闇に包まれた豪邸。
その庭先に1人の女性の姿が見える…そう、ユリ…に縁のある、様々な運命に翻弄されてきた女性…。
今はただ、愛する男と娘に支えられて生きていた。

その女性の下に古び、劣化した蒼い封筒が届いた――――
手元に納められた自分宛の手紙―――そう、文字を見ただけでもわかる。
たどたどしい文字、育ち故に文字を教わらなかった――――いつか、少女はそう話したことがあっただろうか?
懐かしい文字に感情が奮い上がる、その白い手がようやく動き封筒を裏返せば小さく濃紺のインクで送り主の名前が書かれてあった ―――イムと。
幾世の時が経ち目覚めた女性、それ故に生きているはずもない少女を思い、微か滲む涙。
隣ではその様子が珍しいのか、母親譲りの長い黒髪を揺らして女の子が首をかしげている。

ようやく開かれた封筒。
中からは封筒とお揃いの蒼い便箋が出てくる―――と同時に香るのは幾世を越えて残る少女の最後の残り香。
文面には例に拠らず争いによって国を失った後の少女の事、少女が知る事もなくいつの間にか深い眠りに入った女性に対しての憤り、 ―――また、争いによって引き裂かれ出会うことができなくなった友人、 兄の存在という穴を埋めることができない寂しさなどが取り留めなく書かれていた。
読み終えた女性はふと立ち上がると封筒と便箋を手に歩き出す。
傍にいていた女の子は取りとめもなくただどこへいくの?と声をかける。
―――少し庭先に…。
そういって女性は暖炉の前の揺り椅子から立ち上がりドレスの裾を引いて歩いていった。



ふぅーん。とただ見送った女の子、そのさらに隣に座っている猫を相手に遊び出してすぐぴくっと身体を動かした。
傍にいた子猫が――久しぶりにお帰りになられたようですね。
特に興味がないといった風情で女の子はただそうね。と答えた。
帰ってきた主、父がそうちょうど母が訪れるといった庭から感じられたから、彼女なりに気を利かしたらしい。




外に踏み出した女性は特に目的もなく庭を歩いた。
寒さは普通に感じるが凍えるほどでもない、主の魔力が効いているからだろう。
しかし、外部の寒さを伝えるように庭にもハラハラと雪舞い降りていた―――そう、女性の涙の代わりを果たそうとでも言うかのように。
今、思えば今日はクリスマスだった。
地界でも雪が降っているというのならホワイトクリスマスと、恋人達が喜んでいるのだろうか…
そんなことを魔界で思い馳す事ができるのはひとえに彼女が元人間だったからだろう。


―――魔界からでも赤い服の老人は願いをかなえてくれるだろうか…例え遥か昔の事でも少しは干渉してくれるだろうか…


ふと、そんな考えが女性の中に生まれた――――――その瞬間、脳に直接響くような甘い声が答えた。




その願い、私が叶えて差し上げましょう――我が姫?




そういって、現れたのは女性の夫にして屋敷の主。
女性は恭しくその場で頭を下げた…お久しぶりです、ご機嫌麗しく…ふわり、と上げた瞬間視界に入るのは何度見ようとも見飽きる事 のない愛しい男性―――と、白い大きな袋。
本当にサンタクロースになったとでも言うのだろうか、少し驚いたように瞬きをする女性。
その様子を見た男性はクスクスと笑みを浮かべて再び同じ言葉を繰り返す。




―――ですから。私が貴女のその願い、叶えて差し上げると言っているのですよ……。




男の言葉と同時に解かれる白い袋、何か魔法の力でも働いているのだろう。
女性の瞳が驚きに見開かれる。
魔法で解かれるのが珍しいわけではもちろん魔の血を流す女性である限りはありえない。
――――そう、驚きの原因はその中身――――……。



中から現れたのは、ここに居るはずの無い人間、この時代に生きているはずのない――――少女だった。





少女はその瞳にうっすら涙を浮かべて微笑んで――――お久しぶりです…お元気でした?
ただ、そう、いつものように挨拶をしてきた。
その昔と変わらずいつものように…。

驚きのあまり固まっている女性、ただただ少女の語る言葉だけを聴いていた、―――コレが本当に現実なのだろうかと。
少女は女性のその様子にクスクスと笑顔を浮かべながらその手紙のように取りとめもなく語った。
隣に佇む館の主がいきなり目の前に現れて自分の願いを訪ねてきた事、クリスマスカラーですよ?と緑のドレス、 そしてプレゼントですからと言って赤いリボンをつけた事などただ、その昔の日常そのままだった。

ハラリ――女性の持つ手紙が手から滑り落ちて宙を舞う。
その瞬間ようやく時が動き出したかのように女性は動いた。

そう、遥か昔、とある国でそうしたようにただ無邪気に微笑み語りあった。



――――――――――その詳細はもちろん3人のみぞ知る話である。















―――――あとがき―――――
はぁ〜初めて最初から最後まで、短編であっても小説というものを書きました(爆)
文章能力がないものでつたないもので申し訳なく、また、グリーティングカードを頂いてからマッハで頑張ったものですからたぶん 誤字雑事も多いかもしれませんが…
それは、まぁ、そのご愛嬌ということでvv(滅)
本当は絵を描いているうちに裏ネタを色々思い浮かんでひそませてたんですけどねぇ…
書ききれませんでした&描ききれませんでした(^^;

B様が来たのはイムの魂の灯火が消える直前、お婆さんになったイムの願いを誕生日とクリスマスプレゼントと称して叶えに来た とかもぅその他諸々っ(><。
筆者が未熟だと娘も哀れですね(−−;

でも、本当に体験しました。
人様のキャラを動かす事の難しさっ!
もぅ貴方達喋らないでーーーー(><。っと発狂しかけてました(笑)
違うキャラになっちゃうから…orz
だからこぅ語り部口調なんです、ハイ。

ま、少しでも楽しんでいただければ幸いです♪

ではイブは過ぎてしまいましたけれど残り1日クリスマスが菫青様にとって良い日となりますことを願いまして、閉めの挨拶とさせていただきます。
                                            




●『突っ走り小屋』のイムPL様から、頂いてしまいました、頂いてしまいましたよ皆様っ!(落ち着け)
こんな素晴らしい小説を!! 本当にありがとうございます(深々)
迷い無く、今年最高のクリスマスプレゼントでございましたw