…覚悟はよろしいですか?
ではいきますよ。
熱を帯びた掌から逃れようと、キラは体を引こうとした。
だがそれに気付いたアスランの動きの方が早かった。
もう片方の手をキラの後頭部に添え、退路を断ってしまった。
「……この間は、ごめん……」
目を伏せ、アスランは小さく呟いた。
だがキラにはアスランが何を謝っているのか分からない。
ぎこちなく髪を撫でられる感触に背筋を震わせながら、キラは尋ねた。
「一体何のこと……?」
「この間のこと……君は気付いていないだろうけど……謝らせてくれ」
キラはぼんやりとした頭で理由を考えたが思いつかなかった。
というか、アスランは普段、自分に対して「君」なんて言葉は使わないのに――――
不思議に思いながらもそれを問い詰めるまでには至らず、キラは別の疑問を口にした。
「僕が気付いていない事って……?」
小さく首を傾げると、アスランは困ったように微笑んだあと、
妙に真剣な表情でキラを見つめ返してきた。
それはキラもあまり見た事がないほど辛そうで、しかし熱心な眼差しだった。
その瞳が徐々に瞼に隠され、顔が近付いてくる。
頭の中で警鐘が鳴る中キラは、ぼやけていくアスランの輪郭を瞳に映したまま――――
「――――」
掠れた低く、甘い声と熱い吐息と共に、キラの唇を熱く湿った柔らかな唇が覆う。
自分の身に何が起こったのかすぐには分からず、キラの意識は一瞬飛んだ。
しかしすぐ今の状況を把握した。
アスランに――――キス、されてる!?
キラは咄嗟に互いの体の間に両手を差し入れ、アスランの胸を押し戻そうとした。
…こっから、もうちょいエスカレートします。
もう私が耐えられないので、これで勘弁して下さいっ!
タイトル「キスの行方」
06.12.29発行予定。A5 FCオフ 52P 500円。