「脳は何かと言い訳する」  池谷祐二著

目次1 目次2 概要
1 記憶する
 「海馬」はどれほど凄いか
◆「海馬』がこんなに注目される理由
◆記憶を脳に「刻み込む」ために泌要な場所
◆海馬を鍛えれば記憶力は上がるか
◆記憶をコントロールする「海馬」の神経細胞(ニューロン)は生涯わたって増え続ける。
◆物事を学習することが海馬神経の増殖を高める→記憶力を高めるには神経の増殖能力を高めることが重要で、勉学に励む共に、日々のマンネリを避け、刺激ある日常生活が重要。その為に、社交の場に出ること、適度のランニングなどが効果的。
◆海馬は記憶作りに重要だが、記憶を蓄える場所ではない。また、記憶を思い出すためにも重要でない。
2 疲れを溜める
 記憶とストレスの意外な関係
◆「ストレス」と「ストレッサー」の根本的な違い
◆「海馬」は、「記憶」だけでなく「ストレス」も担当
◆ストレスは脳に有害である。ストレスを感じているときは、副腎皮質であるホルモンが作られ、これが多すぎると、脳に流れ込み、神経細胞の働きが抑えられ、記憶力が低下したり、仕事効率が落ちたりする作用が現れる。
◆脳をストレスから守る為には、「環境に素早く慣れる事が秘訣」であり、ストレスに慣れることは、一種の「記憶の作用」である。
◆ストレスとは、主観的な負荷や重圧のことで、個人に掛かる環境的な刺激はストレッサーという。ゆえに、受験はストレスでなく、ストレッサーである。
◆ストレスを感じやすい人と感じにくい人がいるとよく言われるが、これは、ストレッサーが同じでも、ストレスが違うことによる。その違いが場慣れ(記憶)の程度により生じる。


3 思い込む
 虹はほんとうに七色か?
◆脳が最初から情報をゆがめる理由
◆自分の家がいちばん大きく描かれた日本地図
◆人が思い込みをする理由
◆小さく、シワもないネズミの脳
◆快楽よりも恐怖や不安を強く感じるのは、なぜか
◆人は、先入観で踊らされ、本来の評価ができない。我々の心は想像以上に外部情報に操られる性癖があり、ここに意外なビジネスチャンスの可能性有り。
◆視覚、味覚は、個人の記憶、経験によって、最初に処理する大脳皮質の視覚野、味覚野でバイアスがかかり歪められる。それが、先入観。
◆逆に、脳では、先入観で次々入る情報を素早く処理。
◆快さ(甘さ)より不快さ(苦しさ)において先入観がより強く発生。
4 やる気になる
 モチベーションはどうやって高める?
◆バイオリニストの「指」の脳領域
◆脳は体がなければ無知である
◆「作業興奮」へのススメ
◆「報酬系」を喜ばせる
◆「私にはこの人しかいない」このとき脳では何が?
◆ドーバミンの[盲目的」パワーが生み出す原動カ
◆報酬は、心理学で「外発的動機付け」といい、報酬がないと学習能力の低下や、全くしなくなるケースがある。
◆仕事の正確度を高めたければ、多くの行程を一纏めにせず、細かなステップに分け、その度に報酬を与える方がよい。
◆基本的には、脳の内側から「やる気」をだすことはできない。
◆脳の外界とのインタフェースは体である。脳の活性化は、体に引っ張られる形で行われる。
◆外発的動機付けは環境主導型の考え方であるが、もう一つの方法として、作業興奮による脳神経細胞の活性化がある。これは、やる気がなくてもまず初めてみることで、そのうち脳が活性化してやる気がでてくることである。
◆外発的動機付けは、必ずしも具体的な褒美でなくても良い。一番は、「褒める」ことである。その他、達成感や、理解したときの喜びなど報酬系に働きかけるものであれば、なんでも動機付けになる。
◆報酬系とは、快楽のドーパミンが分泌する腹側被蓋野などの脳部位を報酬の神経系といい、そのことを報酬系という。

5 理性を失う
 アルコールでストレス解消できるのか
◆「あなたはいつでもストレスから逃げられる」
◆重要なのはストレス解消ではなく、解消する方法を持っていること
◆アルコールではダメだった!
◆脳は地下鉄と似た「非効率な構造」
◆アルコールは「大脳皮質=理性」を抑制していた
◆ストレスには、自覚している主観的ストレスと、体が現実に感じている体性的ストレスで、医学的には後者が重要。
◆アルコールはストレスを発散した気になっているだけで、体のストレスは依然感じ続けている。
◆ストレスを軽減するポイントは予測(生じる可能性をあらかじめ知っている)と回避(回避する方法を知っている)である。回避できない状況では、本当に怖いストレスになる。つまり、重要なのはストレスの解消でなく、解消する方法を持ってと思っていることである。
6 ド忘れする
 それは「歳」のせいではなかった
◆「ド忘れ」はほんとうに忘れているわけではない
◆恩い出す、という脳作業の不思議
◆「似た状況をつくる」 ド忘れ解決法
◆「健忘症」は記憶を呼び出せないだけ
◆失われた記憶は、プライミングというきっかけで蘇る。
◆ド忘れは脳の「ゆらぎ」でたまたま出てこないだけで、本当に忘れているわけではない。
◆ド忘れ(健忘症)は、記憶が呼び出せないだけで、記憶がなくなった訳ではない。無くなってしまった場合は認知症になる。
7 言い訳する
 脳に言い訳させる変化盲って何?
◆いつのまにか機能している「自已維持」本能
◆融通のきく記憶、きかない記憶
◆変化盲(変化に気づかない現象):思い込みにより、目の前で起こった変化を感知できなくなってしまうこと。女性の髪型変化に気が付かないのもその一つ。
◆言い訳は自己維持の本能であり、自己崩壊の回避である。
◆記憶する上では、表面上の情報で惑わされないことが重要で、学習速度を遅くする必要がある。
◆「なかなか覚えられない」脳はそもそもそうできている。これは、表面上の情報に流されない、記憶する上での脳の性質であり、「自己維持」としてとらえることができる。
8 熱中する
 脳の出来、不出来を決定づけるものとは
◆記憶カのよしあしを決める「七つの遺伝子」
◆「絶対音感」も遺伝子が決めている?
◆求む−「熱中遺伝子」
◆できるやつは、「好奇心」「注意力」「集中力」が高い。行動性には無関係。
◆集中力に関与するのが海馬であり、特に場所に応じて反応する神経細胞が集中力に強く左右する。
◆バイリンガルや絶対音感は親の教育観や環境が重要だが、記憶に関わる学習は、本人のやる気、集中力、根気強さが重要。(学習塾に強制的に通わせる教育ママゴン!勘違いするな!)
9 錯覚する
 ヒトも動物も、なぜか、”赤”が勝負強い
◆人間の目が感じられるのは「赤」[緑」「青」だけ
◆色が見えている動物、見えていない動物
◆柔道着は「白」より「青」のほうが勝てる
◆クジャクの羽根はどうやって彩られるのか
◆大まかに、夜行性は色が見えなく、昼行性は、色が見える。犬猫は夜行性。
10 期待する
 当たらないのに「宝くじ」を買ってしまう理由
◆なぜ「1000円」ではなく「980円」なのか?
◆ボールの落下点を予測できる物理的〈カン〉の凄さ
◆生物は本質的にギャンブル好き。しかし、高額の賭けによるリスクは嫌う。
◆期待効用:報酬に対する期待感。目から入った情報をまず処理する「第一次視覚野」が関わる。そこは、主観的な先入観が混じりやすく、判断を誤りやすい。これを利用したのが980円販売。
11 ウソをつく
 その<選択>に根拠はなかった!
◆相手の仕草を見て反応する「ミラーニューロン」
◆人問に賦与されたもう一つ別の遺伝子
◆心が見えるのはいいことか
◆人間に<自由意志>はない?
◆その〈選択〉は「ゆらぎ」が決めていた
◆あの人を好きになったほんとうの理由
◆「自由意志」はないけれど、「自由否定」はできる
◆アイデアを生み出す秘訣も「ゆらぎ」にあり
◆「コンチキシショー」を言うか言わないかの違い
◆同情ニューロン:他人の苦痛を感知する神経で、「帯状野」「島皮質」が反応。これは、近親者だけで、見知らぬ人や憎んでいる人には反応しない。
◆この反応をfMRIで診断できる。脳の反応で有効な市場指標を得る事に注目が集まっている→ニューロマーケティング。
◆人間の判断は、偶発的なゆらぎ(神経細胞の膜に電気がたまっているか、溜まっていないか。)の積み重ねでできている。=直観。
◆アイデアが生まれるのは、ゆらげるか、ゆらげないかである。集中力の高い人は、アイデアマンではない。集中力が欠如し良くゆらぐ人が、創造性に富んでいる。
12 体に頼る
脳の能力は10%しか発揮されていない?
◆人間の体をコントロールするには10%で事足りる
◆人間ほど[不利」な体を持った哺乳類はいない
◆テラノサウルスの「手」、人間の「手」
◆脳の能力は10%しか発揮されていない。90%の神経細胞が遊んでいるわけではなく、無駄なく使われており、人間の体を介することにより、10%の能力しか発揮されない。
13 ダジャレを言う
 なぜ人間だけが笑うのか?
◆赤ちゃんはなぜ笑うのか!
◆「自分は今申し分のない状態にいる」
◆心臓を守る「右利き」遺伝子
◆赤ちゃんはなぜ左利きか
◆ピアノの鍵盤が右にいくほど高音になる理由
◆親父ギャグを連発する大人達は、仕事で疲れ脳が子供化している。
◆通常単語の記憶は、意味による類別化により整理され、円滑な想起に効果を発揮していますが、幼い脳では、記憶の類別化は単語の音によって、連合されることが多く、似た発音によって連想が引きずられる。
◆ダジャレは言葉の潜在能力を活かしたもう一つの表現手段。
14 夢を見る
 「眠い」「眠くない」も遺伝子が握っていた
◆脳の中の一日のリズムは「25時問周期」だった
◆なぜ、「浅い眠り(レム睡眠)」のときに夢を見るのか
◆「金縛り」の謎解き
◆「90分の倍数」 睡眠時問のススメ
◆ナボレオンは「短眠型遺伝子」の持ち主だった
◆脳のリズム(1日の周期)が地球の周期に近い動物が生き残っている。殆どの生物が25時間。
◆浅い眠り(レム睡眠)、深い眠り(ノンレム睡眠)は脳の活動であり、体はその逆。寝返りをしているときは、ノンレム睡眠時。夢遊病も同じ。
◆レム・ ノンレムの周期は90分。レムの時目覚めたほうが自然、その為、目覚ましは、4.5時間後、6時間後、7.5時間後が良い。
15 眠れない
 「睡眠」は情報整理と記憶補強に最高の時間
◆記憶は寝ている問に「早送り再生」されていた
◆夢を見ていないとき、脳は何をしているのか
◆「目を閉じてリラックス」するだけで
◆睡眠時は、記憶の情報整理と補強。目を閉じてリラックスしても同じ効果。
TVを見ながらの休憩は効果がない。
◆寝ている間に記憶はハイスピードで再生される。ただ、起きたときには殆ど覚えていない。覚えているのは、浅い眠りの目覚めの直前。と、つぎはぎのストーリーの奇妙な部分。
16 占いが好き
 「B型」か「O型」が減っていく
◆血液型が、性格や病気の発症に関係するか
◆最後にはみんなが同じ苗字になる
◆「夢占い」、「星座占い」、「姓名判断」の根拠
◆自殺の傾向に血液型。O型は自殺率が少ない。
◆1000世代でB型かO型が滅ぶシミュレーション。数万年先のこと、もっと別のことのシミュレーションを!
17 ”波”に乗る
  アルファ波よりも重要な「脳波」とは
◆注意力が高まったとき「シータ波」が現われる
◆シータ波のリズムに乗る
◆200回「繰り返す」と記憶するウサギ
◆脳の性能をダメにする「当たり前」感覚
◆「慣れ」がなぜ脳に必要か
◆アルファ波を自由自在に出す方法
◆「状況」に応じて最適な脳の活動を生み出す
◆α波、β波などの脳波に関する記述は、根拠が薄い。
◆θ波は記憶・ 注意力に、γ波は意識や集中力に関連。
◆θ・ γ波の刺激で人工的に運動神経を強化できる。ドーピングはどうなる?
◆θ波は、面白いと感じているか・知的好奇心・ 探求心を持っているときに関係している。
18 ボケていく
  DHA摂取でアルッハィマー病を防ぐ
◆アルツハイマー病とは
◆脳に「βアミロイド」が溜まってくると
◆「毒をもって毒を制する」近い将来の治療法
◆DHA、カレー、アスピリンに予防効果が
◆認知症は特別の疾患をを指すのでなく、脳が変性することにより、記憶や知能に障害が現れる症状全般を指す。
◆アルツハイマー病は脳に「βアミロイド」が溜まって生じる。
◆アルツハイマー脳はDHAの消費が激しい。
◆豊かな環境や読書・ カード遊びによる刺激がアルツハイマー病のリスクを軽減する。
◆アルツハイマー病は、本人にとって悲劇的であるが、介護者にとってもより深刻な病気。
◆イブプロフェンやアスピリンなどを含む頭痛薬にアルツハイマー病の予防効果がある。
19 冴えわたる
  お腹が空けば記憶力が高まる
◆「言語野」が人問にしかない不思議
◆「旨味」「苦味」か人によって少しずつ違う理由
◆異なる感性を繋ぐ共通の言語
◆記憶力を高めるのは努力あるのみ。
◆寒さや空腹は危機感を感じる。その危機的状況は、野生動物同様に注意力や記憶力が促進される。
◆動物的原理でなく人間しか持っていないものは、言語である。言語はおそらく心を作っている。
20 念押しする
ただ「復習」すればいいというものではなかった
◆記億は「覚えかけ」のとき不安定になる
◆記憶と「抗生物質」の奇妙な関係
◆思い出しさえしなければ、思い出せる
◆「嫌な記憶」はアルコールで強化される
◆記憶に留めるには復習しかない。しかし、最近では、がむしゃらの復習は間違っている。
◆脳の記憶は、獲得・ 固定・ 再生の三ステップ。さらに再固定化が追加。
◆記憶の再生は、再固定化の重要なステップ。再固定化を確実にするため丁寧な復習が要。
◆記憶獲得を阻害するアニソマイシンという抗生物質。
◆思い出す行為は、記憶を不安定にする。
◆アニソマイシンで人工的に記憶を消去できる。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に利用。
◆アルコールは、いやな記憶が逆に強化。いやなことの後のアルコールは禁物。
21 不安がる
  ”不確実さ”が、脳の栄養源
◆悩まなければ、記憶力も低下する ◆ドーパミンニューロンは、集中力・やる気維持に重要な働き。逆にマンネリ化は脳が活性化しない。未確定要素50%のときドーパミンニューロンの活動が最大化。
◆不安による悩みがないと記憶力が低下する。また、社会に適応できない。
◆悩まないから記憶できないのか。記憶できないから悩まないのか。
22 うつになる
  信じる意識が「痛み」を変える
◆「うつ病」は精神の弱さとは無関係
◆脳の”化学的”を変える「プラシーボ(偽薬)」
◆うつ病と「海馬」の知られざる関係
◆「とりあえずたくさん作っておく」システム
◆「脳の細胞は増殖するようだ」
◆うつ病は、ある意味、賢さの表われ
◆「うつ」は几帳面の人が発症しやすい。発症は、気持ちの持ちよう。
◆セロトニンという脳内物質の不足が発症に関与。
◆うつ病薬の投与で、海馬の神経細胞が増える。これは、海馬以外で分泌されるセロトニンに効いて、回り回って海馬の機能を変えると考えられている。
◆神経細胞は、2歳で70%が消え、その後ほとんど変わらない。しかし、入れ替わる。生まれた細胞で一生使い続けるのが、筋肉や脳の神経細胞と考えられていたが、脳の神経細胞は増殖するようだ。
23 干渉する
 「果報は寝て待て」を証明する
◆努力しないで記憶カを高めるには
◆数学はまとめて、英語は少しずつ勉強する、が効果的
◆睡眠とは忘れかけた情報を呼び起こし記憶を補強する効果がある。
◆干渉した記憶(似たものを区別しての暗記)では、最近の記憶のみが補強。
◆類似暗記でも、間隔(6時間以上)おけば干渉が生じない。
 暗記物は詰め込まず少しづつ。論理性の高いものは一気に。
◆レミニセンス効果:アイデアが行き詰まった時に、一晩おくと次の日、ふとひらめく現象。
24 依存する
 ニコチンの好ましい脳内作用とは
◆遺伝子の違いで判断する「オーダーメイド医療」
◆「個性」を決める、もうひとつの因子
◆薬の副作用は飲む前に予測できる
◆ニコチンは、集中力を高め、記憶力を増強させる。
◆日常の「快楽行動」に深く関与する「腹側被蓋野」で、ニコチン依存症が生まれる。
◆薬理ゲノミクス:薬は人によって効きが違う。
◆薬理代謝ゲノミクス:尿などで薬の効き・ 副作用が予測できる。
25 満足できない
  脳と”肥満”の密接な関係
◆[心疾患」と「脳疾患」の原因は一緒
◆美食生活は”緩慢たる自殺”
◆「記憶カを増強する薬」も認可される
◆食欲など3つの基本欲は、「満足を知る」。金銭欲、権利欲、独占欲などの世俗的欲望は、「満足を知らない」。
◆「満足を知る」は、レプチンが「視床下部」を刺激して抑制。しかし、「レプチン耐性」によって、肥満治療には効果がない。
26 曖昧になる
  血圧も自律神経もコントロールできる
◆「コンピューターと脳」の境界線
◆「曖昧性」から生まれてくるもの
◆人間の脳とコンピュータの脳が融合するとき
◆心拍数を低下させる ヨガの達人
◆自己増殖するロボット。生物との境界は「自己複製(子供を産む)」である。このロボットは生物であろうか。
◆ニューラル・ プロテティクス(神経補綴学):人間の脳よコンピュータとの融合。(脳直結で車椅子などを動かす。)