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欲望の果て その4「戦士の休息・本戦」
「最悪だッ! 」
エドワードが、そう叫んだのは、自分の前に置かれていた大きな姿見に気がついたからだった。
彼は、胡座をかいている大佐の太股の上へ座っていた。
大きく足を開かされて、その尻には、大佐の性器を飲み込んでいた。
大佐が腰を揺する度に、赤黒い砲身が、尻穴に沈んで行くのが、鏡に映っているのだ。
「偶然だ。別に、このために置いたわけじゃ無いぞ。」
「嘘つけ。この変態! 」
実際、大佐の言うとおり、一ヶ月前からずっと鏡はこの場所に置いてあったのだが、
今までエドワードは、それに気づく心の余裕が無かったのだ。
初めに抱かれた頃と違い、セックスに少しづつ慣れてきたエドワードは、周囲の様子に
心を配る事ができるようになっていた。
エドワードが自ら、腰を上げるようにすると、大佐の太い砲身がゆっくりと外気にさらされてくる。
エドワードの赤い襞がめくれるように動き、体液が外へと飛び散るのだ。
逆に、今度は腰を落とすと、自分の体重がかかってしまい、思ったよりもずっと身体の奥を
突かれてしまう。今まで、こんなに深く入れられた事は無いと思った。
「騎乗位は初めてだが、辛いかい? かなり深くまで入るだろう? 」
そう言って、大佐が腰を回すように揺すった。
快楽の悲鳴を上げる少年の顔を、鏡越しに眺め、大佐は満足そうに笑顔を見せた。
「その方が良い。もっと、快楽を貪ると良い。これが、君の本当の顔なんだ。
何ものにも縛られない本当の君の姿なんだ。」
マスタング大佐は、後ろ手に縛っているエドワードの腕を取ると、それを軸にして、
激しく腰を使い始めた。
エドワードは身体を跳ね上げながら、快楽に満ちた表情をしていた。
緩んだ口元からは、涎が滴り落ち、興奮で薄桃色に染まった胸を汚している。
その扇情的な肢体が、鏡に映っているのを、エドワード自身も見つめていた。
<これが、本当のお前の姿だ。眼を背けるな。>
その言葉は、昔、ロイ・マスタングが若い頃、耳にしたある男の台詞だった。
軍の養成所にいた頃、寮の同室だった男が、そんな台詞をベッドで、
いつも自分に言ったのだ。
<取り澄ましたお前も、上品で落ち着いた優等生のお前も、確かに俺は知っている。
けれど、本当のお前は、違うだろう? お前は、もっと欲が深い。
この快楽を貪っているお前の姿が、一番、お前らしいんだよ。>
その男が、たった一人だけ、本当の自分を理解してくれた相手なのかもしれない、と
ロイ・マスタングは思っていた。
その学校でも、軍属になってからも、結局、彼の気持ちを受け入れる勇気は無かった。
自分には、この世の最高権力を手中にするという、もっと大きな野望があるからだった。
そんなロイ・マスタングの言葉に、最初に賛同してくれた男でもあったのだ。
だから、彼が結婚した時も、彼女との間に娘が生まれた時も、ずっと彼の幸せを自分の
喜びとして、見守り続けるつもりだったのだ。
「世の中は、うまく行かないものだな。」
快楽に震えながら、涙を流しているエドワードの頬へ、マスタング大佐は口付けをした。
自分と同様に、この少年も秘めた思いを胸に宿しているのだと気がついていた。
それは、自分の恋よりも、もっと苦しく困難な物であるとも知っていた。
人を慈しんで愛する事は素晴らしい事だ。
けれど、その相手へ、醜い自分の本性を、全て晒け出す事はあまりにも切ない。
マスタング大佐は、結局、逃げてしまったのだ。
最後まで、ヒューズ中佐へ、愛を打ち明ける事は無かった。
もし、生きているうちに、自分がもっと正直になっていたら、お互いの人生は
変わったのだろうか? 彼は、もう、この世にはいないので、答えは永遠に闇の中だった。
エドワードの未来がどうなるのかは知らないが、せめて、彼が自分の思いに
押しつぶされてしまう前に、手助けがしてあげたかったのだ。
「エドワード。君は、もっと欲望に忠実になれ! もっと、欲深く、欲しい物を強請ると良い。
快楽に忠実な、この今の姿が本来の君なんだ。
愛している相手と、思う存分、抱き合うと良い。」
マスタング大佐は、エドワードの細い腰を掴むと、激しく上下に揺すり立てた。
あまりに強く揺さぶられるので、エドワードは息もする事が出来ず、苦しげに喘いでいた。
ただ、ひたすら、最後の時まで快楽を貪ろうと、エドワードは大きな喘ぎ声をあげていた。
もう、性行為を拒絶していなかったし、鏡に映る自分の姿に眼を背ける事もしなかった。
最後に、大佐の迸りを体内に受け入れながら、彼がとても小さな声で呟いた言葉を、
大佐は耳に捕らえたが、聞かなかった事にした。
それは、エドワードの本音だからだ。
彼の誰にも知られたくない本当の気持ちだった。
「……ああ、アル。大好きだよ。」
マスタング大佐は、エドワードが震えながら射精している間、ずっと背後から優しく
抱きしめてあげた。
もし、この場に、彼の愛する弟がいたのなら、そうしたような気がしたからだった。
その5へ続く ただ今、製作中→
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