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  サンジがゾロと一緒に銭湯にやってきたのは、ちょっとした思惑があったからだった。

  最近、サンジは悩んでいる事がある。

  もともと自分は毛の薄い方だったが、小5にもなって、今だに全く生えていない。

  まあ〜個人差もあるので、それは仕方無いとは思う。

  もう一つの悩みの方が、重大だった。おチンチンの話である。

  サンジのモノは子供の頃から、色素が薄くて白っぽかった。肌も白いのでそういうモノなのかも

  しれないが、一緒に風呂に入ったジジィのブツは黒かったように思う。

  おまけに、ジジィは形まで全く違っていた。

  もう学校の保健体育の時間で習っていたので、ジジィのブツがムケた大人のモノで、自分がまだ

  子供チンチンなのだとわかっていた。

  それは良いとして、サンジが悩んでいるのは、クラスの子供達はどうなのか?と言う事だった。

  来年、小6になると修学旅行があるのだ。

  別にみんながサンジと同じなら焦る必要も無い。ただ、もしみんながサンジと違っていたら……。

  最近、サンジはそれを思うと夜も眠れないのだ。



  だから、ゾロから「銭湯に行く」と聞かされた時、サンジには天の声のように聞こえていた。

  (ゾロのモノを見れば良いんだ!!)

  (神様、ありがとう!)

  サンジは、脱衣所で黙々と衣服を脱いでいるゾロへ目が釘付けだった。

  ゾロはジーンズとシャツをあっという間に脱いでしまった。剣道で鍛えているせいか、子供の癖に

  かなり筋肉がついてガッシリとした体格をしていた。

  サンジは自分の貧相な身体を考えて、気分が落ちこんできた。

  (いやいや、まだまだココからだ)

  (コイツだって、ピンク色のちび棒かもしれねぇ〜からな)

  (体格が良いからって、全部が大人だなんて限らねぇ)

  期待と不安でサンジが拳を握って力んでいると、何も知らないゾロはさっさとパンツを脱ぎ捨てた。

  !!!!!!!!

  サンジは正直に言って、声が出なかった。

  (コ、コイツ?!)

  ゾロのブツは、赤黒くしっかりとムケた大人のソレだった。それもかなりデカイ! 

  たぶんジジィのモノよりも一回り太く、全長も長いような気がする。

  (なんじゃこりゃ??)

  それが、サンジの最初の感想だった。いくら何でもコレと比較したら、自分があまりに可哀相すぎる。

  おまけに、ゾロはタオルで隠しもせずに、それをフリフリと自由気ままにさせていた。

  「お前、何で前を隠さないの? 露出狂か??」

  なんて、変な事をサンジは言ってしまった。ちょっと声が上ずっていたように思う。

  サンジは自分も脱いでいる途中だったが、股間をタオルでしっかり隠していた。

  こんなゾロに、自分のモノを見られるのは、あまりに悲しすぎる。

  しかし、ゾロはそんなサンジに向かって、腰のタオルを引っ張ってきた。おまけに、サンジが

  嫌がってタオルを押さえて抵抗していると、可笑しそうにこんな事まで言う。

  「お前、女じゃね〜のに止めろよな」

  サンジは、その言葉にカチ〜ンときた。世の中言って良い事と悪い事がある。

  (どうせ、俺のブツは女みてぇ〜に貧相だよ!!)

  (あ〜もう好きに笑いやがれ!!)

  サンジは笑っているゾロの向う脛を蹴ってから、一気に衣服を脱いでしまった。

  そして、仁王立ちになるとしっかり胸を張り、ゾロに挑戦するような眼差しを送った。

  気迫だけは、決してゾロに負けていなかった。

  そのせいか、今度はゾロの落ち着きが無くなってきた。

  おまけに、突然自分の股間をタオルで隠してしまった。

  (何なんだ?こいつ??)

  (自分の緑のチン毛でも恥ずかしいのか??)

  ゾロはすでに毛もかなり生えていて、色は髪の毛より少し濃い目の深緑だった。

  それは、確かに少し間抜けかもしれないなぁ〜とサンジは思った。

  でも、他にも何か隠し事があるのかもしれない。

  サンジはすかさずゾロに飛びついた。

  (絶対に、秘密を暴いてやる!!)

  サンジの瞳は、まるで獲物を見つけた猫のように爛々と輝いていた。


浴槽の中で、ついにゾロを追い詰めたサンジだった。

  「お前、何隠してんだよ?」

  「別に隠しちゃいね〜よ」

  サンジが訊ねると、ゾロは大粒の汗を流しながら、そう答えた。

  かなり長く湯に入っていたのか、顔も身体も真っ赤になっていた。

  言葉とは裏腹にちっとも普通には見えなかった。

  相変わらず、湯の中にタオルを入れたまま、自分の股間をしっかり隠している。

  (こうやって湯に入って良いのかよ??)

  (店の人に怒られるんじゃね〜の?)

  それはやはりマズイだろう。

  とにかくサンジはゾロのタオルを取ろうと、湯の中に右手をつっこんだ。 

  お湯と言うのは、外から見ていると距離感がかなり違うのだ。

  サンジは思うようにタオルに手が届かない。

  懸命に手を伸ばして、やっと届いた様子だったので、力いっぱいタオルをむしった。

  ウギャ〜〜〜!!

  銭湯の浴室全体が震えるほどに、ゾロの甲高い絶叫がこだました。獣じみた声だった。

  サンジも一緒に叫び声を上げそうになっていた。

  ゾロの股間のブツをモロ掴んでしまったのだ。

  中に鉄でできた芯でも入っているように、ものすごく硬い。おまけに太くて長い。

  さらに、全裸で仰向けにゾロが浮かんできた。

  たまたま一緒に湯につかっていたサンジの顔のまん前に、ゾロの股間が漂着したのだった。

  その赤黒い幹には血管が幾重にも浮き出ていて、先端は傘のように開いた形で、サンジには

  尿道の穴までしっかり見えてしまった。

  想像を絶するグロテスクさだった。

  (うわ〜俺、コレを掴んじゃったよ!?)

  サンジは見る間に顔を赤らめると、ゾロにこう叫んでしまった。


  「ゾロのアホ!! 死ね!!」

  サンジはどうして良いのかわからず、既にパニックになっていた。

  ザバッと一気に湯からあがると、逃げるように浴場を後にした。

  ほんの少し涙なんかも出てしまった。ちょっとした恐怖体験に近かった。

  サンジは、この事件からますます男が苦手になったように思う。

  (一緒にいるなら、やっぱり可愛い女の子が良い!!)

  サンジの女好きの始まりが、小学校時代のこの事件のせいだとは、ゾロは気がつく事は無かった。

銭湯を脱出したサンジは、その足でウソップの家へ向かった。

  ウソップも近所に住んでいる数少ないサンジの男友達の一人だった。

  突然、夕飯時にやってきたサンジにウソップはかなり驚いたが、もっと驚愕したのはサンジの

  変な要求だった。

  「ウソップ!! テメェ〜のチンポコを俺に見せろ!!」

  部屋の中で唖然としているウソップに馬乗りになると、さっさとズボンとパンツを脱がして、

  確認するサンジだった。

  ウソップのモノは、サンジのそれと大して違いはない。肌色の可愛らしい物だった。

  サイズはもしかすると、サンジのモノよりも短いかもしれない。

  「なんだ〜テメェも同じじゃね〜か?!」

  「クッソ〜!! ゾロの奴、ビビらせやがって!!」

  「あんなモン、怖くね〜や!」

  サンジがガッツポーズを取って笑っている横で、ウソップがパンツを履きながらむせび泣いていた。

  「……だから……お前、訳わかんね〜よ」

  サンジがクラスの男子生徒に嫌われる理由は、この横暴な性格だった。

  サンジの意味不明の言動に振り回されて、大抵の人間は離れてしまうのだが、ゾロやウソップは

  かなり忍耐力がある方だった。

  特にウソップは年齢の割りにしっかりとした子供だった。

  母一人、子一人の二人暮らし。しかし、今はその母親が入院中なので、家にはウソップ以外

  には誰もいない。

  「なあ、ゾロと何かあったのか?」

  ウソップはこれから夕飯の支度でもするのか、長ネギと生ウドンを冷蔵庫から出しながら、

  そんな事を聞いてきた。

  「あ〜、俺が作ってやるよ? サンジ様特製のスペシャル煮込みウドンでも良いか?」

  サンジは、そのウドンをウソップから取り上げると台所に向かった。

  ウソップは、サンジが決して悪人では無い事を知っていた。

  ただ、要領が悪かったり、口調が悪かったり、態度が悪かったり、人にごめんなさいと言えない

  ヘソ曲がりな人間だったりするだけなのだ。

  「ゾロと仲直りできれば良いな」

  事情を簡単に話すと、ウソップは煮込みウドンを啜りながら、サンジにそんな事を言う。

  「あ〜仲直り?? あんな奴、友達じゃね〜し別に良いよ」

  サンジはそっぽを向いて、ウソップの家を後にした。ただ、ウソップにはそれが嘘だとすぐに

  わかってしまった。その素直じゃ無い所が、とてもサンジらしいように思う。




  帰宅の道のりで、サンジは、どうやってゾロと話そうかと考えていた。

  (死ね……と言うのは、いくら何でもマズイよな)

  自分も外見の事を馬鹿にされたら、本当に嫌だと思う。

  ゾロは、そういう事でサンジをからかったりした事は無かった。

  (俺のピンクのフニャチンや、毛の無いのを見ても馬鹿にしなかったしな)

  (奴のブツがモンスターランクでも、差別はいけねぇ〜よな)

  勝手に<ゾロ=モンスター>と決めつけて、先に進もうとするサンジだった。

  どうすっかな〜と悩むサンジだったが、自分に出来る事は一つしか無いように思う。

  自分には料理しか無いのだ。

  (何かゾロの好きな物でも作って持っていこう)

  そう思ったら、サンジの足取りも軽くなった。

  ゾロの好きそうなレシピをいろいろと考えていると、楽しくてスキップしそうな気分になった。

  料理の事を考えるのが、サンジは何よりも好きなのだ。

  (今度の日曜日かな?)

  (アイツは道場に行くからな)

  (帰りのハラペコの時に、とっ捕まえるか)

  (スゲェ〜ご馳走を持って行ってやろう)

  その事を思うと、何だか浮かれた気分になってサンジは笑いが止まらなかった。

  二人の決戦(?)は、間もなく次の日曜日となった。

  サンジが勝手にそう決めてしまったのだ。

  どこまで行っても、<自分が主役>なサンジなのである。



                                   END
                            
              第3話〜決戦は日曜日〜へ続きます


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