KAOSS PAD ENTRANCERレビュー

■KORG KAOSS PAD ENTRANCER(Audio/Visual Processer)
9月下旬発売予定 \100,000

福岡のDJ/VJもよく集まるepi*cafe(ご協力感謝します)において、コルグさんからKAOSS PAD ENTRANCERの実機を持って来て頂いて体験させてもらう機会を得ることができました。ありがとうございます!というわけで発売前の体験レポをアップします。



さてご存知の通りこのカオスパッドエントランサー(以下KPE)は、既にDJさんの間では人気のカオスパッドの映像エフェクターバージョンです。簡単にいってしまえば、映像/音声信号の間にこのカオスパッドを挟むと、独特なパッド(ノートPCの指でタッチして操作するパネルみたいなやつ)インターフェースをいぢくることによって様々な変化を与えられるという代物です。まあここを見てる方なら大体の想像はつくと思うので、基本スペックの説明はすっ飛ばして最初からいぢった感想を述べていくことにします(^ ^)

下記にあるエフェクト段落にある管面撮影スナップを見て分かる通り、こいつを挟むと色んな特殊効果を映像に与えることができます(^ ^)。そういってしまうと単なるフィルタ効果のように聞こえますがそれは違います。パッドインターフェースの神髄ともいえますが、効果一つ一つに対して、その状態を自由自在にコントロールすることができます。これが秀逸です。とにかく指でパッドをなぞったりたたいたりするだけで素晴らしいレスポンスで映像が変化します。色やエフェクトがなめらかに変化していったり、映像がタイリングされた3Dウォールが流れ出したりと、それは全て自分の指の神経と繋がってるような感覚を引き起こします。これは気持ちいい!
もともと映像エフェクターというものは、ある映像に対して異なる外観を与える「だけ」の物ですが、KPEは変化自体をコントロールして演奏できるようなコンセプトとなってますね。VJってのは(個人的には)色んな映像を作り出す人ではなくパフォーマンスを行なう人だと思ってます。そういう意味でKPEの考え方は非常にVJの求める要求を理解しているといえるでしょう(^ ^)

更に特筆したいのですが、このKPEには既存のカオスパッド同様にサウンドのエフェクターもしっかりついたままです。現場でも試させて頂いたのですが、流れている音と映っている画面に対して同時にエフェクトを掛けてコントロールすると! もうこれはやばすぎです。目に映ってる情報と耳に入って来る情報がシンクロしている状態の感覚ってのは、もう言葉ではうまくいえないほど強烈なもんです。もともとシンクロ重視のプレイをしているぼくにとってこれは感動!やばいなあ、買いそうだなあ、と妄想しているうちにイッコ買います売ってください、とコルグの方に口走ってるぼくがいました(笑)。実機が届いたらまた追加レポも出したいですね(笑)。
さて次はもう少々仕様について掘り下げましょう。


・エフェクト

音と映像それぞれにエフェクト100種類がついています。また音と映像を同時に操作するため、音:映像の各エフェクトの組み合わせも100種類セットして各ファンクションに保存できるようでした。エフェクトの中にはBPMと自動シンクロするものも多く、これも気持ちがいいです。 また入力映像を6秒間サンプリングしてそれを効果的に表示するようなエフェクトもありました。
蛇足ですが、KPEは映像入力が2系統あるものの、こいつはセレクタ方式なのでクロスフェードとかで切り替えることはできません。ただ6秒間のサンプリング映像とその時入力されてる映像のフェードエフェクトとか可能なので、応用の仕方によってはある程度のフェードプレイのようなこともできると可能性はあります。(しかし映像自体の切替は、ソフトかミキサーでやるだろうから無理にKPEをミキサー的な使い方を模索する必要は全然ないと思います)
エフェクトの中には入力映像と関係なく、音に合わせた波形などをジェネレートして映してくれるものも何点かついてます。


※TVモニタに映した最終出力を管面撮影したSSなので、実際のイメージとはちょっと異なる印象を与えてしまうかもしれない点はご了承ください。

入力画像(motordrive) 下記:エフェクトの数数






 DVカメラからの映像にエフェクト

 中心の波ラインは、KPEがドローイングしてます。他数種あり。


・BPMシンク

BPM算出はタッピング・MIDIクロック入力に加えて、なんと入力音源からのビート検出を行なっての自動計測機能を持っています!便利!実際の現場では、MIDIクロックでBPMをもらえることなど殆どありませんので、やはり自動計測は相当有効です。惜しむらくはKPEはMIDIアウトもあるものの、その場でちょっと見てもらった限り、計測したBPMをクロックで出してはいないようです。自動計測あり、と聞いた途端、そのままMIDIアウトをMIDIでBPMクロックを受け取れるVJソフトにつっこめば、いつもやってる忙しいタッピングが要らなくなる!と思ったのですが・・。これはぜひ要望したいです。自動計測したBPM情報をアウトしてほしい(^ ^)

・MIDI

MIDI信号の入出力機能がついてます。詳しいことはマニュアルを見るまでわかりませんが、外部のキーボードの操作やシーケンサーからの信号を入力させて、自動でエフェクターをコントロールすることができますね。また出力を使ってKPE自体をなんらかのコントローラとして利用することもできるでしょう。この辺のアイデアはMIDI仕様が明確になれば色んな応用方法が期待できると思われます(^ ^)

・その他

とりあえず書き漏らしたポイントとして、トグルっぽいバーでさくっと画面をフリーズさせたりできます。エフェクトコントロールと共に、VJプレイ的にチャカチャカ操作することを考えた感じのバーですね。プレイ(演奏)に使う、ということをちゃんと意識して作られたコンソールになってます。
またパッドの動きなどのアナログな指の動きまで覚えて、繰り返し自動操作してくれる機能も、プレイ途中で気軽に利用できて使い勝手はバツグンですね。
外観的な意味合では大きさも手頃で、見た目もパッドに触ったイルミがきれいでグッドです。

・ 感想とまとめ

とりあえずVJ「プレイ」を意識して作って頂けているとこが、個人的に非常に気に入りました(^ ^)。ミキサーを持ってない人は、入力信号が2系統でフェードできない点などを気にするかもしれませんが、映像の切替に関してはやはりミキサーやPCにまかしたほうがいいと思いますね。KPEには万能ステーションのような進化はあまり望みません(^ ^)。単体のエフェクトモデュールとして機材構成の遊撃手的な存在としての進化に期待しちゃいます。ぼくはKPEのようなエフェクトモデュールは、とにかく信号の間にカマすだけでこれだけのことができる、というシンプルなギアであることが大切だ、と思うのです。ほんで色んな種類を出してほしいな。今日はどれを持っていこうかなあ、とか考えるの楽しそうじゃないですか(^ ^)

ホメすぎてもなんなので、それなりに気になったポイントを(笑)。3D化して画面が張り付くような一部のエフェクトに関しては解像度がアラメです。定価を10万以内におさめるのとパフォーマンスを追求した結論のようですが、まあこれはこれで味と思うこともできます・・・が、しかし事実荒いのは間違いないんで可能なら高解像化は望みますね。 それから入/出力信号の種類がSとNTSCのみというはどうですか皆さん?ぼく個人の機材構成的には今のところこれで充分ですが、RGBやその他の入出力が欲しい方は少なからずいそうな気もちょっとします。あ、スキャコン代わり的な意味合いではないですよ。このカオスパッドを組み込む機材構成の位置によっては高画質映像信号を扱ってる(D4とかRGBとか)方はボトルネックになる可能性も・・とちょっと思いました。
後、これは各利用ユーザで考えなければならない点ですが、KPEをどのように使うか、という点では結構悩んでしまうかもしれません。音楽と映像を同時に扱っちゃうようなパフォーマンススタイルの人とか、アート系のインスタレーションをメインにやってる人にはベストなギアですが、DJ,VJとブースが分れている通常のクラブプレイで利用する場合は「どこにおくか」をちょっと考える必要がありますね。とりあえず映像エフェクターとしてのみ使う場合は全く問題ないです。ただせっかくなのでやはりサウンドエフェクトとシンクロさせたい・・・。となると、KPEを操作するのはDJ,VJどちらにすべきか、という点が浮上してきます(笑)。VJ側がDJさんの意図しない個所でサウンドエフェクトをかけちゃうのはまずいし、かといってDJブースにKPEをおいて、DJさんに好きに使ってもらうと今度は逆にエフェクトを掛けたくない映像を出してるときまでエフェクトがかかってしまうケースも出るでしょう。その辺は各ユーザさんが色んなアイデアを出してくるとは思うのですが、個人的にちょっと思ったのは映像/音声エフェクトの適用を個別にオンオフできるレベルのリモコン(有線・無線問わず)とかあったらよくないかな?とか思いました。ぜひKPEの現場利用に関しては、購入されたユーザから情報集めたいです。(よろしくね!^ ^)

最後になりましたが、これまでミキサーフェーダー、PCキーボード、マウスであたりでプレイすることが殆どだったVJインターフェースに、面白い要素を持ち込んでくれたKPEはかなりオススメです。なでる、なぞる、たたく、こする、といったプレイ手法はなかなかこれまでにないものでした(^ ^)。最近はV−4、そしてこのKPEと「映像でパフォーマンス」することに主点を置いた、VJにとって非常にありがたいハードウエアが出てきだしてます。この火を消してはいけません。みんなで購入して使い倒してどんどん新製品をだしてもらいましょう!(笑)