遠くから
この身に閉じ込められていた、故郷の人たち。
今、ようやく解放されて、無数の燐光が空を舞う。
私はずっと、何も出来なかった。
消えてしまう今になっても。
私が不幸にしてしまった人たちのことも
残されて傷付く人たちのことも
何一つできないままで……。
それなのに。
遠くから、響く声がする。
まだ、ダメよ、と。
まだ消えてはだめ…貴女の役目は終わっていないのだから、と。
初めて、楽器を教えてくれた、年上の巫女。
「竪琴には、毎日触りなさいよ」
盗賊に襲われた娼館の女主人。
「相変わらず、愛想を売るのが下手な子だねぇ」
私が殺してしまった、沢山の人たち。
「お前は、泣いても良かったんだ」
どうして、今まで生き残ったのだろう。こんな私が……
それなのに。
遠くから、響く声がする。
まだ、ダメよ、と。
まだ消えてはだめ…貴女の役目は終わっていないのだから、と。
ああ。
ただ一度きりの、命だから。
思い切って生きよと、私の背中を押す。
●自己完結系の詩が多かったので、
沢山の人たちと関わって生きているのだ、ということを再確認。