六道骸は変態だ。
 もう、どうしようもない部類に入っているんじゃないのかとオレは思っている。できれば近づきたくないけど、向こうから近づいてくるからオレはただ自分に被害がこないように逃げるしかない。でも、逃げても嬉々として追いかけてくるからほんと、どうしようもない。お手上げだ。
 整った顔や人のよさそうな雰囲気にだまされて見逃されているかもしれないけど、本性を知ったらみんな逃げ出してしまうに違いない。

「っぐぅ……! ば、っかやろっう!! へんた、ぃぃい……!?」

 何が悲しくて同じ男に後ろからのしかかられて腰を振られなければならないのか。オレは極々普通な人間だから、相手にするなら女の子のほうがいいに決まってる。痛いのとか嫌いだから本当に勘弁してほしい。
 オレはこの破廉恥な行為を断固拒否した。頼むから変態行為はオレの目の届かないところで、オレを巻き込まずにやってくれと怒った。そりゃもう小言弾なしに自力でハイパーモード(自分で言うのもなんだか恥ずかしいな!)になるくらいには嫌だった。
 殴ったら蹴られて、ぶっ飛ばしたら殴り返されるってどこの青春野郎だよ。勘弁してくれよ。オレはそんな暑苦しい青春とか真っ平だよ。ヤだよ。

「その変態に好きにされている感想をぜひ聞きたいですね」  

 捻り上げられた右肘が軋んだ音を立てて思わず呻いた。壁に押さえられて、後ろから囁かれる。というか直接耳齧りながら言うのやめろって。気持ち悪い!
 無理な体勢でがつがつと腰を振られる身にもなってみろと声を大にして言いたい。息は上がるし腕は痛いし下半身なんか悲惨なことになってるし、男としてのプライドとかズタズタになるわで、涙が。もう泣いていいですか。

「君のその声を聞いているだけで興奮します、ね……っ!く、ふふ」
「ぅあっ!……あ、あ、ぁっ」

 不本意に勃ちあがったものに指を絡められ扱かれる。竿を擦られ、先端をぐちぐちと弄られる。先端に爪を立てられ痛みに息を詰め、びくびくと背中が反り返る。ぐずぐずに溶かされそうな気持ちよさに体が震えた。生理現象って厄介だな。中のものを意識せず締めつけてしまって、骸が呻く。
 色濃い性のにおいがオレの思考をおかしくさせる。かすれたような吐息が耳元で聞こえていて、オレは目を瞑った。

「っ?! ひ、ぃあっ! っや、め!」
「イイ……でしょう? 君、すごく気持ちよさそうだ」

 ぐりっと抉られた場所が気持ちよすぎて意識が飛んでしまう。ぎゅうぎゅうに締めつける感触がいいのか、骸はくすくす笑ってそこばかりを狙ってくる。意地の悪い奴だ。そいつにいいようにされて気持ちよくなってる自分も最悪だ。

「あっ…も、で、るっ……ってぇ!」

 はあはあ胸で呼吸する。意識はもう真っ白で、骸の呼吸や微かにわかる香水の匂いとか、力強い律動にすべて支配される。もう出したくてしょうがなくなって、オレはこんな目に合わせた元凶に縋るしかない。
 捻り上げられていた右腕を解放される。痛みがなくなったことにほっと力を抜いた瞬間。

「ぁあああっ!!!!」
「ぐっ……!」

 一度性器を抜いた骸に体を反転され、大きく勃起したそれを一気に突き入れられた。あまりの衝撃に目を見開くと、眉をしかめながら口元を歪めている骸と目が合った。普段は涼しい顔をしているくせに、汗をかき、綺麗に分けられた前髪が額に張り付いている。
 お前、無駄に色気を振りまくのはやめてくれ。相手は美人で可愛い女の人じゃなく、オレなんだぞ。
 うっとりと酔ったような瞳で見下ろされて、オレはその目から逃げるように目を閉じた。こどものように嫌なものから目をそらす。見えなければ現実じゃないってわけじゃないのに。
 満足したように骸が低く掠れた声で囁いた。

「かわいいなあ……綱吉。やっぱり君、僕のものになるべきです、よ!」
「じょう、だんだろぉっ! っ、ひ、いぁっ!!!」

 片足を持ち上げられ、さらに深いところまで潜り込まれる。かはっと息を吐いて仰け反ったところを唇に塞がれた。乱暴にオレの口の中を好き勝手に荒らし回られてうまく呼吸が出来ない。
 仕方なく鼻で息をすれば、鼻から抜ける音が変に高くて耳を塞いでしまいたくなる。イきたいのに根元をきつく押さえつけられていて、開放できない熱に体が暴走する。ふらふらと揺れるつま先が頼りない。
 スキンをつけていない骸がこのまま出してしまえば後々悲惨なことになるのは分かっている。でも、もう体は限界で。

「む、くろ……むくろぉ! もう、放し、て、くれ……」  

 息も絶え絶えで、正気のオレだったら絶対にありえないことを骸に言ってしまった。だってしょうがない。男はそういう生き物で、出すまで止まれないんだから。

「もう我慢が出来ないんですか? 仕方ない人ですねえ」

 なんとでも言え。そもそもこうなったのはお前が原因だろ!と言ってやりたい。
 くっ、と嘲笑する骸を睨むと、中にいる骸がぐん、と大きくなる。やっぱりこいつ、変態だ。

「はっ、ぁ、あぅうん!!……ひぃ!」  

 ずじゅっ、ぐじゅうっ!!と激しい音を立てて揺すり立てられる。目の前に火花が散るような快感に、羞恥とかプライドとか考えることも出来ない。
 目元を染めて快感に耐える骸を視界に映しながら、オレは骸に促されるままイってしまった。  
 解放の余韻にびくびくと震えていると、腹の中にあたたかいものがじわっと広がった。こいつ、当たり前のように中で出しやがった。ぞわりとした感触に背筋が震え、まだ吐き出しているそれをきゅうっと締めつけてしまう。自分の体がオレの心を裏切って、嬉しそうに骸に絡み付いている。
 はあっ、とオレの肩に顔を伏せて荒い息を整えている骸が、なんだか普通の青年に見えてしまう。ついにオレも頭がイカれてしまったのか?
 お互い服を着たままだったので、オレの出したものが骸の腹のあたりにかかってしまって酷い事になっている。黒い服を着ているから尚更はっきりわかってしまう。どんな羞恥プレイだ。

「うっ、はぁ……早く抜けっ、て」
「イヤです」
「はあっ?! っ!」
「こんなに気持ちいいのに一回で治まるわけないでしょう? それに君も」

 一回出したはずなのに硬度を保ったままのそれが、ゆるゆると抜き差しされる。すべてを吐き出して、ぬるついているそこを楽しむように。イったばかりだから敏感になってるのに、そんなことされたら。

「まだまだ大丈夫そうですね」

 にやりと悪辣に笑ってオレのものをじろじろ見下ろしているこいつの面を、思いっきりグーでぶん殴りたい。むしろ、浄化したのにこんな変態って、本来の魂がものすごく汚れてるのか?
 そんな奴に関わってしまったことに、今更ながら目の前が真っ暗になる。

「んあっ!! お、まえ! さいあくっ、だ!!」
「褒め言葉として受け取っておきますよ」

 クフフフといつものように笑って口づけてくるこいつが、なんだかんだと言ってそんなに嫌いじゃない自分がすごく、イヤだ。





end.
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2007,6,26 Write By Mokuren