オレンジ




焚き火のそばに干していた自分の衣服は、殆ど乾いていた。

微かに湿っている部分もあったが、怪我人を待たせているので気にせず急いで服を着て、

こちらに背を向けて立っている赤いパイロットスーツの少年に声をかけた。

「服、着たぞ。手当てするからこっちへ来い」

少年はゆっくりとした動作で振り向いて、こちらに向かって歩いてくる。

何だか赤い顔をしているように見えるのは、きっと焚き火のせいなのだろう。



先程まで自分が座っていた場所に、救急用具が入ったバッグを持って移動する。

焚き火のそばで明るく暖かいので、手当てもはかどるだろう。

少年の方もこちらに向かって歩きながら、パイロットスーツのファスナーを下ろして

上を腰の辺りで垂らし、中に着ていたシャツを脱ぐ。



自分が想像していたよりたくましい上半身がオレンジ色に染まる。

細っこいと思ってたのに、意外とがっしりしている。

彼には二回も乗っかられたけど、確かに力強くて、 カガリが必死でもがいてもビクともしなかった。

男だと言ってしまえばそれまでだが、見た目は自分と同じ、 いや、カガリよりみ細そうに見えるのに。

もしかしたら体のラインにぴったりと沿ったパイロットスーツのせいかもしれない。

今度自分がスカイグラスパーに乗る時はパイロットスーツも借りようか。

その方が格好つくし…今度頼んでみよう、とカガリが決意したその時だった。



「…もう自分でやるから、それ、貸せ」

ハッと我に返ると、目の前にいる声の主が呆れた眼差しをこちらに向けながら

カガリの持っているパックに手を伸ばしていた。

少し顔が赤いのは気のせいだろうか。

──そういえば、思いっきり裸の上半身を凝視してたような…

自分の顔に熱がのぼるのを感じながら、カガリは照れ隠しのように大声で叫んだ。

「だっ、ダメダメ!私がやるっていったろ!」

カガリはパックを胸に抱きかかえ、少年に背を向けさらに叫んだ。

「そっ、そこに座って!」

そう言いながらカガリはしゃがんでバッグの中をごそごそ探った。

そうすると、後ろで人の動く気配がした。

おそらく言われた通り座ったのだろう。

カガリも早く手当ての準備をとバッグの中をさらに探って、必要なものを取り出そうとした。



「…そんな暗い所で何が入ってるのか分かるのか…?」

「えっ!」

気がつけばカガリは思いっきり焚き火に背を向けてバッグを探っていた。

少年は笑いをかみ殺したような息を漏らした。

「こっち向けば?」

少し震えた声で言われ、先ほどより顔が熱いのを感じながら、

確かにこの暗さでは、見つかる物も見つからないと痛感する。

カガリは渋々、体を少年の方でなく焚き火の方に向け、再びバッグを漁ると、

あっさりと目的のモノが見つかった。

最初からこの向きで探せばよかった…カガリは舌打ちを漏らしそうになった。

そうすれば、顔が赤いのも焚き火のせいに出来たのに…



胡坐をかいた少年の正面に正座をして、止血パッドを患部にあてようとしたその時だった。

「まずその止血パッドを…」

「わかってるよ!こう見えてもうまいんだぞ、私は」

カガリはいちいち説明しようとする少年を上目遣いに睨んで黙らせた。

「そっちの腕、少しの間上げててくれ」

少年は疑わしそうな顔をしながらも、おとなしくそれに従って腕を肩の高さまで持ち上げた。

カガリは満足そうに小さく頷いて、また患部に目を戻す。

確かにかすり傷だが、自分がつけた傷だと思うとやはり痛々しい。

早くその傷を隠したくて、素早く止血パッドを貼り、予め用意してあった包帯を手にした。

そして慣れた手つきで少年の体に包帯を巻いていく。



腕を背中にまわす度、先ほどじっと見た裸の胸が間近になる。ほのかに彼の汗のにおいがした。

こういう手当ても汗や埃や薬のにおいも、砂漠では日常茶飯事だった。

ついこの間砂漠を後にしたばかりなのに、もう遥か昔の事の様に思える。

それが何故か今、敵であるザフト兵の手当てなんてする事になるとは、 あの頃には思いもしなかった──

カガリはハッと我に返り、動きの止まった腕を再び動かし始めた。

少し砂漠にいた頃にトリップしていたようだ。

少年の背中に手をまわしたままの状態で、 包帯と裸の胸の境目あたりをじっと見つめていたのだ。

急に動きを止めてじっとしてしまったので、きっと怪訝な顔をされているのだろうな、

と思い、再び手を動かしながら話かけてみた。

「腕、ずっと上げてて疲れないか?」

すると頭の上から少し上擦った声がした。

「え、あ、ああ。大丈夫だ」

「そうだよな、コーディネーターだしな…これ位で疲れたりしないよな。 でももうすぐ終わるからな」

そう明るく言って今度こそカガリは手当てに集中した。



「よし。できたぞ」

満足げにつふやいて顔を上げて少年を見ると、

何だか真剣な顔でこちらを見下ろす瞳とぶつかった。

深く澄んだ緑の瞳の中にオレンジの光が混ざって、その中に自分が映っている──

思わず見とれていた自分に気付き、カガリは反射的に目を逸らした。

「もう腕、下ろしてもいいぞ」

ぶっきらぼうに言ってバッグに手を伸ばし、それを手渡すと、 少年は感心したように呟いた。

「手慣れてるな。本当にうまいとは思わなかった」

受け取ったバッグを脇に置き、パイロットスーツを着込み始めた。

「だから言っただろう、『うまい』って」

少し得意げに言いながらカガリは、毛布を拾って場所を移動し腰をおろした。

少年はパイロットスーツの襟元を少しあけた状態で着替え終えていた。

そして何か言いたそうな顔でこちらを見ていたが、結局何も言わずに焚き火に薪を放った。



「もう寝込みを襲ったりしないから安心して寝ていいぞ」

そう言ってやると、少年は一瞬驚いた顔をこちらに向けたが 小さく息を吐くと焚き火に視線を戻した。

「…もう目が冴えた」

焚き火からパチッと弾ける音がすると、少年はからかうような微笑を浮かべてこう言った。

「お前こそ眠っていいぞ。俺は最初から寝込みを襲うつもりもないしな」

カガリはその言葉を聞いてムッとした表情を隠しもせず言う。

「悪かったな!──もともと私は眠くない!だいたいこんな状況でおちおち寝てられるか!」

「そうか?」

「…お前は寝てたけどな」

そうニヤリと笑って言ってやると、少年は口元に浮かべていた笑みをおさめて

こちらに向けていた視線を逸らした。

カガリは“してやったり”とニヤニヤしながら考えた。

どう足掻いてもここからは抜け出す事は出来ないだろう。

少なくとも夜が明けるまではコイツとここに居るしかない。

私も寝るつもりはないが、ただ黙ってじっとしてるのは性に合わない。

このまま退屈に時を過ごすより──



「お前、ナチュラルの友達とかっていないのか?」

「え…」

少年は目と口を丸くして、こちらを見た。

『何でそんな事聞くんだ』そう言いたそうな少年にカガリは口を尖らせた。

「どうせ寝ないんだろ?だったら少し話に付き合ってくれてもいいだろう?」

何も答えない少年の態度を了承と取って、カガリは話を続けた。

「プラントにはナチュラルって住んでないのか?全く?」

重ねてそう聞くと、少し気を取り直したのか少年は表情を整えて言った。

「──ナチュラルの友人は、いないな。プラントでナチュラルを見かける事も殆どないし」

「ふーん…」

プラントにしても地球にしてもそういう排他的な所がどうしても気に食わない。

自分の顔がむっつりしていくのがわかる。

それに気付いてか、少し考えて少年がゆっくり口をひらく。

「──でも…俺が月にいた頃、ナチュラルの知り合いは、いたよ」

「ふうん…お前、月にいたのか…で、知り合いなのか?『友達』じゃなく?」

友達になればいいじゃないか、と少し不満に思いながら尋ねると、少年は少し俯いて呟いた。

「…友達の両親だよ」

こちらからは少年の表情は見えない。

ナチュラルの話題自体がいやなのかもしれない。

しかしそんな事を気にしてやる義理はない。

気にせずカガリは話を続けてみる事にした。

ナチュラルの友達はいない、

でも友達、つまりコーディネーターの両親がナチュラルだとするならば、それは…

「お前の友達に一世代目のコーディネーターがいるのか?」

「‥‥そう、だな」

またえらく歯切れの悪い返答だな、と感じながらも、カガリは話を続けた。

「珍しいなぁ…私達の年頃で一世代目なんて…」

そう言って少年の方を見ると、やはり俯いた顔からは全く表情が読み取ることが出来なかった。

この『友達』の話題はまずかったのか…?

でも今は『コーディネーターの友達』より『ナチュラルの両親』の事について聞いてみたい。

だめでもともと、とカガリは更に話を続けた。

「お前はその友達の両親とは親しくしてたのか?」

「…ああ。俺の両親は共働きだったから…しょっちゅうそいつの家へ行って…」

そこまで言って黙ってしまった。

しばらく続きの言葉を待っていたがどうやらこの話題はお気に召さなかったらしい。

小さく息を吐いて最後に、と尋ねてみた。

「…じゃあ、そのナチュラルの人達の事は別に憎んたり嫌ったりはしてないんだな?」

少年は全く顔を上げる様子もなかった。だが──

「…そうだな。いい人達だった」

小さかったが、声が返ってきた。

それを聞いてカガリは少し胸の内が温かくなったような気がした。



「私にはいるぞ。コーディネーターの友達がな!」

ずっと俯いていた少年が無表情に顔をゆっくりあげ、こちらを見た。

「なんだ、泣いてなかったんだな」

と思わず思った事を口に出してしまうと、少年はこちらを睨んできた。

しかし反論はないようなのでカガリは気にせず話を続けた。

「まぁあっちは友達だと思ってくれてるかどうか知らないけどな。多分嫌われてはないと思うぞ!」

少年は顎に手をあてて考え込むような顔をすると、険しい顔でこちらを見て、ゆっくと声を出す。

「…そいつは地球に住んでいるのか?それとも…」

そう問われた時、少年が軍人の顔に戻ったような気がして、あわててカガリは言い返した。

「何だよ、コーディネーターが地球に住んでたら悪いのか?」

努めて何でもないような口調で言った。

「まぁ私も仲良くなったのは最近だからよくは知らないが、今は地球にいるよ、そいつ」

カガリは内心、ドキドキしていた。

いくらリラックスしていたとはいえ、ザフト軍と直接戦っているキラの話はマズかったかもしれない。

「こいつの話はやめ。お前らコーディネーターに『裏切り者』呼ばわりされたらかわいそうだからな」

少年は今の言葉に肩をビクッと動かした。明らかに動揺したようだった。

カガリはそれに気付いたが、キラの事をごまかす事に精一杯だった為、大して気には留めなかった。

「ホントよく泣く奴でいつもメソメソしてるよ。こないだも海見ながら一人で泣いてたんだ。

仕方ないからこう、『よしよし』ってしてやったんだ」

カガリは両腕を前に突き出し、掌を前後にぱたぱたさせてみせた。

「えっ…」

少年はひどく驚いた顔をしてこちらを見た。

何をそんなに驚いているのかよくわからないが、

先程までの鋭い視線が緩んだ気がしたので誤魔化せたのかも、と話を続けることにした。

「その後いろんな話をしてて…そしたらそいつの恋人が顔出してきて…」

「恋人!?」

「何そんな驚いた顔してるんだよ、お前…まぁコーディネーターだけあって 顔の造りはいいからな。

恋人の一人や二人、いてもおかしくないと思うけど?」

少年はそんな事で驚いているわけではないようだ。何でそんなに驚いているかさっぱりわからない。

「後は──そうそう、その恋人はナチュラルだよ」

絶句している少年を見て多少呆れながら、カガリは小さく息を吐いた。

「別にいいじゃないか。仲良いことは良いことだろう?

──もっとも、その恋人と私は決して仲は良くないけどな」

今までフレイに何度となく睨まれたりした事を思い出し、複雑な気持ちになる。

「何でか知らないが嫌われているらしい。まあコーディネーターとナチュラルでも仲良くなれるし

ナチュラル同士でも仲良くできない事もあるって事だろ…」

自分で口に出すと、少し悲しくなった。



少し寒さを感じて、カガリは自分の肩にかけた毛布を引き寄せた。

それを見た少年は、焚き火に薪を投げ込む。

オレンジの光に照らされた少年の横顔を見てカガリは、

ふと先程武器を向け合っていた時の事を思い出した。

その時頭に浮かんだ、あの男の台詞を──

「…友達とは程遠いが、最近知り合ったコーディネーターもいるぞ」

少年は焚き火からこちらに向き直って話を聞く体制になっている。

「ザフト軍が駐留している街に、コーディネーターの友達と一緒に買い物に行った時の事だ…」

風向きが変わったのか、波の音が先程よりも少し大きく聞こえる。

「そこで食事中にいきなりブルーコスモスの連中に襲われた」

少年の瞳は驚きで大きく見開かれた。

「あいつら、ムカつくよな。大嫌いなんだ」

心底ムカムカしながらそう言うと、向かいの少年は驚いた顔から少し俯いて──笑ったようだった。

「その時の友達の活躍ぶりったら!庇ってくれたのはいいが私をソースまみれにした上に、

襲ってきた連中にキック食らわしたり!あと落ちてた銃拾って──

撃たずに敵に投げつけたんだ!そしたらそれが敵の──」

カガリの言葉を遮るようにいきなり少年が大声で笑い出した。

人が話してる最中なのに笑い出すなんて失礼なヤツだな!とか、笑う話じゃないぞ!と

睨みつけながら文句を言ってやろうとするが、それは叶わなかった。

「お前だってさっき銃、放り投げたじゃないか」

少年はそう言ってまた笑った。

その時の事を思い出し、顔が赤くなるのを感じながらカガリはそれを振り払う様に叫んだ。

「う、うるさいな!それとこれとは話が違うだろ!」

「その友達の投げ方よりお前の投げ方の方が問題あると思うが…」

うっ、と言葉に詰まってさらに睨み返すと、幾分笑いをおさめてはいるものの

まだからかうように笑いながらこちらを見ていた。

少々腹は立つが、自分が彼に傷をつけた行為に対して笑いで帳消しにしてくれている様で、

気は少し楽になった。

「…悪かったよ、ホント。反省してる。もうあんな事しないってば。──話、戻すぞ」

「ああ、どうぞ」

大声で笑ったせいか、少年はさっきより穏やかな顔をして話の続きを聞く体勢に入った。

カガリは軽く頷くと、再び話し始めた。



「結局、その場は1人のおっさんに助けてもらったんだけど…

そいつ、そこに駐留してたザフト軍の隊長だったんだ」

案の定、少年は驚いた顔でこちらを見ていたが、目で続きを促してきた。

「私がソースまみれだったのもあって『着替えを用意する』とか 『助けてもらった礼をする』とか言われて…

で、連れて行かれた所が…ザフト軍の駐屯地だったんだ」

「その隊長の名は?」

その問いは無視してカガリは話を続けた。

「私は無理矢理着替えさせられた後、隊長と友達のいる部屋に入って お茶しながらしばらく話をして…

突然銃を向けられた」

自分の質問を無視された事も忘れ、少年はカガリに驚きの表情を向けてきた。

「そいつはよくしゃべる奴でな…いろんな事を言ってきた。

『この戦争の勝ち負けはどうやって決める?』『どこで終わりにすればいい?』

『敵である者をすべて滅ぼして…?』…そう訊かれた」

「ちょっと待て、お前とその友達は軍人じゃないんだろう?

何で民間人に軍人がそんな事問いかけたりする?」

少年は真剣な瞳で見つめてくる。

カガリもも同じ視線で返した。

“虎がキラの事をストライクのパイロットだと見破っていたからだ”

なんて言える筈もなく、カガリは目を伏せてこう答えた。

「…私がナチュラルだからじゃないか?それに私の言動も気にくわなかったんだろう…

実際私はそいつがザフト軍の隊長だと知ってずいぶん文句も言ったしな。

──私がお前と会った時の態度を考えてみろよ」

そう言って目を向けると少年はまだ腑に落ちない顔をしていたが

カガリはそれを無視して多分一番言いたかった事を言った。

「『敵である者をすべて滅ぼして』

お前の銃を奪った時にその言葉が頭に浮かんだ。でも私はお前を撃てなかった…と言うことは…」

2人共身じろぎ一つせずに見つめ合っていた。

遠くで波が規則的に、しかし不定期に音を乱す。

焚き火の中からパチパチッと弾ける音がした。

「…お前もそうじゃないのか?」

それだけ言うとカガリは立てた膝の上で腕を組み、ゆっくり顔を伏せた。

少年の返事はなかった。







アスランはゆっくりとした動作で少女の方を向いていた体を焚き火の方に向け

足元に纏めて置いていた薪を手に取り、火の中へ放った。

薪の数も残り少なくなっていた。



少女を仕留める機会なら何度もあった。それこそ何十回も。

ただ「女だから」「地球軍ではないから」

そう自分に言い訳をして今こうして2人で夜が明けるのを待っている。

「女」だけど銃を持っていたし「地球軍ではない」けれど戦闘機に乗っていた。

そういった人間を生かしている。

しかもお互いはっきり『敵』と認識しているのに‥‥



ふと視線を焚き火から少女の方に向けると、顔を伏せたまま身動き一つしない。

「おい」

声をかけてもやはりピクリともしない。

「寝てるのか」

少女に向けてでもなく独り言のように小さな声で問いかけたが、やはり少女は顔を上げない。

返事の代わりにかすかな寝息が聞こえてくる。

先程の少女の問いかけに答えなかったことを「Yes」ととって安心したのか、

ただ単に疲れて眠ってしまったのか…おそらくその両方だろう。



アスランは再び焚き火に視線を戻して再び考える。

ザフトを敵よばわりした上に武器を持っていた人間を生かしておく── 自分は甘いのかも、とも思う。

キラの事にしてもそうだ。

たった一機のモビルスーツをこんな長い間堕とせないでいる。

いくらその一機のパイロットがコーディネーターであったとしても

軍人でもない相手に、こちらは四機がかりでコーディネーターで正規の軍人だというのに。

──やはり甘いのかもしれない。

キラと再会してからこのことについて考え出すと、いつもこの結論に辿り着き

それを否定するために考える事をやめてしまう。

そして──眠れない。



そして──今は眠っている少女を見る。

アスランは少女の言っていた「友達」が気になっていた。

少女はヘリオポリスが崩壊した時あそこに居た、と言っていた。

そして足つきも──だとしたらこの少女が足つきに乗っていてもおかしくはない──

手当てを受けてから少女が眠りにつくまでの間、何度キラの事を尋ねてみようかと思っただろう。

少女の話に出てきた「コーディネーターの友達」はキラの事じゃないのか? 泣き虫な所はキラそのものだ。

でも少女の話を聞いていると「友達」というのは女の子の様な気もする。

だがザフトに銃を向けられる理由がキラにはある。

しかし銃を向けられる理由はここで眠っている少女にも確かにあるだろう。

コイツならいかにも暴走しそうだしな、と考えて知らずと口許に笑みが浮かぶ。

そんな自分に気付き、その笑みを苦笑に変える。



この少女の「地球軍じゃない」という言葉を信じたとしても、ただの民間人ではないだろう。

手当ての仕方も「意外とうまかった」と言うより「手慣れて」いた。

銃を放り投げたりする所はあるが、それなりに銃器の扱いには慣れてそうだ。



アスランは軽く頭を振って頭の中にある疑問符を追い払った。

そして焚き火に照らされた少女の金髪に目をやる。

最初は地球軍の少年だと思って殺そうとした。

しかし今では女にしか見えない。

言葉遣いはかなり乱暴で、突拍子もない行動ばかりとる奴だが。

先程手当てを受けている間、オレンジに照らされた頭や肩が微かに揺れる様から目が離せなかった。

手当てしやすいように上げていた右手をおろして、何度少女の髪に触れようと思っただろう…

髪だけじゃなく、意外と鍛えられた背中やそれ比べて細い肩にも…

それがどんな感情から来る衝動なのか、本能からなのかも考える事もなく

アスランは浅い眠りについた。









あとがき
…うちのアスラン、むっつりですよね…
そしてカガリ、しゃべりすぎ…こんなベラベラ話すお嬢さんじゃないよな…と思いつつも
この子に話させないと、数行で話が終わっちゃうので…アスランしゃべってくれないし。
今回いろいろ伏線…と呼べるかどうかわかりませんけど、
「ここで交わした会話は43話の話で使うぜ!」とか、この後の話も考えてますんで。
その頃にはアスラン、むっつりじゃなくって…ちょっとエロ親父化してるかも…
次は31話の医務室話です。今回の倍位の長さになると思います…
実はもうほぼ出来上がっているのですが、いつUPしましょうかね…


03.10.29 up
ミオの戯言、感想等はこちら