ヘリウム(He)

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ヘリウムの特徴・性質と歴史

ビッグバンによるヘリウム原子の発生とヘリウムの用途

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ヘリウムの特徴・性質と歴史

ヘリウム(helium)は原子番号が“2”、原子量が“4.002602”、元素記号が“He”の元素である。ヘリウムの語源はギリシア語の“helios(太陽)”であり、無色、無臭、無味、無毒で最も軽い希ガス元素として知られる。ヘリウムは不活性な単原子ガスであり、標準状態では気体としてのみ存在している。ヘリウムは絶対零度の条件でも通常の圧力では液体のままであり、固化するには非常に強い圧力を掛けなければならない。ヘリウムの宇宙での存在量は水素に次いで多いが、地球上では大気の0.0005%を占めるに過ぎない。元素の地球の地殻(表層)での存在度を示す“クラーク数”では、ヘリウムは72位である。

固体ヘリウムは“1.5K”“2.5-3.5MPa”という非常に低い温度と極端に高い圧力の条件下でしか存在できず、ヘリウム-4の2つの液体状態であるヘリウムIとヘリウムⅡは、物質が超伝導を帯びるような絶対零度の特殊条件でしか発生しない。ヘリウムは1868年8月18日に、インドのグントゥールで皆既日食を観察していたフランス人天文学者のピエール・ジャンサン(Pierre Jules Ce'sar Janssen, 1824-1907)により発見されたが、ジャンサンは太陽光スペクトラムの中に『ヘリウムのスペクトル』を発見したのだった。太陽の彩層部分の光を発光分光分析していて発見したものであり、ヘリウムの波長は587.49ナノメートルで黄色い輝線として確認された。同年にイギリスの天文学者ノーマン・ロッキャー(Sir Joseph Norman Lockyer,1836-1920)も、インドで皆既日蝕を観察して、ヘリウムの黄色いスペクトルを発見しているが、『ヘリウム』という命名をしたのはノーマン・ロッキャーである。

1882年に、イタリアの物理学者ルイージ・パルミエーリがヴェスヴィオ火山の溶岩を分析していて、ヘリウムのスペクトルであるD3線を確認し、太陽だけではなく地球上にもヘリウム原子が存在することが分かった。地球上でのヘリウム生成は1895年3月26日に、イギリスの化学者ウィリアム・ラムゼー卿によって為されたが、ラムゼーはクレーベ石(10%以上の希土類元素を含む閃ウラン鉱)と無機酸を反応させてヘリウムを作った。

ヘリウムの原子量を計測できるだけの量は、スウェーデンウプサラ市でペール・テオドール・クレーベアブラハム・ラングレによって初めて抽出された。1908年にオランダのヘイケ・カメルリング・オネスはヘリウムガスを1K以下まで冷却して、ヘリウムの液化に成功している。オネスの弟子であるウィレム・ヘンドリック・ケーソンが1cm3のヘリウムの固体化に初めて成功したが、ヘリウムは特殊な圧力条件でしか固体化しないことが分かった。ヘリウムは沸点が-268.93度で異常に低いために液化は不可能と考えられていた時期もあったが、オネスは気体を圧縮して急膨張させると温度が下がるという原理を応用したのである。

1938年には、ロシアのピョートル・カピッツァが、ヘリウム4を絶対零度近くまで冷却する実験を行い、その温度下ではヘリウム4は粘性を持たない『超流動』になることが確認された。1972年には、アメリカのダグラス・D・オシェロフ、デビッド・リー、ロバート・リチャードソンらの実験により、ヘリウム4だけでなくヘリウム3も絶対零度近くまで冷やすと超流動になることが分かったのである。ウランが放射性崩壊する時に出されるアルファ線がヘリウムの原子核であり、ヘリウムが地球誕生の初期に岩石の中に閉じ込められたことを示唆している。

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ビッグバンによるヘリウム原子の発生とヘリウムの用途

宇宙は最初の大爆発によって発生したとする『ビッグバン仮説』によると、約150億~160億年前にビッグバンが起こって、その10秒後にはヘリウム原子核が生成されたと推測されている。ヘリウムは宇宙空間では『水素(H)』に次いで多いありふれた元素であるが、重さが非常に軽いために、地球の重力では引きつけておくことができず、その大部分が宇宙空間へ放出されたと考えられている。

ヘリウムは空気よりも軽くて、燃えない不燃性ガスとしての特徴を持っているので、広告用・天体観測用・軍事偵察用などの気球の『浮揚用ガス』として盛んに使われた時期があった。ヘリウムは水素の92.64%もの浮揚力があるだけでなく、不燃性ガスで燃えないために、水素よりも浮揚用としては非常に安全なガスであり、子供向けの風船に詰められたりもする。

ヘリウムがノーマン・ロッキャーによって確認されてから暫くは、ヘリウムは地球上に殆ど存在しない元素であり、まとまった量を集めるのは難しかったのだが、1903年にアメリカ・カンザス州デクスターで石油掘削のボーリングを行なった時に、不燃性のヘリウムガスが出てきて、『天然ガスの副産物』として産生できることが分かった。アメリカ合衆国のグレートプレーンズ地下(カンザス州・オクラホマ州・テキサス州)にヘリウムガスが大量に埋蔵されていることが明らかになって、アメリカがヘリウムの供給拠点になったのである。当初は軍事用飛行船などの揚力ガスとして使われていたが、第二次世界大戦中にはアーク溶接用の需要も生まれた。

第二次世界大戦後にはヘリウムの需要はいったん縮小したが、1950年代には米ソの宇宙開発競争・冷戦構造を背景としたロケットエンジンの推進剤用、あるいは酸素や水素の冷却用として、ヘリウムが用いられるようになり消費が急増した。1965年には、アメリカのヘリウム消費量は戦時中の最大量の8倍になったが、現在でも新興国・開発途上国を中心にヘリウム需要は増え続けており、将来的には供給不足になる可能性も指摘されている。20世紀末までアメリカは全世界の商用ヘリウムの供給の90%以上を担ってきたが、近年はコスト面の問題からヘリウムの備蓄量増加をやめており、ヘリウムの供給拠点はロシアやカナダ、アルジェリア、ポーランドなどに分散してきている。1990年代には、アルジェリアのアルゼウで全ヨーロッパのヘリウムの需要量を賄える1,700万m3の新工場ができて、更にアルジェリアはヘリウム工場を増やそうとしているが、世界全体の需要量はそれを上回る勢いで増えているのである。

ヘリウムの代表的な用途(使い道)としては、以下のようなものがある。

浮揚用・呼吸用……空気よりも軽く燃えない不燃性なので、飛行船・気球などを浮揚させるガスとして使う。酸素とヘリウムを混合させると、ダイビングや深海潜水の呼吸用ガスとしても最適な気体となり、麻酔作用が小さいので中毒症状がでにくく減圧症のリスクも低くしてくれるのである。

娯楽用・パーティーグッズ用……ヘリウムガスを吸引すると、軽いヘリウムは空気よりも音を速く伝えるので、声が甲高くなり奇妙な面白い響きとなる。その特性を利用して娯楽用のパーティーグッズとして使われているが、ヘリウムだけを吸引すると酸欠リスクがあるので、酸素も同時に混入している。

軍事用・水素爆弾……水素がヘリウムになる核融合反応を応用して、強力な水素爆弾が開発された。

宇宙開発用・原発用……液体ヘリウムが、ロケットの噴射口を守る冷却剤(原子力発電における原子炉の冷却材も)、シリコンやゲルマニウム結晶の保護材として用いられている。

科学実験用……ヘリウムの沸点・融点は極端に低いので、絶対零度に近い環境や超流動状態での研究において、『冷媒』として使用されている。

医療用…… 液体ヘリウムが、画像診断を実施するNMR、MRIの測定装置において、超伝導電磁石の冷却目的で使われている。

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