Software [motion dive.tokyo] : development [digital stage]
written by motordrive

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motion diveの最新ソフトウエア[motion dive.tokyo]がリリースされました。既に新しい世代の優れたVJソフトウエアが先行して発売されておりますが、やはりmotion diveの新バージョンが出ると、ああ新しい時代に移ったな、と実感がわきますね。

検証ポイントとしては、カラーコレクション、テキストレイヤー、BPMシンク(フェーダーシンクも)、高画質対応、デュアルモニター(解像度テスト)を中心に見ていきましょう。 また、個人的にこれからの世代のVJソフトは、
・マルチモニタ対応のPCの場合スキャコンが必要ない。
・320*240シネパック以上の画質に対応している。
というこの2点においてスタンダードにならないかな、と思っていますのでその点にも触れます。


1.ユーザーインターフェース

非常にシンプルなものになっています。ショートカットはちゃんとありますが、基本的にマウス操作を前提として設計されているようですね。Ver3のアクションレイヤーやボタンモード、もっと以前のバージョンにあるファンクションモード的なコントロールが無くなっているのは賛否両論を招くと思いますが、 むしろココまでバッサリ操作方法を絞り込んだことによって、プレイ中、思考回路が戸惑うことはなくなるでしょう(^ ^)。
それから、各操作に対してコンソールパネル上にあるグラフィックが反応するのですがこれは気持ちがいいですね。お客さんに見えない部分ではありますが、プレイヤーの気分を高めるという意味ではこういうギミックは非常に効果ありだと思うし、趣味的に好きです(笑)。



基本コンソールパネル。使っている素材はmotordriveのものです。


ブレイクダウンボタンを押したところ。赤い光のラインがコンパネを走ります(^ ^)

2.カラーコレクション

motion dive.tokyoにもカラコレ機能が付きました。これは・・・やはりユーザ要望が多かったのでしょうか。カラーサークルによって明るい部分の調整、下の回転ダイヤルによって暗い部分の調整を別々に行なえます。映像の色を変えるだけでも表現の幅は非常に広がるので、いい感じだと思います。 ポイントはAロール、Bロール別々に設定パネルがあることでしょう。これは分かりやすいです(^ ^)。
ただ欲をいえば、このカラコレの結果はメインパフォーマンス画面でしか確認できないのが惜しい、ということですね。せっかくAB別々の設定画面をもっているのだから、Aロールを画面に出してる間に、Bロールのネタをカラコレ調整して満足いったところでBへスイッチ、みたいな使い方ができるといいなと思います。それとちょっと気になるのが、このエフェクトってOFFボタンはあるのですが一度パレットに設定した色はリセットされませんでした。これは設定をリセットする方法があるのかな?(気が付かなかった^ ^;)
それからパレットをドラッグしながら色を変化させてるときに、チカチカとフラッシュにちかいことが起こります。これは無論狙ってのことでしょうけれど多分恐らく好みが分かれる設計でしょう。

未設定
カラーサークルをいぢる。
下部ダイヤルをいぢる。

3.合成

美しい加減算のある合成モードを実装しています。ちなみにこれまでのmotion diveも合成モードはついていましたが、motion dive Ver3では、この多彩なレイヤー合成を行なうためには「アクションレイヤー」と呼ばれる第3のレイヤーに登録する必要がありました。個人的にはVer2のように、あくまでABロールのフェーダーを使ったミックスのときに合成モードを選びたかったので、このスタイルにもどって個人的にとても嬉しいですね(^ ^)

 合成パネルと合成前素材



各種合成結果

4.テキストレイヤー

これについてはもう定番なのであまり触れることはありません。さすが、というかリアルタイムテロップ系の管理画面としてはホントウに分かり易くて、完成されたインターフェースです。ただ今回デフォルトでは日本語対応テキストレイヤーファイルも搭載されてなく、パターンも少々少ないです。今後の追加ファイルに期待する、といったところでしょう。 ちなみに機能的な変化はないのですが、ポイントとして今回のmotion diveにはデュアルスクリーン時に表示ピクセルの限界がありません(パフォーマンスが許せばですが)。テキストレイヤーはFlashフォーマットを利用しているので、画質を上げれば上げるだけ最高に美しいフォントラインを見せてくれるだろうと思われます(^ ^)

    
テキストレイヤーパネルと結果


5.BPMシンク

ついにきました!僕個人が、モーションとリズムのシンクロを大事にするプレイスタイルであったため、どうしても欲しかったタイムストレッチ(再生スピードコントロール)型のBPMシンク機能がつきました。 特に4つ打ち系のプレイのときは、ムービーの「中の物体のモーション」をシンクすると非常に気持ちいいものです。このBPMシンクが付いてるVJソフトは現在でも多くありませんのでとても嬉しい機能といえるでしょう。
というわけで動作確認を行ないました。 実際のシンクロロジックは想像よりシンプルなもののようです。基本的にタッピングによって検出した曲の一小節の長さと、ムービーの1ループの再生長がピッタリ合うように再生スピードをコントロールしているようです。当然一定以上の長さのムービーでは、上記の処理を行なうとすごく加速されてしまうので、それを防ぐために従来のスクラッチ型(頭ジャンプ)シンクに切り替えられます。となれば、motion dive.tokyoのBPMシンクを活かすためには基本的に1ループが一小節で終わる設計で素材ムービーを作成するとよいでしょう。一応ノウハウとして、タッピング間隔を一拍おきにしたり二拍おきにしたりすることで、2小節以上の長さをもつループムービーのシンクさせるという手段がありますよ。
それはそれとして、個人的には1ループ1小節でムービーを作ると、少々動きが単調にすぎるので可能なら2小節、4小節単位でシンクする1/2sync,1/4syncとでもいったようなトグルもあると悪くないと思いました。その辺をオートでやってくれるモードもつくと更に嬉しいですね。 ただしそこを全自動にするためにはどうしても、扱う曲のBPMが、ある範囲内であることを仮定してプログラム設計する必要があると思われます(適当な考察なのでつっこみはなしね^^;)。なので、アーティストのバラードからジャズその他など扱う曲調の幅が非常に広い可能性のあるmotion dive.tokyoにおいては、そこを例えばテクノ系や踊れるレベルのリズムスピードにターゲットを絞り込んでしまうというのは、それなりにデメリットも生む可能性があるので、現在の形(+手動で使うムービーが何小節で1ループするものかをプレイヤーが判断する)がベストな選択だったのかもしれないです。



BPMパネルの緑のボタンをタップすると、BPMがその直下のデジタルメータに算出されます。
画面左下のスピードコントロールつまみの上部ボタンが緑になっていますね。これがBPM開始ボタンです。

6.再生コントロール

さてBPMシンクロ再生に目がいってしまって見落としがちですが、再生モードはかなり丁寧な作りになってます。ループ再生や1回再生はもちろん、ムービーのスタート位置とエンド位置を指定してしまうことができるのです。扱う素材で出したくない部分があるときなどは便利だといえるでしょう。 個人的には再生スタート位置「だけ」を指定するようなこともできれば、上記のBPMシンクモードのときに便利だったろうな、と思います。タッピングによるビート(小節の)のスタート位置をシンクするムービーの好きな位置に合わせられるからです。裏打ち的な動きも簡単に実現可能ですしね(^ ^)



7.フェーダーシンク


ちょっとした伏兵というか、フェーダーがタッピングでBPMシンクする機能がついていました。この機能を使えば自分でタッピングした間隔でフェーダーでオートで動きます。動作は単純なABロールの端から端というものではなく、フェーダー動作のスピードはあくまでそのときの設定のまま、こちらがバーを叩いたポイントからポイントへの動作を繰り返します。 フェーダーバーをタッピング動作と同期させる機能は、これまではどちらかというとハードウエアミキサーに搭載されているものだったと思います。なのでこれはデッキVJを経験されてる方が使うといろいろなテクニックをみせてくれるかもしれません。
ちなみにBPMシンクのタップを叩くと、ABロール両方のムービーの再生スタート位置がそろいます。これを利用すれば、長さが同じでディテールの細かいところだけが異なるムービーを走らせといて、BPMのあわせてフェードを繰り返させるだけでも面白いと思います。同じ動きで同じ形で模様の違うムービーを用意したりするのもどうでしょうか^^



中央のフェーダーが自動でいったりきたりします。
ちなみにいま重なっているムービーは、「テクスチャーが異なる」同じ3Dムービーです。
BPMシンク機能を利用して再生スピードと再生位置をそろえてから、フェーダーをいったり
きたりさせると、模様だけがすーっと入れ替わる表現が可能です。可能ですっつっても
これはぼくの勝手に思い付いたノウハウですが(^ ^;)

8.デュアルモード

新世代VJソフトにみなが期待しているものの一つとして、どうしてもデュアルモニター対応があげられます。やはりほとんどのPCにビデオ出力がついているのに、いまだにスキャコンが必要なのはいやですものね。もちろん今回のmotion dive.tokyoはこれに対応しています。
とりあえずPowerbookでの確認ですが、マシンをデュアルスクリーンモードにしてパフォーマンス画面を枠外にもっていくとセカンドモニタのほうにパフォーマンス画面から映像が出ます。この時点ではまだ旧バージョンと同じくコンソールのほうの映像は消えてますが、ここでプレビューボタンを押すとコンソールと外部出力ともに映像がでるようになってます。
さてここで一つ問題なのですが、さすがにこの処理は負荷がかかるらしく、ぼくのPowerbookG4 867MHz 12inchではかなりフレームレートが落ちてしまいました。外部出力映像のパフォーマンスを優先させるために、コンソールのパフォーマンス画面のフレームレートを意図的に調整する機能がついていますが、これはやはりそれなりにこの処理はハイパワーなマシンが必要であることが分かっているためでしょう。確かにコンソールのほうのフレームレートをかなり落とせば許容範囲になってきますが、今度は逆にコンソールもほうの映像がコマ送りに近い状態になるので、フェードやスイッチのタイミングが取りにくく落としすぎると満足いくプレイはむずかしいでしょう。タワーやハイエンドノートを利用するのでなければ、これまでどおりスキャコンを使うか、ミキサーか分配をはさんで別にプレビューモニタを利用したほうが快適なプレイになると思います。


9.高画質プレイとパフォーマンス検証


今回のmotion dive.tokyoは素材のピクセルサイズに仕様的限界はないようです。つまりマシンのパフォーマンスと外部出力設定の解像度設定が許す限りの高解像度ムービーファイルを扱えるようになってます(^^ )。これまでの再生型VJソフトが、ハーフVGAのシネパックしかほとんど選択肢のなかったことを考えるとこれは希望の光ですね。
実験的に320*240、400*300,640*480(cine),720*480(DV)でテストしてみました。無論これはデュアルモードでなければ意味はありませんので、当然プレビューモードにすると重いので、プレビューは切る形でテストしてます。コンソールに映してスキャコンで拡大するやり方だと再生画面自体がハーフVGAサイズなので意味ないですからね(^ ^;)
単独再生ならばどのムービーも結構いけます。ただフェードやスイッチングなどのプレイ操作では640以上のムービーのプレイは厳しかったです。やはり高画質をのぞむなら高性能タワーマシンを利用したほうがよいと思われます。
この点で気になったのは最後に試した720*480(DV)のムービーです。いまのところムービーコーデックを見て自動でアスペクト比を調整するようなことはしてくれないようでした。(上下にスキマができた)、他のコーデックムービーはかまわないので、D1サイズのムービーは自動的にアスペクトを0.9に伸縮して再生してくれると便利じゃないかな、とかちょっと思います。

10.その他(ライブラリやマニュアル、緊急時の映像オフのことなど)

細かい点をあげるとすれば、あいかわらず映像管理(インポートなど)は丁寧な作りになってますね。やはり特定のフォルダに入れ込む、というソフトの外でのやり取りがない分いい感じです。今回はVer3のようにライブラリファイル保存はありませんが、「セット」単位のタブ選択が画面最下部につきます。特定の人(同じチームの人とか)とマシンを共有する場合にはライブラリ方式よりも便利でしょう。

「強いて要望的なことを書きますと、これはまだ他のどのソフトも実現してないのですが、利用するムービーを「移動」して持ち込むか「コピー」するかしかないのは結構つらいです。1,2年くらいVJをやってる方なら1台のマシンに複数のVJソフトをインストールしてることは少なくないです。そのソフトの数分、自分のネタファイルを別個に持つのは非常にHDDスペースを圧迫します;; 可能ならば、実ファイルはその場所のままでエイリアス(ショートカット)的に参照するような形になってもらえると凄く嬉しいんですけどどう思われます?」
上記の文章ですが、BBSからご指摘がありまして、いい方法がありました(^ ^)。最初から素材ムービーのエイリアスファイルを作って、それをライブラリに持ち込めばそれで動作します(^ ^)。
と、二転三転しますが、どうも実際は実ファイルが移動されたり、不具合あったりすると報告を受けたので、調査中、とさせてください^^。これ読んでやっちゃって調子悪くなっちゃったりしたら申し訳ないので(^ ^;)

その他、画面を一瞬でブラックアウトするブレイクダウン機能やパフォーマンス画面上のカーソルを消してくれる機能など現場のことを考えている丁寧な作りは健在です(^ ^)。
個人的にちょっと気になったのは、マニュアルが以前よりも簡潔な説明に留まっている印象をうけました。ブックレットになってないから気のせい?かもしれません。無論これまでが丁寧すぎるくらいだったともいえますが、motion dive.tokyoが初めてのVJツールとなる初心者は少々戸惑うかもしれません。

11.総評

今回のmotion diveには、ソフトウエアのベースが、将来のハードウエア事情を見込んで懐が深くなるように設計されているようだと感じました。映像そのものの高解像度化という、PCーVJの進化として避けて通れない要素に対して、真剣に取り組んだ結果のソフトになっていると思います。逆にそのせいでmotion dive3で見せた多彩なワイプ機能やエフェクターがデフォルトでは搭載されていないため、かなりシンプルに感じて少々物足りなさを感じるユーザもいるかもしれません。しかしこれらの機能がプラグイン形式で取込み可能な設計になっているため、今後かなりの追加プラグインがリリースされると期待していいと思います。
motion dive.tokyoは、まず未来のVJソフトの基盤となるソフトウエアを一足先にぼくらに届けてくれたのではないでしょうか。そしてぼくらのフィードバックをとりこんでこれから完成していく、、そんな考え方を感じます。
余談ですが、motion dive.tokyoはPC-VJというより、スタイル的に、多機能プレイヤー2台+高性能ミキサーで構成されたデッキVJのシステムがPC1台に埋め込まれた・・・みたいな進化になってるような気がしてなりません。必然か偶然か、プロ仕様を突き詰めるとそっちの方向にも近づいてくるのかもしれませんね。

P.S.さすがにVJソフトのデファクトスタンダードであるmotion dive.tokyoだけに、やはり相当思い入れがあるので普段なら書かないような必要以上のつっこみや要望をたくさん書いてしまいました(^ ^;)。マニュアルが初心者にとって難しいかも、と書きましたが、逆にこれをきっかけとして、ぜひ別途motion diveの本を出してくれないかなあ、とか思います(^ ^)。ぼくはいまだにあの名書「VJ2000」という本が大好きなのです。あの本はVJを始めたてだった僕には勉強になる以上のものを与えてくれた本なんですよね。また出してほしいです!平野さん、お願いします(^ ^)


12.追記(2003.12)

現在、追加プラグインとして、ACTION、3Dwipe、テキストレイヤー、日本語テキストレイヤーがオフィシャルからダウンロード可能です。ACTIONは、Ver3であった登録したムービーを即座に呼び出せるものです。ただ今のところ、立ちあげる前に利用ムービーを登録する手続きがあるので少々不便になったといえるかも知れません。3Dワイプは、立体効果のあるワイプで好みの人には嬉しいエフェクトでしょう(^ ^)。
ただしプレゼンでなくVJに利用するとなると、ワイプ中画面が止まってみえるので動画>動画の遷移としては少々スムーズな印象を感じられない、などそれなりに応用するには考慮が必要なポイントも感じます。