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≪ルーンファクトリー3 感想文≫

 注:ルーンファクトリー3(ニンテンドーDS用ゲームソフト/マーベラスエンターテイメント/2009年発売)

 前作までが「面白いけれどバグだらけでまともに遊べない」と評価されているうえ、今作はパッケージイラストがパッとしないという非常に買いにくいゲームソフト、それが今回ご紹介する「ルーンファクトリー3」です。
 このゲームは「牧場物語シリーズ」から生まれた新シリーズであり、ファンタジー世界で生活することを楽しもうという内容です。ジャンル名はそのまんま、「ファンタジー生活ゲーム」となっています。

 基本はアクションゲームであり、モンスターとの戦闘を避けて通ることはできませんが、システム、バランスともに良好なうえ、レベルアップや装備品の購入などで主人公をどんどん強化することができますので、アクションが苦手な人でも無理しなければ問題なく対応できるはずです。そもそもこの作品は攻略することを楽しむ戦闘アクションゲームではなく、生活することを楽しむ生活ゲームなのですから、誰もが快適に遊べることを重視して作られたのだと思われます。

 そういうわけでこのゲーム、とにかく快適です。ファンタジー世界ということもあって初めから非常に便利なワープ魔法が使えますし、町の人がどこにいるかはマップにアイコンで表示されるため、すぐに分かります。アクションゲームとしては攻略よりも爽快さを楽しむタイプのものですが、武器や魔法などが豊富に用意されているため、自由度の高さもかなりのものです。やさしめのバランスに物足りなさを感じる人のために、ハードモードまで用意されています。
 非常に快適であること。アクションゲームとして楽しく遊べること。これらはこの作品の魅力の1つだと思います。

 でもこの作品の魅力はそれだけではありません。
 登場人物の多くが変人・・・もとい個性的で、でもとても魅力的で、だからこそこのゲーム世界で暮らすことがとても楽しく、また心地良いのです。演出も素晴らしく、人とすれ違った時には音声であいさつしてくれますし、会話の時にはセリフとは異なるちょっとした言葉を音声で言ってくれるのですが、これはフルボイスよりもずっと良いアイデアだと思えます。さらに日常会話が充実しているうえ、セリフが非常にはじけているため、人との会話がとても楽しいのです。しかも町の人が本当に生活しているかのように行動するため、毎日町を散歩しているだけでもしばらく楽しめるほどなのです。
 そんな魅力的な町の人たちですが、ただの登場人物ではありません。仲の良い友達と、あるいは密かに思いを寄せる人と、一緒に冒険することだってできるのです。しかも1人1人きちんと作りこまれており、戦い方がみんな異なるという凝りようです。

 魅力はまだまだあります。牧場物語から生まれたゲームだけあって、作物を育てたりモンスターを飼育したりすることができます。過去の牧場物語では面倒だった動物の飼育ですが、この作品では上手に簡素化されており、プレイヤーを苦しめることはありません。モンスターから信頼されるようになれば、向こうから近づいて来てくれるためとても可愛いです。
 道具や薬、料理を作って使用したりプレゼントしたりすることもできますが、これらも分かりやすく遊びやすく作られています。それでも面倒に感じる人は、ほとんどしなくても問題ありません。

 このように様々な魅力が存在するこの作品ですが、最大の魅力は生活ゲームとしての完成度の高さだと思います。ここまで書いてきたように1つ1つの要素がきちんと丁寧に作られているだけでなく、ゲーム全体の構成が素晴らしいため、自分のペースで自由に楽しく生活することができるのです。
 欠点が無いわけではありませんが、他のゲームと比べたら些細なもの。問題となるのはちょっとしたバグがいくつかあるため、極めたい場合は事前に攻略サイトのバグ情報ページを見ておいた方が良いことと、属性攻撃を吸収する敵の存在がパートナーの使い勝手に差を作ってしまっていることくらいでしょうか。それ以外の欠点は、プレイヤーの考え方次第で充分に目をつぶれると思われます。
 ただ男性(少年?)を主人公とした恋愛要素のあるゲームであるため、さらに言えば登場人物に占める同世代の女性の割合が異様に高いため、どちらかと言えば男性向け、オタク向けであることは否定できません。このゲームを傑作だと感じるのは、そういった人が中心でしょう。だからといって、そうでない人が楽しめないゲームだとは思いません。生活ゲームとしての出来が非常に素晴らしいのですから、むしろ純粋にゲーム世界での日常生活を楽しもうとした方が良いのではないかとさえ思います。例えば私は(イラストが子供っぽい)このゲームの女性キャラクターに、異性としての魅力をあまり感じることができませんでした。そのため恋愛要素を楽しめたわけではありません。それでも私はこのゲームの登場人物が大好きになり、彼らと暮らしていた日々は、とても充実していたのです。

 なおこのゲーム、長くプレイしているとトロフィールームという場所に、次の文章が刻まれます(些細なことですがネタばれのため白字で記載。気にしない方のみ反転させてお読みください)。

 振り返ってみれば、あんな事やこんな事。そのどれもがいい思い出でありますように。

 何の変哲もないこの文章。低レベルな仕事をしている開発者に言われたら逆に腹が立つであろうこの文章。でも素晴らしい作品に仕上がっているからこそ、この文章を自分の目で見る時にはそれまでの充実した日々が蘇えり、温かい気持ちになれるのではないかと思います。
 ゲームとは人生において必要なものではありません。遊んでいる時は夢中になっていても、あとで振り返ってみると時間を無駄にしていたと感じることが大半でしょう。でも私にとってこのゲームは、そうはならないという確信があります。
 このゲームは純粋な娯楽作品であり、プレイしたところで何かが得られるわけではありません。でもその楽しさゆえに、充実していたと自信を持って言えるがゆえに、ただそれだけで私はこの作品に出会えて良かったと思えるのです。これぞゲーム、これぞ娯楽であると思います。

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