ハウメア1
アークエンジェルがオーブを発ってからというもの、
カガリの胸の奥にはずっともやもやしたモノがあって、それはずっと消えなかった。
父の言葉に同意し、従って、アークエンジェルと共にオーブを出なかった事は
正しかったとは、思う。
だが自分の個人的な感情のみに従えば、その選択は間違っているような気がしてならない。
きっとこのもやもやは、それなんだろう。
どうも落ち着かなくて、自分が動き回る事ができるオーブの敷地内をウロウロしていた。
M1アストレイのパイロット達ととりとめのない話をしたり、
食堂で会う顔見知りと食事をしたり、
エリカの部屋へ赴き、結果的には仕事の邪魔をしたり。
そしてまだキサカとは顔を合わせてなかった事に気付いたカガリは
キサカの私室でこれからの事についていろいろ話を聞いてもらっていた時の事‥‥
キサカの部屋に通信が入り、彼はモニターの前の椅子に座った。カガリもその後ろに立つ。
モニターの男がカガリの姿を見て、言いにくそうに言葉を発する。
「‥‥アークエンジェルから捜索要請がありました。‥‥スカイグラスパーと‥‥ストライクの」
カガリの胸のもやもやは一瞬で晴れたが、代わりにすべての酸素を奪われたように息が出来なくなる。
そんなカガリをキサカは目の端で一瞬だけ振り返り、再びモニターに向かった。
「オーブはその要請を受けたのだな?」
「‥‥はい。それで‥‥」
「わかった。詳しい話は格納庫で」
そう言ってキサカが通信を切る。
そこから一歩も動けないカガリに、キサカは椅子から立ち上がり声をかける。
「‥‥カガリも行くのだろう?」
その言葉にハッとして咄嗟に言葉を返す。
「勿論だ!」
「‥‥では、準備が整ったら格納庫に‥‥」
「準備なんてない!すぐ出発‥‥」
そう叫びながら、ある事に思い至る。
「‥‥わかった。準備ができ次第すぐ行く」
そう言って自室に向かって走り出した。
このまますぐにでも飛び出してキラを捜したい。
しかし、1つ持って行く物がある事に気付いてしまった。
全速力で通路を駆け抜け、自分の部屋に辿り着く。
自室の部屋のドアを勢いよく開き、ベッドの前で急停止する。
ベッドの上には自分がアークエンジェルに乗り込もうと用意していた荷物がそのまま置いてあった。
そのバッグを勢いよくあけ、内側のポケットから首飾りになっている赤い石を取り出した。
その石を掌の上に乗せ、じっと見つめる。
『キラなら大丈夫』なんて、どうして思ってたんだろう‥‥!
別れの時、どうしてこれを渡しておかなかったんだろう‥‥!
赤い石に開いている小さな穴から紐を通しただけの無骨な首飾り。
それを自分の首にぶら下げ、石を襟首から中に入れると
部屋に入ってきた時と同じ勢いで、ドアを開け飛び出した。
あとがき
いつも以上にアスカガじゃないし…むしろキラカガ…
この後の話も全然甘くないです。先にあやまっときます。
ごめんなさい。
あと2本ハウメアシリーズいきます。
持ち主が変わりますので、これからはアスラン視点になります。
03.11.01 up