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〜Petit Story act2 風は暖かく、ほかほかと気持ちのいい日だった。 子猫が広場まで歩いて行くと、そこのベンチの上に小さな人影を見つけて「みぃ」と啼いた。 「あ、猫さん、こんばんはですよぅ」 その人は、にこにこ笑って手を振ってくれる。 短い茶色の髪を、柔らかく揺らした風の精霊さん。 近づくと、爽やかな風が子猫のひげをくすぐった。 まるで、緑の葉っぱとグレープフルーツのいい香りをまぜたような、とってもいい匂い。 ぽん、とベンチに乗ると小さな黒い頭を「撫でて?」とばかりにその手に摺り寄せる。 「猫さん、今夜は気持ちがいいですねぇ」 「…にゃあ?」 「あ、これですか? 喫茶店のマスターに作って貰ったんです。 甘くて美味しいんですよ?」 彼女は片手で猫を撫でてやりながら、もう片方の手で持った大きなグラスの中身を、チュウ、と吸い上げた。 黒っぽい液体がガラスのストローを通って、精霊さんのピンク色の唇に吸い込まれていく。 「……みぃ」 「あ、猫さんも飲みたいんですか? でも、これって猫さんが飲んでも大丈夫なのかな…。 え〜と、え〜と。」 彼女はちょっと悩んでいたが、「少し待っていて下さいねぇ〜」と立ち上がった。 子猫は、ゆらゆらとしっぽを揺らし、前足でちょん、とベンチの上に置かれたグラスを突付いた。 冷たい。 ぴと。 もう片方の手も付けてみる。 中に入っている氷がカラン、と鳴った。 見上げると、グラスは子猫の何倍もの大きさで、ちょっとぐらい突付いても倒れそうになかった。 良かった。 ひんやりしてとっても気持ちいいの。 「お待たせですよぅ〜」 子猫はうっとりとグラスに寄り添っていたが、精霊さんが、お皿に入れた猫用のミルクを持って来てくれたので、「みゅ」と啼いた。 くりくりと撫でて貰ってから、甘いミルクを貰う。 「ちょっとだけココアを入れて貰ったんですよぅ」 精霊さんは、にこにこしている。 ……大好き。 to be continued? |