの制約をクリアする必要があって結構大変なのです。
そういう意味では中継映像にエフェクトをかけるのは単独ハードのミキサーやエフェクターの役割になることが多いです。そういう意味で実写に活きるエフェクト効果をミキサー側につけてくれるのはありがたいことなんです。
まあKAOSSPADを持ってる人は普通にやれるからそれほど意識してなかったかもしれませんが、ミキサー単体の方は活躍すると思いますよ。



・その他
また今回からフェーダーでパラメータをアナロギーに変化させられるエフェクトが増えてます。V−4でもつまみで変化させられるとはいえステップ的に5,6段階カチカチっと変化するような感じでしたから、滑らかなカラー変化などは美しく、デリケートなプレイが可能で操作してて楽しいです。

それからエフェクトボタンを割り振るのは、ボタンはA/Bロールそれぞれ4つづつ。 そういう意味じゃ沢山のエフェクトをプレイ中に自由自在に選びたくても、決めて4つ以外を使うには、都度、設定変更を呼び出して再設定する必要があるのでスムーズにいきませんよね。
個人的な工夫としては、ボタンで切り替えるだけでなく、プレビュー画面のエフェクト・ボタン割り当てメニューを出しっぱなしにしといて、メニューキーの上下選択で切り替えていく、という手が結構いけると思います。これはV−4でもやれたかな?参考までに。





おまけ(沢山のミックスパターンをとり急ぎ切り替えてみました)
<映像ファイル>

■ 4.その他

その他、まず外部インターフェース機能についてちょろっとだけ触れましょう。勿論、お家芸のV−LINKはついてますが、筆者の環境ではDTM機器がなかったのでチェックできませんでした。 この辺のレビューは、音楽やってる方が近所にいたらおいおい試してみたいと思ってます。

ちなみにMIDI制御では、今回Local Off機能というそのスジの方には有名なモードがついているらしく、MIDI信号によってV−4を1モジュールとしてコントロールできるそうです。 詳しく説明できませんがV-8の機能を、V-8自体の操作を行なうことなくI/Oして利用できるらしいので、max/mspやQCのようなMIDI信号を利用できる言語でV-8をソフトウエア制御可能ということですね。 (ウソかも?)。

またミックスやエフェクトのカスタマイズにもちょっと触れましたが、V-8では更にユーザーカスタマイズの自由度がアップしています。 例えば、咄嗟的なスイッチング機能として存在していたトランスフォーム・ボタンも、メニューからの設定変更によって「そのボタンを押している間だけ特定のエフェクトがかかるように」とかできるようです。

■5.感想とまとめ

今回のV-8は、入出力のパワーアップを見て分かる通り、よりプロの現場(クラブというより業務系)のオペレーションや機材にマッチするように仕様アップされているようです。 ただしそのパネルデザインと操作性から見て、あくまでVJのような「映像パフォーマンス」機材であるコンセプトからは外れていません。
フェードバック・エフェクトやFAM・NAMなど、これまでベテランVJ達が「テクニック」としてやっていた表現手法などを「標準機能」として誰でも簡単に扱えるように積極的に取り込んで「映像パフォーマンスの楽しさ」を追求している姿も充分見て取れます。
そして、それだけの内容を盛りこんで価格は18万程度。その辺のバランスはなかなかな感じです。
勿論、その半額で購入できるV-4のコストパフォーマンスも素晴らしいですから何がなんでもV-8じゃなきゃ!とはいいませんが、少なくとも現在V-4の稼働率が高い方や複数の色んな入力ソースをよく使うVJさんはV-8にすることをお勧めできます。
それはV-4に比べてかなり痒いところに手が届くアップグレードになっているため、使う機会が多ければ多いほど満足度が高くなると思うからです。
また、初めてミキサーを購入する方・初心者の方にもよいと思います。 初心者なら安めのやつでいいんじゃないか?という意見もあるとは思うのですが、個人的には「やり始め」のときこそ使い易くて高性能なものがいい、というのが持論です。

さて最後のまとめに前に、ちょっとイイ事ばっかり書いたので、恐らく出てきそうな要望やそれに対する勝手な考察を書いてみました。

・RGB出力が欲しい?
 メディアアート方面の方や業務プレゼンを行なう方からよくこれを聞きます。 確かにあると便利なのはわかります。上記の方達はVJソフトではなく高解像度なFlashやQC、オリジナルアプリ、またはiPhotoやAparture、パワーポイントなどをメインコンテンツとして使うからです。
単純に考えれば、アップコンバータ・チップを一発かませば済むと思われそうなものですが、実際はそれではダメで「RGBで入力された解像度とそのクオリティが維持された状態で他の入力映像とミックスされつつRGB出力される性能」が必要なわけなんですよね。そこまでを20万を切る民生品に求めるのはかなり無理があるんじゃないか、と思います。
(そういう意味でやはりフラッグシップ・ミキサーの440HDはすごい、ということなんです)。

・4チャンネルミックスになってほしい?
海外製品にこういったミキサーが存在しますし、入力が増えた分こう思う方は結構いらっしゃるような気がします。
まあこれをやるとなると価格と画質とのトレードオフとか発生するでしょうし、 「V-8のスタイルとしてはこうした」という結論なのだろうとは思います。
ただ4チャンネルミックスについては、ちょっと気になる点もあります。
PCの中で4レイヤーミックスするのはネタ選択と同時にミックス操作できるので、プレイ手法として簡単に想像できます。しかし4つバラバラの機材を操り全てミックスさせて有効にプレイするのってかなり難しいんじゃないかな、と思うんですよね。
欲しいという前に自分には必要か、と考えてみる価値はあるでしょう (かばうわけじゃないです。実際4チャンネル・ミックスって、できたならできたで4つのフェーダーをザクザク操作するのが楽しいのは知ってるんです。風立ADにフェーダーバーの沢山ついたMIDIコン繋いでそうやってたVJを知ってますから)

・入力切替時にノイズがのらないようにしてほしい?
確かにこれはちょっと思います。せっかく8入力あるから、業務用スイッチャ的にダイレクトに入力切替ボタンをバシバシやりたいって気持ちにはなります。 これは積めるFSの数にもよるんだろうしそれも最終価格との折り合いでしょうね。しかしコレがOKで5万増なら個人的にはそうしてほしいところかも。

他にもどんどん適当にいっちゃえば、8つもスルー出力あるんだからマトリックススイッチャみたいになんないか?(無茶)、とか、BNCの変換コネクタ4つじゃ足りないけど買い足したら意外にきつい出費だった(安くても1コ300円前後)とか、CG-8みたいなジェネレータ機能つけろ、とか、Dビームやタッチパネルほしい(そこまできたら別機種だよ)、とか色々あるかもしれませんが、まあなんでもかんでもというわけにはいかないのはみなさん理解できると思います(笑)。

最終的には私の感想としては、「VJスタンダードミキサーに相応しいブレないコンセプト」を感じられ、非常に好感触でした。 (その証拠にレビュー機を返却した2日後には注文しちゃったし笑)。

最後のまとめに入ります。V-8は以上のレビューのとおり、豊富な入出力を持ち、より業務用的に進化していながらも、「VJパフォーマンス」としての面白さを更に追求しているモデルです。 スタンダードのシリーズを継承しているのは伊達ではなく、基本をしっかり押さえていてその一つ一つはかなり洗練されており、ミキサー購入を考えている方には迷うことなく進められる1台に仕上がってます。
完全にV-4からのバージョンアップ路線でありフルモデルチェンジ的な印象は強くありませんが、その分、堅実で信頼性の高いとても優秀なVJ機材として、購入者と長く付き合えるものとなるでしょう。

                                 written by 2008.04.14 motordrive