認知心理学(認知科学)の研究と理論

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私達人間は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった感覚器官を通して外部の情報を摂取し、危険を察知して回避したり、認知(知覚)した情報に基づいて適応的な行動を選択したり、心の内面に外部の対象に関するイメージや意味を形成したりします。人間の大脳新皮質によって実現される高次脳機能を中心とした情報処理過程を『認知(cognition)』といい、現在の認知心理学(認知科学)では、人間の『知』の働きに認知過程を生み出す脳機能が重要な役割を果たしていると考えられています。

認知(cognition)とは、外部の対象や事象に関する情報を『後天的な知識・記憶・学習』の影響を受けて理解する過程のことで、知覚(perception)とは、目・耳・鼻・舌・皮膚の感覚器官から直接的に情報を摂取する過程のことです。知覚と認知は明確に区別できないとする立場もありますが、後天的な学習活動や記憶内容、知識水準の影響を受ける情報処理過程である『認知(cognition)』は、対象や事象に関する知識や経験と無関係に情報処理を行う『知覚(perception)』よりも、より高次な情報処理過程であり知のシステムであると言えます。

直感的には、認知の影響をそれほど受けていないように思える身体運動さえも、『身体・空間の位置知覚系』を活用して、自己の身体と対象の位置を瞬間的に知覚しながら、対象や外部環境の認知へとつなげ適切な運動制御を実現しています。知覚と運動を関連させて研究するだけでも、人間の身体・知覚・認知と外部世界の状況変化がダイナミックに相互作用していることを理解することが出来ます。

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このように、認知心理学(cognitive psychology)を含む認知科学(cognitive science)は、生体の知覚・認知・運動のシステムを生み出す脳機能が、外部環境の条件・状況・変化とリアルタイムでダイナミックに相互作用しながら情報処理をするというエコロジカル・アプローチ(生態学的な調査研究)を前提とします。エコロジカル・アプローチ(ecological approach)は、生体(人間)と環境の相互作用だけでなく、個体と集団、中枢神経系と末梢神経系の相互作用も前提としているので、自然世界や文明社会で生活する動物(人間)の認知(cognition)を、生理学的作用を踏まえた形で理解することが出来ます。

眼から外部情報を摂取する視覚を実現する器官は『網膜』ですが、網膜上に投影された『外部の対象』は、輝度色彩(スペクトル)が瞬間的に知覚されるだけでなく、二次元の網膜像が三次元の構造へと脳内で再構成されることになります。視覚の情報処理では、輝度処理やスペクトル処理、立体視などが視覚モジュールに従って行われていると考えられています。

二次元の像の三次元の像への再構成を『面の再構成』と呼びますが、面の再構成を実現する脳内の情報処理過程は『三次元の現実の対象→二次元の網膜像→三次元の像の脳内での再構成』へと展開する実に複雑なものなのです。現実の事物や対象を立体的な三次元の像として認知することが出来る人間の視覚機能を『両眼立体視』と言いますが、両眼立体視の神経伝達(情報伝達)プロセスの解明なども認知心理学の重要な課題となっています。

聴覚による知覚では、感覚器官である鼓膜を使って、外界の音波を機械的振動に変換し、蝸牛の基底膜で時間周波数の分析を行っています。また、過去の記憶や知識に基づくパターン認知を行ったり、複数音源からの情報を同時に理解したりも出来ます。認知(cognition)と呼ばれる情報処理過程には『知覚・運動系』だけでなく、『記憶・思考・言語・学習・発達』などの高次脳機能が関係していて、人間の『知のメカニズム』を科学的に把握しようとする広大な認知科学(cognitive science)の領域には、認知心理学だけでなく、神経科学(神経心理学)や生理心理学、情報科学、大脳生理学、脳機能科学、人工知能、発達心理学、進化心理学などが含まれています。

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