登山の基礎知識

近代以前の登山の歴史は『宗教信仰』『移動の必要性』と関係しており、“山(山頂)に登る行為そのもの”を自己目的化した登山は殆ど行われていませんでした。中東やヨーロッパでも『旧約聖書』に、預言者モーセがシナイ山に登って神(ヤハウェ)の啓示を受けたというエピソードがありますが、日本では特にアニミズムの神道や山岳修行の修験道(しゅげんどう)と結びつく形で、山そのものを神として崇拝する『信仰登山』が盛んに行われていました。

仏教と山岳にも深い関わりがあり、初めて寺院を創建することを『開山(かいざん)』といい、寺院創設のための資金を提供した支援者のことを『開基(かいき)』と呼びますが、神道・修験道では誰も登ったことがない未踏峰の山に初めて登頂して『神体山(しんたいざん)』を崇める事を開山といいます。新田次郎の小説『槍ヶ岳開山』では、播隆(ばんりゅう)上人が天を突くような形をした峻険な槍ヶ岳に艱難辛苦を乗り越えて登頂して開山するが、これもスポーツ登山(近代登山)などではなく槍ヶ岳そのものを神体山として高山と極楽浄土の近さに思いを馳せる信仰登山でした。

登山の行為そのものを目的とする『近代登山』が始まるきっかけになったのは、1786年にM.G.パカール(Michel-Gabriel Paccard)J.バルマ(Jacques Balmat)が成し遂げたヨーロッパ最高峰モンブラン(4810.9m)の登頂だと言われています。ヨーロッパの近代登山は20世紀半ばまでは、『厳しい自然の克服・人間と自然の戦い』をテーマにしたストイックなものでしたが、その後、登山が大衆化していくにつれて『スポーツ・レジャー・娯楽・健康』のための登山のほうが盛んになってきました。

登山には世界最高峰のエベレスト(チョモランマ,8848m)やエベレストに続く峻険な8000メートル峰(全14座)の山頂を極めようとする非常に難易度の高いものがあります。更に、『厳冬期・アルパインスタイル(極地法の間接支援を受けない自力での登山)・バリエーションルート・ロッククライミング』などの要素が加わるほどにその難易度は高まっていきますが、これらはプロ登山家が厳しい訓練や高山経験のステップを踏んで目指すべきもので、一般にイメージされる『登山道・自然歩道の決められたルート』を歩いて登っていく山登りとは異なるものです。

日本の山にも『冬の積雪期の日本アルプス・富士山・立山連峰・北海道の山』をはじめとして険しくて危ない山は多くありますが、春から秋の温暖な無雪期に『雨・雪・風のない好天の日』を選べば、比較的安全な登山をすることができるでしょう。スポーツや娯楽としての登山は『自分の体力・技術・経験・目的』に合わせて楽しむ事ができるのが最大の魅力ですので、気候条件や体力の消耗度、一日の行動時間(日没時間までの下山)を考えながら、無理をせずに安全登山を心がけることが大切になってきます。

登山では『山の頂上(ピーク)』を踏むことを目的にしがちですが、必ずしも頂上を踏む必要はないので、自然の山林や丘陵、沢(滝)の流れ、尾根の美しい景色を楽しみながら、自分のペースで歩く『トレッキング』もおすすめです。登山(クライミング)はトレッキングやバックパッキング、ハイキングとも重複する部分が多い『長い距離を歩き続けるスポーツ的・娯楽的・健康的な活動』であり、山の頂上に到達することを目指さなくても自然の空気と景色の中を歩くだけでも、十分なリラクセーションや満足感、癒し感を得ることができるのです。山の頂上を目指すのが体力的・年齢的にきついという方は、山麓や山中の道を自分の歩ける所まで歩き、周囲の動物や植物、壮大な山の景色を楽しむというトレッキングをしてみるのも良いものです。

日本では『ハイキング』というと短距離を気楽に歩く遠足といった語感が強いのですが、欧米諸国のアウトドアでは『ハイキング』の概念に『ロングトレイル(長距離の歩く旅)』という意味も込められており、数十キロ~数百キロの道のりを泊りがけで踏破するようなロングトレイルさえもハイキングと見なされたりします。クライミングとハイキング、トレッキングは頂上を目指すか目指さないかという目的の違いはありますが、『自然の中を歩き(登り)続ける活動』という共通性を持ち、これらの趣味やスポーツを楽しむためには『活動(登る山・季節)のレベルに合わせた体力・装備・知識・経験』のバランスが大切になってきます。

このウェブページでは、日本の山の登山に関連する内容を中心にして、登山の初心者やこれから登山をやりたいという人に役立つ基本的な情報を紹介していきます。

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登山の服装は季節によって変わり、冬期の登山ではアウターや防寒着で重装備になってきますが、暑い夏期の登山でも『長袖・長ズボン』が枝・岩・草に手足を擦って怪我をしないための標準的な服装になります。登山ウェアの基本は『3レイヤー(三層)』の重ね着であり、“ベースレイヤー(下着)・ミドルレイヤー(長袖シャツや保温着)・アウターレイヤー(防風防水のシェル)”という構造です。気温や体温、発汗、動きやすさに合わせて、3レイヤーのウェアを着たり脱いだりしながら行動します。

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