この日もカガリはその日にあった出来事や、この屋敷で起こった昔話を楽しく話して聞かせてくれた。

アスランはそれに相槌を打ち、微笑みながらその話を聞いていた。

そして食事を終え、屋敷内に与えられた自室に戻ろうとしたアスランに、 カガリは素早く駆け寄って来た。

「アスラン!私の部屋に寄ってかないか?」

アスランは一瞬固まり、素早く周囲の様子を確認した。

彼らは皆一様に驚きの表情を見せていたが、すぐに表情を消したのはさすがというべきか。

彼らの総大将であるマーナも、カガリの声が気軽い物だったからか、 どっしりと構えているように見えた。

さて、どう答えよう――――と、アスランは思考を巡らせた。

この屋敷で世話になり始めてから、アスランはカガリの部屋に立ち入った事がない。

当然興味はあるし、誘われれば断る理由など全く思い浮かばない。

しかし、ここで一も二もなく頷けば、後ろにずらっと控えている彼らはどう思うだろうか。

考えた末、アスランは微笑んで、小さく頷いた。

「少しだけなら……」

カガリは一瞬、不満そうに顔をしかめたが、すぐに笑顔に戻った。

「じゃ、行こう!」

アスランの腕に自分のそれを絡ませて、カガリは食堂を出ようとした。

突然のカガリの行動に、アスランは後ろを振り返る事ができなかった――








タイトル 「ソファ」

07.2.11発行予定。A5 1Cコピー 16P 100円。