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「華やかに傷ついて」 何もかもが豪奢で広すぎる部屋、琥珀色の光、冷えたシャンパンと薔薇の花束。 視界の殆どを埋め尽くしているのではないかと云うぐらいの大きなガラス窓には 指紋などの汚れは見当たらない。 ホテルのスイートのような一室。私は、その窓に近づき、星が降りたような街を見 下ろす。金曜の夜はどこか華やかで、窓ガラスの先に見える摩天の森が夜毎の 狂想曲みたいだと思う。 ふと、そんなことを考えていたら、お気に召しましたかと耳元に甘く囁く声があり、 私は驚くように振りかえった。相変わらず気配が感じ取れない相手に、私は急い で笑みを作ると答える。 「ええ、とても素敵。羨ましい、この景色を毎夜一人占めなされてるなんて」 私以外にもこの部屋に入り、同じ景色を見た女性(ひと)はどのぐらいいるのか。 そして、同じように囁きを掛けるのだうろか…。 視線の先にいる人は、相変わらず穏やかな微笑みを浮かべたまま、シャンパンを 口にしていたりする。 「ここ最近、会議続きだったのでしょう?お疲れだったのではありませんか?」 厭な考えを振りきるように話題を変えるが、私の考えを見ぬいていたのか、それと も繕うように紡いだ言葉に呆れているのか、溜息をつきながらも私の身体を引き 寄せて抱きしめた。 月のように冷たい瞳、人を油断させる柔らかい笑み。 揺れる唇が華麗なまでに今宵も恋を引き寄せてる。 貴方の気の無い口付けも、紡がれる言葉もウソ。何処までも演じている貴方。 私に触れる仕草も、全て偽りなんだろう…けれど ―― 愛しています、貴方だけを ―― 不意に心の中の声が囁いた。もしかしたら、実際に声に出したかもしれない。 私の頬に触れる指が好き。その、嘘吐きな唇のキスが好き。 毎夜、破れ欠けのタロット投げて、貴方の恋の行方探しているような、そんな 恋の矢の痛みに絶えなければならない恋だけど、終わらせる事など出来なくて 飾れるものならば、飾れるものならば… 『私は、華やかに傷つきたい』 了 |
●『vampire kingdom 』のダグラス様より、キリ番で頂きました。
後書きもそのまま持ってきてしまったのですが、宜しかったでしょうか?(汗)
どこから切り離していいのか、解らなかったものですから…。
ダグラス様も書いていらっしゃいますが、ダグラス様のPCでいらっしゃるベリアル様と、
私のPCのエルスとを現代風に書いたものだそうです。
私が喜ばない、などと仰っていらっしゃいますが、とんでもございません!(強調)
うちのエルスをこんなに大人っぽく、素敵に書いて下さって本当にありがとうございます。
都会の男女…大人の恋物語ですわ……(うっとり)
私の技術的問題もあり、文字色と壁紙が違います。
本物は『vampire kingdom 』様の方にございますので、ぜひご覧下さいませ(深々)