ただひたすらに
己の胸のうちを
彼方よりいでし星屑の
薄明かりにでも曝してしまうことができたなら
この世の遥か果てにある万物の終わりを願うことなどありませんのに
意気地のない脆弱な半身をただ持て余す日々をどうして愛しいものとして
愛でることなどできましょうか
育まれることのついぞなかった溢るる良心に手を伸ばさずとも
君のその優しさに満ちた眼差し一つで
この命など差し出しますのに
「愛してるから、駄目なんだ。僕じゃナナミを救えない」
いつもはあまり表情も変えずに淡々としているリオウが、切なさに握り締めた拳の震え。
伏せた瞳から真珠のような涙が一つだけこぼれた。ティルはリオウの告白に何もいえなかった。何の明かりも点けずにいた部屋の中で星明りが罪苦に戦慄く少年を唯一照らしていた。
窓際で一人で立ち尽くす少年の肩をそっと引き寄せる。リオウは何も言わずにティルの肩に金環の外した額を置いた。
「分かってる。こんなのはいけない。僕たちは姉弟だから、ナナミがあいつと一緒にいることに嫉妬しているほうがおかしい」
「そんなことはない。君はただ一人の肉親を誰かに取られるのが嫌なだけ。それはごく自然の感情だ」
「違う。僕がナナミに向けるのはそんなやさしい感情じゃなくて、もっとどろどろと熱くて暗いものだ」
淡々と紡がれる言葉は内面を曝し出すのを恐れているのか。無理に押さえつけた感情がいつ氾濫するかも分からない。
「僕の想いを知らないで無邪気に微笑むナナミを傷つけたいのに、笑っていてほしい。泣いてる顔なんて見たくないのに僕以外に笑ってほしくない」
手を繋いでも抱き合っても決して自分を愛してはくれない。
家族のような情ではなく、恋人として、一人の男としての愛が欲しかった。
「こんなに傍にいるのに遠い。手を掴めない。嫌われるのが怖いんだ」
何万もの兵士を導いている英雄の面影はそこにはなく、結ばれない愛を嘆く少年がぽつんと立っている。
ティルは胸に宿った黒い炎を悟られないようにリオウの頭を抱き寄せる。柔らかな髪は思ったとおり手触りが良くて、何時間でもずっと撫でていたいくらいだった。
力の抜けたように差し出された肉体を抱きしめてあまい香りに心を酔わせる。
「君はどうしたいんだ?」
この少年を残酷に切り裂けるだけの言葉を吐くのは容易い。
「わからない。僕はどうすればいいんだ・・・・・・」
今ここで、自分の想いを口にすれば彼は僕に縋るだろうか?
報われない愛を星降る夜にどうか灯して
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